HR Techのひとつ「AI面接」とは
AI面接とは、人事担当者の経験や勘に頼りがちだった採用面接に、AI(人工知能)を活用したHR Techを導入することです。過去の採用合否などを学習したデータ分析から、採用面接における応募者の選定や面接の合否判定などを行います。人間のように感情や疲労に左右されることがないため、採用業務の効率化に役立ちます。
AI面接を含む、AI(人工知能)で人事業務の効率化を図る「HR Tech」は、右肩上がりで増加中です。ミック経済研究所が発表した「HRTechクラウド市場の実態と展望2018年度版」によると、2019年度の市場規模は前年比141.5%の355億円。日本企業におけるHR Tech活用は、今後ますます増えることが予測されます。
出典元『IT人材ラボ』「HRTechクラウド市場の実態と展望2018年度版」を刊行、2023年度のHRTechクラウド市場規模は1000億円以上に―ミック経済研究所
「AI面接」増加の背景には、採用業務効率化のニーズ
リクルートキャリアが発表した「就職白書2019」によると、2019年卒の新卒採用における課題は「採用に係るマンパワー」が76.4%と最も高く、前年から更に増加しています。
AI面接など、HR Techの導入で採用業務を効率化することが、いまあらゆる企業で急務とされているのです。しかし、AIに採用合否を判断されることに対して、応募者が抵抗を感じる傾向が強いという事実も見逃せません。
HR Techをどのように導入していくか、企業には自社にあったHR Tech戦略を立案することが求められています。
HR Tech(HRテック)とは何か
HR Tech(HRテック)とは、AI(人工知能)を活用し人事業務の効率化を図るクラウドサービス全般を指します。
採用管理、人事管理、労務管理など、多岐にわたる人事業務の負担を軽減するために、誰でも簡単に使えるように設計されたものがほとんどです。
HR TechにおけるAI(人工知能)の役割
近年、労働力人口減少の懸念が続く日本では、「ピープルアナリティクス」の活用が求められています。人材の採用、配属、育成、定着、評価および組織開発など、タレントマネジメントにおける課題を発見し、解決のための客観的な示唆を得るという概念です。
HR TechにおけるAI(人工知能)は、ピープルアナリティクスをデータ分析によって実現し、人事が経験や勘などの主観に頼らず客観的に判断するためのサポートの役割を果たしているのです。
労働市場をはじめとする経営環境は、常に変化し続けています。人事の判断基準もこれに適応して変化し続ける必要があり、機械学習で判断基準が変化するAI(人工知能)を活用することは大きなメリットがあるといえます。
AI面接に対して、応募者は否定的
応募者である学生の反応を見ると、AI(人工知能)が面接の合否を判定することに対しては否定的です。AI面接は、導入すれば成功するわけではなく、応募者への説明や理解を得るためのフォローといった新たな課題も生まれるでしょう。
「キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果」によると、AI(人工知能)が自分に合う企業をお勧めしてくれることには7割近くの学生が肯定的です。しかし、AIに面接試験の合否を判定されることに対しては「わからない」「よいと思わない」が約8割を占めています。
出典元『株式会社ディスコ』キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果
「一緒に働くのは人間なので人間に判定してほしい」という感情的な理由で、AI採用による合否判定を嫌がる人もいれば、AI採用によって評価基準が明確になることで、逆にその基準をクリアできるテクニックがあれば合格できるのではないかと懸念する人もいます。
納得できない応募者が多いままAI採用を導入しても、自社への好感度は著しく低下してしうでしょう。採用業務効率化のために導入したAI採用によって、応募者が減るなどのデメリットが生じれば本末転倒です。
AI面接導入に対する、人事担当者の戸惑い
企業の人事担当者にも、戸惑いが広がっているのが実情のようです。
ヒューマネージが発表した「AI 採用に関する企業アンケート調査」によると、採用人数 100名以上の企業では5社1社がAI採用の導入を既に決定しているものの、導入時の課題トップは「活用のイメージがわからない」(42.2%)です。
出典元『株式会社ヒューマネージ』「AI採用」に関する企業アンケート調査
ほかにも、画一的な人材ばかりを採用することにならないよう、AIに学習させるデータについて議論すべきだという意見や、AI採用の結果を人間が確認する作業が発生するのであれば二度手間だというデメリットを指摘する声もあります。
企業・応募者ともに「納得のいく」AI面接を
AI面接は、企業側のマンパワー不足解消に役立つとして注目されていますが、応募者・企業ともに、採用の合否判定をする仕組みとしては、まだまだネガティブな意見が多いのが現状です。AI面接を導入していく際には、いきなり面接をAIに丸投げするのではなく、人事業務の負担をなくすHR Techと組み合わせることがおすすめです。
例えば、社風と応募者の相性を明確するmitsucari(ミツカリ)では、企業と応募者の双方が受検しAIを活用して相性を診断します。活躍・定着の可能性が高いかどうかを判定したうえで面接を実施するため、実際に会って対話をしながら掘り下げるべきか項目を予め特定できます。ミツカリは合否を判定するのではなく、相性の善し悪しを可視化するため、相性の情報をどのように合否判定に用いるかは企業毎に委ねられます。
採用面接の合否判断は従来通り人間が行いながらも、性格やスキルなど人材要件の見極めにAIを活用する。HR Techを上手に活用して人事のマンパワー不足を解消しつつ、企業・応募者共に納得のいく面接を目指すことこそ、最もよい選択肢だといえるのではないでしょうか。