健全な企業・組織作りのためのメンタルヘルス指針
近年、仕事や職業生活に関して強い不安やストレスを感じている労働者 が5割を超える状況にある中、国も、企業においてより積極的に心の健康の保持増進を図るため、『労働者の心の健康の保持増進のための指針(「メンタルヘルス指針」)』を公表し、事業場におけるメンタルヘルスケアの実施を促進しています。
参考URL『厚生労働省』職場における心の健康づくり
仕事によるストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者は増加傾向にある現状を踏まえ、平成 26 年6月には、心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」)と、その結果に基づく面接指導の実施などを内容とした「ストレスチェック制度」が新たに創設されています。ストレスチェック制度は「労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善・働きやすい職場づくりを推進することで、そこで働く人々がメンタルヘルス不調になることを未然に防止すること(一次予防)」を主な目的としたものです。
参考URL『厚生労働省』労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21によると、メンタルヘルス不調による休職者1人あたりのコストは概算で約400万円超と報告されています。メンタルヘルス不調を起こさない努力も大切ですが、起きてしまった場合には企業にとって大きな損失となります。
参考URL『J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト』メンタルヘルスガイドブック
今回は、なぜストレスが発生してしまうのか、ストレス発生のメカニズムについて説明します。
ストレスの感じ方が違うのはストレス反応が理由!
ストレスとは、外部からの刺激であるストレッサー(ストレス要因)が個人に影響を与えようとして衝突・直面した場合に起こります。ストレス反応とは、影響を与えた結果に起きた様々な反応のことを意味しています。
ストレッサーは、種類だけでなく強さも様々あります。人間関係に悩みを抱えていたとしても、内容によってストレッサー(ストレス要因)の強さは変わります。また、同じ強さのストレッサーであっても、深刻に捉える人と楽観的に捉える人では、ストレスの受け取り方や心身への影響も変わります。受け取り方や心身の影響が、ストレス反応です。
出典元『ハートクリニックデイケア』ストレスにうまく対処するには・・・?
一般的には、日常の中で特別に辛い出来事(近親者の死、災害、業務内ではリストラなど)のライフイベントが大きな「ストレッサー」になりえますが、喜ばしいできごとであるはずの結婚や出産などもストレッサーになるケースがあります。もちろん、こういった特別な出来事だけでなく、日常生活の些細なこともストレッサーになります。
ストレッサーの種類について
こころや体に影響をおよぼすストレッサーには、大きく分けて3つの種類があります。
- 物理的ストレッサー(暑さや寒さ、騒音や混雑など)
- 化学的ストレッサー(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰など)
- 心理・社会的ストレッサー(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)
私たちが「ストレス」と言っているものの多くは「心理・社会的ストレッサー」のことを指しています。職場には仕事の量や質、対人関係をはじめ、さまざまな要因がストレッサーとなりうることが分かっています。
ストレス反応とは
ストレス反応は、長時間ストレッサーの刺激を受けた場合や、強いストレッサーを受けた時に生じる生体反応であり、ストレッサーに対する生体の自然な適応反応と考えられています。
ストレッサーに対する個人のストレス耐性はもちろん、ストレス反応として現れる症状も個人差があります。生活環境ストレッサーや心理的ストレッサーが複合して影響を与えることも往々にしてありますので、同じ状況にあっても、全ての人が同じ症状や反応を示すわけではないことには留意しておきましょう。
ストレッサーの種類に関係なく、心身に同じ反応が起きること、症状が全身におよぶことから「汎適応症候群」とも呼ばれています。
主なストレス反応は、心理的、行動的、身体的反応として現れます。
心理的なストレス反応について
情緒的反応として、不安、イライラ、恐怖、落ち込み、緊張、怒り、罪悪感、感情鈍麻、孤独感、疎外感、無気力などの感情が現れます。
心理的機能の変化として、集中困難、思考力低下、短期記憶喪失、判断・決断力低下などの障害が現れます。
行動的なストレス反応について
怒りの爆発、けんかなど攻撃的行動、過激な行動(泣く、引きこもり、孤立、拒食・過食、幼児返り、チック、吃音など)、ストレス場面からの回避行動などが現れます。
身体的な反応について
動悸、異常な発熱、頭痛、腹痛、疲労感、食欲の減退、嘔吐、下痢、のぼせ、めまい、しびれ、睡眠障害、悪寒による震えなど、全身にわたる症状が現れます。
ストレッサーとストレス反応の関係(ストレスが発生するメカニズム)
ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分類することができます。
心理面でのストレス反応には、活気の低下やイライラ、不安、抑うつなど。身体面でのストレス反応には、体の痛み頭痛、肩こり、腰痛、動悸や息切れ、食欲低下、不眠などさまざまな症状があります。行動面でのストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故などが挙げられます。
これらのストレス反応が長く続くことは、過剰なストレス状態に陥っているサインの一つでもあります。これらの症状に気づいたら、普段の生活を振り返り、ストレスと上手に付き合うための方法(コーピング)を工夫してみることをおすすめします。
出典元『ハートクリニックデイケア』ストレスにうまく対処するには・・・?
ストレスの対処行動、ストレスコーピングとは?
私たちがストレス状態に置かれてうまく処理できない時には、ストレスを増幅させてしまい心身の異常を発生させることになります。自分ひとりで対処できないようなストレスの強さの場合は、特に心拍数や血圧の異常などを引き起こすと同時に、不安や恐怖などの心理的負荷を感じることになります。
ストレスに対しては、緩和するべくさまざまな対応を試みます。ストレスに対処する行動を「ストレスコーピング」といいます。
「ストレスコーピング」の分類としては、ストレスそのものに対する働きかけによってストレスをなくしてしまう方法や、ストレスに対して自分自身と周囲の協力を得て解決する方法、ストレスによって発生した自分の不安感や怒りなどの感情を周囲の人に聞いてもらうなどで発散する方法などがあります。
出典元『ハートクリニックデイケア』ストレスにうまく対処するには・・・?
ストレスのメカニズムを知ってストレス管理をしよう
ストレスのメカニズムは、①原因②認知③反応の3段階があります。
労働者のストレスを抑えるために最も理想的な方法の一つは、①の「原因」を減らすことであり、次に②の「認知」で誰かに相談できる仕組みを作ると同時に、物事の見方を変える研修を実施するなどが挙げられます。
自分自身や、勤務先の会社にはどのような「ストレッサー」があるのか、改善できるストレッサーはないかを、まずは検討してみましょう。
ストレスの“根”を知ることが、組織のメンタルヘルス不調の原因を断つ第一歩になるのです。