採用面接で会話を掘り下げる基本となる質問術
「自社に合う人物かどうか」を採用面接で見極めるためには、性格や価値観などの人物特性に関する話題を掘り下げていくことが大切です。
具体的な質問の仕方としては「オープンクエッション・発言の背景・具体例・共感(フィードバック)」があります。上手く組み合わせながら、質問を掘り下げていきましょう。
この記事では、採用面接で人物理解を深めるために基本となる質問例を紹介します。
①オープンクエッション
制約を設けず相手が自由に答えられる質問を投げかけます。
質問例:「転職理由・志望動機を教えてください。」「今後、チャレンジしてみたいことはありますか?」「あなたのキャリアプランにおいてこの募集職種のどこが魅力的でしたか?」
②発言の背景
発言も背景にある想いを聞きます。なぜそう思ったのかを聞くことで、応募者が大切にしている経験や価値観が何かを探ります。
質問例:「なぜそう思うのですか?」「その決断をした、理由や背景についてお話いただけますか?」
③裏付け・具体例
発言のリアリティ・信憑性・本気度を探ります。行動や考え方に一貫性があるのか、その場しのぎの経験や価値観ではないのかを判断します。
質問例:「過去にも同じような経験はありましたか?」「具体的にはどのようなアクションを起こしたのでしょうか?」
④共感(フィードバック)
相手について分かったことを共感をこめてフィードバックすることで、会話をより発展させます。
質問例:「大変な苦労もあったけれども、○○への強い想いをお持ちなんですね。共感致します。これについて少し詳しくお聞かせ頂けますか?」
意図通りに相手のインサイトを掘り下げ、共感や感じたことのフィードバックを織り交ぜます。「本音で話せた」「しっかり聞いてもらえた」と好印象を持たれる採用面接を心がけましょう。
採用面接での「面接官の印象」が採用の決め手になる!?
リクルートキャリア『第30回転職世論調査』によると、中途採用において、仕事内容や勤務条件・待遇の次に入社の決め手となるのが「面接官の印象」と挙げられています。男女ともに約4割の求職者が「面接官の印象」を入社の決め手と言っており、面接官の影響が非常に大きいことが分かります。
出典元『リクルートキャリア』第30回転職世論調査
新卒についても同様です。リクルートキャリア運営就職未来研究所『大学生の就職プロセス調査(2017年卒)』によると、入社にあたり最も不安なことは職場の人間関係についてとなっています。採用担当者や面接官は、多くの学生が初めて接触する社員です。学生の立場で考えると、選考中はもちろんのこと、選考日程の連絡や内定の案内などで多くのやり取りを行うため、採用担当者や人事担当者から「どんな人がいるのか」を探ろうとしています。
出典元『リクルートキャリア運営就職未来研究所』大学生の就職プロセス調査(2017年卒)
面接でどのような質問をするか、どのように人材を見極めるかはもちろん大切ですが、企業の顔ともなる面接官の印象は入社の決め手にもなる重要な要素です。
応募者の人柄を引き出すために一方的な質問を繰り返すのではなく、質問の仕方も考えながら、応募者とのコミュニケーションを円滑に行うことで、入社後の不安を払拭する大きなカギとなることがうかがえます。
採用面接で「人物特性を引き出す」ための具体的な質問例とは
「価値観」「人柄や性格」「働き方」3つの項目について
人物特性を引き出し採用面接の精度を上げるための質問例をご紹介します。
採用面接で「会社と価値観が合っているかを確かめるため」の質問例
会社と価値観が合っているかを確かめるという意図で質問する際は、転職理由・志望動機やキャリアへのモチベーションが会社の理念や企業風土と合っているかを掘り下げて探ります。
(オープンクエッション)
「転職理由・志望動機を教えてください。」
↓
(発言の背景)
「そのように思われたきっかけは、どんなことですか?」
↓
(共感・フィードバック)
「将来やりたいことを明確にするなかで、当社の企業理念に共感頂いたということですね。ありがとうございます。」
↓
(裏付け・具体例)
「将来の夢の実現につながると考えて取り組んできたことはありますか?」
↓
(裏付け・具体例)
「○○にこだわりを持って取り組んで来られたのですね。○○に取り組むにあたりうまくいかないこともあったかと思うのですが、そのときはどのようにしてモチベーションを保ちましたか?」
↓
(オープンクエッション)
「✖️✖️という困難を体験をされたのですね。そのときはどんな想いでしたか?」
↓
(発言の背景)
「会議のために残業が増えて、家族に申し訳ないという想いが強かったのですね。ワークライフバランスの改善も転職を考えるきっかけとなったのでしょうか?」
採用面接で価値観に関して質問するときは、想いや将来の夢など表面的な話に終始しないように注意しましょう。想いの原動力となった具体的な経験や、夢の実現に向けて起こしている行動を質問することで、深層的な人物特性を理解できるのです。
採用面接で「人柄や性格の傾向をつかむため」の質問例
人柄や性格の傾向に関する質問は、経歴に関する話題の中から自然な流れで行うのがポイントです。共感を交えながら会話を進めると、話しやすい雰囲気を作れます。
(オープンクエッション)
「✖️✖️という困難を体験された時は、これまでのやり方を大きく変える必要があったのですね。変化そのものに対してはどのように感じていらっしゃいましたか?」
↓
(共感)
「基本的には変化よりも、安定した環境で仕事をする方がお好きなんですね。それでも、✖️✖️という困難を乗り越えるためには変化を選ぼう、と率先して動かれたのは素晴らしいことですね。」
↓
(裏付け・具体例)
「変化を選ぶ決断をするまでに、時間はどれくらいかかりましたか?」
↓
(共感)
「短期間でそれだけのことを決めて実行に移されたのは、大変でしたよね。」
↓
(発言の背景)
「△△の体験のように変化が求められる状況において、論理的に必要性を説かれるのと、気持ちが込められたメッセージと、どちらが心を動かされますか?」
↓
(共感)
「みんなで1つずつでも前に進もうとメンバー同士で常に励まし合う環境なら、頑張ろう思えますよね。ご自身では、チームメンバーに対してどのようにサポートしましたか?」
人は「伝わった」「解ってもらえた」を感じれば、より饒舌に話したくなるものです。採用面接で「相手のよいところ」を見つけようと意識しましょう。
面接官が「自社に合う人物かどうか」「入社後の配属先でどう振る舞うのか」といった人物像を直感的に理解できるだけでありません。行動原理やエピソードを上司や同僚など、面接に携わっていない人に客観的に説明することができ、採用面接の精度向上を図れます。
採用面接で「組織で求められる働き方と本人の希望を擦り合せるため」の質問例
勤務時間やワークライフバランスなど働き方に対する希望は、キャリアに対する価値観や人生観と密接に関わっています。企業風土とマッチするかどうかの見極めは、優秀な人材の早期離職率を抑える上でも重要なポイントです。
(オープンクエッション)
「理想的な働き方はありますか?」
↓
(発言の背景)
「なぜそのように考えていらっしゃるのですか?」
↓
(裏付け・具体例)
「ノー残業デーや週休3日だったら、フリーの時間をどのように過ごすのが好きですか?」
↓
(裏付け・具体例)
「将来やりたいことのために◇◇を勉強されているんですね。具体的に、いつまでに◇◇取得を目指すなど目標はお持ちでしょうか?」
↓
(オープンクエッション)
「残業についてはいかがですか?」
↓
(裏付け・具体例)
「現職では✖️✖️時間ほど残業されているんですね。転職後のご希望はございますか?」
↓
(共感)
「ご家族との時間も大切にされたいけれども、将来やりたいことにつながる仕事であれば積極的に携わりたいというお気持ちなのですね。」
働き方改革が叫ばれて久しい昨今。働く時間や場所について、組織として許容できる範囲を変更する動きが社内にあるなら、トップの想いや社内制度整備中の情報を応募者に伝えるのも一手です。
採用面接では「相手の個性を尊重する姿勢」を伝えよう
人材不足が続くいま、採用面接は会社側も選ばれる立場となっています。採用面接では、面接官も選考されているという意識を高く持ちましょう。どうしても獲得したい人材の場合は、積極的に”口説く”アプローチも必要です。
今回は不採用にした方でも、数年後にまたご縁があるかもしれません。何より、社外で採用面接の印象を語られる際に口コミとなり、会社のブランディングに直結します。新卒採用において「面接官の印象が悪かった」と求職者の後輩に伝えられると、母集団形成にも大きな影響を与えます。
採用面接では「相手の個性を尊重する姿勢」を伝えることが大切です。求職者を見極めようと一方的な立場になるのではなく、将来自社の社員になるかもしれない、別の会社に行ったとしても取引があるかもしれないといった視点が求められます。