デリバラブルを活かした人事部の新しい役割とは?戦略人事を実現するために

戦略人事の重要な考え方であるデリバラブル

デリバラブルとは「提供できる・もたらすことができる」という意味で、人材マネジメントにおいては「経営(売上)にどのような成果をもたらしたのか」を意味する言葉として使用されています。

戦略人事を実現し自社の経営戦略の目的を達成するためには、経営戦略の理解だけでなく、適した人材の採用・配属などの人材戦略の実施し、経営にどれだけの成果を与えたのかを考えることが大切です。

日本の人事部の人事白書2018によると、約9割の企業が戦略人事の重要性を認識していることがわかります。

戦略人事の重要性
出典元『日本の人事部』9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割

一方で、戦略人事として機能している企業は31.6%と、重要性を理解しながらも機能していない企業が多くなっています。

戦略人事を実現できているか
出典元『日本の人事部』9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割

戦略人事がうまくいかない理由として、あげられているのが人事部門のリソース不足や人事と経営戦略の繋がりです。部門が経営戦略の意思決定に慣用しているのは約6割、最高経営意思決定機関の一員に専任されているでも約6割である一方で、まだまだ課題が多い分野でしょう。

戦略人事が実現できていない理由
出典元『日本の人事部』9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割

今回はデリバラブルの概念を提唱したミシガン大学のウルリッチ教授による人事部の役割について説明します。

ウルリッチ教授による人事部門の役割について

ウルリッチ教授は企業の人事部門に求められる役割を4分割して考えました。

  1. 管理エキスパート
  2. 従業員チャンピオン
  3. 戦略パートナー
  4. 変革エージェント

どの役割もデリバラブルの発想によって構成されていてなんのために属しているのかが明確になっています。

各分類における人事部門の目的について

それぞれの役割の目的やミッションをみていきましょう。

管理のエキスパートでは、会社における人や組織の取りまとめを行います。社員の情報をデータ管理し、社員の評価、業績、経験、能力、キャリアの希望などの情報を経営陣や事業部と共有することで、有望な人材の発掘や登用を適時的確に行えるようにします。また法的リスクを最小限に抑え、業務の効率性を高めることがミッションです。

従業員のチャンピオンの主な役割は「経営と現場をつなぐ」ことです。上長の意思を事業戦略の視点で社員に伝えるとともに、社員の声を聞き、事業運営に関わる本質的な課題をつかんで上長に提言する「橋渡し役」をしていきます。社員1人1人の声を聞き、社員のやる気を高めるために現場の声を人事戦略の策定や組織設計に活かしていく役割を担っています。

戦略パートナーは事業戦略と人事戦略の連動を図ることが目的です。経営戦略、事業戦略に合致するよう、人事戦略策定や組織設計を行います。例えば事業戦略で求められる人材像や要員数を明らかにし、採用の手段、評価の基準、知識・スキルの開発方法、といった具体的な施策を提案したり、ある事業の発足に伴い新しい組織を作り体制を構築するなどを行います。

変革エージェントでは組織改革を推進するのですが、社員の意欲や組織の活力を引き出すことが大切なミッションとなっています。能力開発、キャリア開発、組織開発を通じて、社員のエンゲージメントを上げ、維持するために、企業が目指している姿や理念に合致するよう人事戦略策定を考えていく必要があります。

各分類における人事部門の実施方法

管理のエキスパートでは社員の情報をデータ化し閲覧可能な状態とします。こちらはタレントマネジメントシステムの導入が効果的でしょう。社員のスキル能力だけでなく、適性や価値観、最近のコンディションをパルスサーベイで測り情報を管理しておくことで適正な人事配置も可能となるでしょう。

従業員のチャンピオンでは「組織と現場」を繋ぐことがミッションとなるため経営判断の意図や目的をきちんと説明する場を設けることが効果的です。そうすることで経営陣への信頼感が増し、社員の仕事の意欲にも繋がります。また経営陣と現場との距離感も大事で、意図や想いが伝わっているか確認する必要があるでしょう。

戦略パートナーでは、事業戦略と人事戦略の連動を図るために事業戦略に必要な人材や教育を人事が一緒に考え、採用なども人事側で行うことで事業と人事の一貫性をもたらすやり方もあります。また人材育成会議等で、事業戦略に紐づいた優秀な人材についての教育方針やキャリアについて人事が一緒になって会議を行う方法もあるでしょう。

変革エージェントでは従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイアンケートを社員向けに行い、組織の問題を事業部任せにしないで問題の抽出や解決に向けた関係者へのヒアリング、ミーティングを設定し、ファシリテーションを人事側で行っていきます。そうすることで社員の意欲や組織の活力を引き出し、社員のエンゲージメント向上と会社のありたい姿への前進が図れます。

戦略人事実現には人事が経営にどのような成果を与えているかという視点が大切

デリバラブルを提唱したウルリッチは1997年に人事部門の新しい役割と機能を4つ提唱しており、企業業績の向上に貢献するだけでなく、人材を育成することで新しい価値の創出に貢献する視点を兼ね備えている考え方です。

戦略人事を実現するためには、人事が経営にどの程度成果を与えているのか、どのようにして成果を与えられるかといった視点から、人事業務を見直し実施することが求められているでしょ

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