ジョブホッパーは企業から敬遠される
明確な定義はありませんが、半年や1~2年という短期間で転職し、また、転職回数が4,5回を超える人を「ジョブホッパー」と呼びます。
終身雇用制度が崩壊し、年功序列制度が一般的でなくなったことにより、転職に対する価値観も変わってきた現代では、転職がリスクと考えられていた時代よりも、転職回数によるネガティブなイメージは少なくなってきたようです。
しかし、雇用する企業の立場からすると「これまでの経歴から、今回も長期勤続が見込めそうにない」「キャリア形成ができていないため、教育コストがかかる」といった理由から、ジョブホッパーは敬遠されやすい立場にあります。
キャリアビルダーと呼ばれる人たち
数年で転職を繰り返すという点は同じですが、次々と転職を成功させる人もいます。この人たちは、計画的に転職してキャリアを積み重ねるので「キャリアビルダー」と呼ばれ、転職をするたびに収入や待遇がアップしていくのが特徴です。
キャリアビルダーは、転職する前に次につながる結果を積み上げる傾向があるため、転職するたびに幅広いスキルを身につけていきます。自身の人材価値が高めてからの転職であるため、企業からは即戦力として期待され、転職回数が多くともポジティブに見られることが多いのです。
転職に対する価値観が変わり、転職すること自体を否定する考えは減ってきました。しかし企業からすると、転職を繰り返す「ジョブホッパー」をリスクとして捉えるという傾向は、依然、根強くあります。
転職を成功させるためにも、また、自信を持って転職に挑むためにも、自分自身が「ジョブホッパー」でないかを、今一度、確認してみましょう。
ジョブホッパーになる人の特徴
ジョブホッパーになる人は、どんな特徴を持っているのでしょうか。転職を繰り返す人のパターンから、ジョブホッパーになりやすい人の特徴を挙げます。
強いこだわりがある
ジョブホッパーになりやすい人は「こうあるべき」という考えが強過ぎる傾向があります。
こだわりがあるのは悪いことではありません。しかし「絶対にこうあるべき」という考えが強すぎると、周囲の意見を聞くことができなくなり、社内で孤立してしまうことになります。「周りは分かってくれない」「この環境ではやりたいことができない」と言って会社を辞めていくことになります。
目標が明確であり、実績や能力が伴っていれば、「こうあるべき」という考えは周囲に安心感を与えることもあるでしょう。転職を繰り返している人は、周囲に比べ、圧倒的に実績が少ないわけですから、説得力に欠けることは言うまでもありません。
自身が「こうあるべき」という考えが強いと感じたら、積極的に周囲の意見を取り入れるように心がけましょう。
理想像が高すぎる
職場への理想が高すぎるために、転職を繰り返してしまう人もいます。
自身の「成長」や「やりがい」を転職の理由にしている人は、職場に対し、高い理想を抱いていることが多くあります。少しでも不満なことがあると、もっと自分にふさわしい仕事があるのでは、と考え始めます。結果「仕事内容のレベルが低い」「同僚の質が低い」などと言って会社を辞めていくことになります。
向上心はあるのですが、方向性を間違えると「無いものねだり」の状態になってしまいます。
理想像が高すぎる人は「今ある環境の中で、いかに成長していくか」という視点が必要になってきます。
自分の問題点に気付いていない、または直そうとしない
自分に問題があったとしても、そこに気付かない、直そうとしない人もジョブホッパーになりやすい傾向があります。
転職理由がいつも同じか、または似たような問題で転職を繰り返す人が、この特徴を持っています。この特徴を持つ人たちは、仕事を辞めてしまう理由を、基本的に自分以外に求めます。「環境が整っていれば…」「人間関係が良ければ…」「仕事内容がおもしろければ…」と、表向きの理由はもっともらしいことを言いますが、本当の問題点は自分の中にあることに気が付いていません。
環境も人間関係も仕事の面白さも、すべては自分が整えて見つけていくものです。「自分は悪くない、周囲が悪い」という考えで転職を繰り返すので、本人は自分に問題があるとは気付かず、事態は悪化し続けます。
自分の欠点や間違いに気づいていても、克服しきれず転職を繰り返してしまう人もいます。例えば、仕事のサボりぐせが治らない人は、その性格を直さなければ、どの職場でも評価が悪くなり、退職せざるを得なくなります。自分がなぜ転職を繰り返しているのかわかっていても、直そうとしなければ問題に気付いていない人と同じで、事態は悪化していくでしょう。
いつも同じような問題で転職を繰り返している人は、自分の中に問題がないか、問題があれば克服する努力をしているか、一度立ち止まって考えてみましょう。
自信があり過ぎる
自信があり過ぎる人も、転職を繰り返しがちです。
このタイプの人は、面接でうまく立ち回ることができ、自分を実際の能力以上に売り込むことができます。大した苦労もなく次の職場を見つけることができ、ますます「自分に能力がある」と思い込みます。会社で嫌なことが続くと「自分にふさわしいハイレベルな職場はまだある」と考え、すぐに会社を辞めてしまいます。
自信があり、とてもエネルギッシュなので、うまくいっているように思われがちですが、実際には実績や経験を積む前に辞めてしまうので、気付いたときにはジョブホッパーになってしまっています。
いくら自信があるからといって安易に転職するのではなく、具体的に「今の会社で少なくとも何年は○○の経験を積む…」といったイメージを持ち、かつ達成してから転職するようにしておけば、ジョブホッパーになることはないでしょう。
コミュニケーションが苦手
コミュニケーション能力が低い人も、ジョブホッパーになりやすいようです。社内での人間関係が円滑でないと、職場に行くのがどうしても憂鬱になってしまいます。
コミュニケーションの問題はどの職場に行っても多かれ少なかれあるものです。自分の苦手な人、嫌いな人とも協力し、仕事を成功させなければならないからです。
会社に長く定着できるかどうかは、会社に馴染むことができるかどうか、ということでもあるため、コミュニケーション能力は重要な要素となるでしょう。
コミュニケーションが苦手というと「引っ込み思案な性格」をまず思い浮かべますが、逆に自分に自信があり過ぎる場合でも、コミュニケーションを取りづらい、と感じる人もいるようです。そういった人たちは、自分に自信があるため周囲の意見を受け入れず、勝手な振る舞いをすることが多いようです。
どちらの性格でも、周囲の意見を取り入れ、自分の意見とすり合わせ、コミュニケーションを円滑にする努力をする必要があるでしょう。
ジョブホッパーになることを防ごう
ジョブホッパーに見られる特徴は、多かれ少なかれ、誰もが持っている特徴です。重要なのは、特徴を持っているかどうかではなく「度合い」です。
極端にこだわりが強くないか、人と比べてコミュニケーションが苦手ではないかなど、まずは自分とよく向き合い、その「度合い」が適当かどうかを考えてみましょう。
「辞めたい!」「転職したい!」と思うことは、仕事をしていれば誰にでもあることです。
長い目でのキャリアプランを考えた場合、転職を繰り返しているうちに、気が付いたら自分の価値が下がっていた、ということは大きな問題です。自分がジョブホッパーなのか、自分のどの問題がジョブホッパーの原因になってしまっているのか、早めに気付き改善できれば、繰り返し転職することを止めることができます。それは、自身がジョブホッパーになることを防ぐ最初の手段でもあります。
ジョブホッパーにならないために
ジョブホッパーにならないための正攻法は「自分の中長期的なキャリアプランを考え、自分がやりたい、ぶれない軸を作ること」です。
「自分がやりたいぶれない軸」を作るためには、自己分析が欠かせません。
- 自分は何が得意か、何が苦手か
- 何をしている時が楽しいか
- 何をやりたいか
- 将来どうなりたいか
- 仕事を辞めたいと思うのはどんな時か
- 自分の良いところ
- 悪いところ
自分を掘り下げることで、徹底的に自己分析してみるのです。
人も企業も個性豊かな時代なので、あらゆる人にチャンスはあります。まずは自分がやりたいことを見つけ出しましょう。ただ転職を繰り返すのではなく、転職で自分がやりたいことの軸がぶれないようにすることが大切です。
ジョブホッパーからキャリアビルダーへ
一昔前よりも、転職に対するネガティブなイメージは少なくなってきましたが、やはり依然としてジョブホッパーへの風当たりは根強いものです。
転職回数が多くても、キャリアビルダーであれば好意的に受け止められます。過去にどれだけ転職を繰り返してしまったかというよりも、今までの転職で、次につながるような経験をしてきたか、が重要なのです。
先の見えない今の時代、将来のキャリアプランを明確に描くことは不可能に近いものがあります。だからこそ、今ある環境でどれだけ経験を積むことができるか、という考えはとても大切です。
自分がジョブホッパーの特徴に当てはまっている、と感じるのであれば、今一度、自分を見直し、なるべく早いうちに問題点を改善していくことをおすすめします。