ソーシャルレコグニションが会社と従業員にもたらすメリットとは?

従業員のエンゲージメントを高めるには?

日本人の特徴の1つとして、もしかしたら「消極的」であることが挙げられるかもしれません。注目すべき1つの結果があるからです。米ギャラップの調査によれば、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかおらず、139カ国中132位と最下位クラスであることが報告されたのです。さらに大小様々な問題の種となる「周囲に不満を撒き散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%という結果でした。

参考URL『日本経済新聞』「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査

「やる気」は仕事にとってどれくらい重要なのでしょうか?ご覧いただきたいのが、ベインとPRESIDENTの調査です。この結果によれば、やる気あふれる社員の生産性は2倍超となり、従業員のやる気を出すことが生産性向上につながると示されています。

意欲の度合いによる社員の生産性
出典元『PRESIDENT Online』”3人に1人”の不満社員を奮起させるには

@人事の調査では、3年以上在籍したいと思う企業の条件として「良好な人間関係」が挙げられていることも注目すべきポイントです。

3年以上在籍したい会社の条件
出典元『@人事』「あなたはいつ頃会社を辞める予定ですか?」2019年春入社の新入社員へ緊急アンケート

従業員のエンゲージメントは離職だけでなく、組織の生産性にも影響しているといえます。それを踏まえてGoogleは成功するチームについての研究を行い、メンバー間での相互承認により成り立つ「心理的安全性」が組織力にとって重要であると報告しています。

今回の記事では「心理的安全性」を作るためのキーワードであるソーシャルレコグニションについて紹介します。

ソーシャルレコグニションとは?成果にどう影響するのか

ソーシャルレコグニションとは、組織においてメンバー同士が互いを承認しあうことや承認し合う仕組みのことです。

良好な人間関係の構築や人事制度において、従来からも「レコグニション」の概念は存在していました。レコグニションとは、直訳すれば「承認」となります。社員の働きぶりに応じた承認を会社が行う制度を設けることがレコグニションの一つの在り方であり、具体的には社内表彰や給与アップ・ボーナスなどのリワードが挙げられます。

現代の人材マネジメントでキーとなるのは「ソーシャル」という言葉です。「ソーシャルレコグニション」が上記の「レコグニション」と違う点は、会社・組織が一方的に行う承認ではないことです。ソーシャルレコグニションには、社員同士が相互に承認しあうという特徴があります。

ソーシャルレコグニションの目的について

レコグニションならびにソーシャルレコグニションが注目されるようになった背景として、従業員のエンゲージメントについての課題克服があります。

従業員のエンゲージメントが落ちると発生する問題は様々にありますが、最も象徴的な事象として挙げられるのが離職です。人が仕事をやめる理由の主たるものとして「(給与・労働条件など)待遇がよくない」「やりがいがない」があります。これらの理由は会社が社員の成果に応じて金銭報酬を与えたり、昇進させるなどの承認を示せば解消されうるものです。

現代では「人間関係」を原因とした離職もかなり多くなっています。人間関係は会社が与えるものではなく、組織構成員一人ひとりでが作る風土でもあり、「会社→従業員」という一方向のみの承認関係ではありません。「従業員⇄従業員」のメンバー相互の承認として「ソーシャルレコグニション」の重要性が認知されるようになりました。

ソーシャルレコグニションを活用する企業のメリットについて

ソーシャルレコグニションは組織構成員同士の承認を推奨し、自由に発言しやすく風通しの良い人間関係・風土を作ることができます。従業員のエンゲージメントを高めるのが一番の目的ですが、付随して以下のメリットが考えられます。

人材マネジメントにおいて重要な課題は人材流出の防止です。従業員のエンゲージメントが低下すると優秀な人材ほど離職に繋がりやすくなります。若手社員が定着しない場合、次の世代の管理職候補が育たないため、会社を長期的に安定経営させることが難しくなります。

従業員のエンゲージメントが高まると、より高度な承認を求めて自発的に考え、行動を起こすようになります。構成員一人ひとりが与えられた役割・責任を強く自覚するようになり、組織全体の生産性が向上します。

ソーシャルレコグニションによる従業員のメリットについて

ソーシャルレコグニションが機能している会社で働くと、従業員視点では適切に能力を評価してくれる安心感があります。モチベーションやエンゲージメントの低下は自身の働きぶりと評価のギャップに起因するケースが多く、ソーシャルレコグニションがある職場では日々相互に承認を行うので「評価漏れ」が起こりにくいメリットがあります。

会社の雰囲気がポジティブになります。ポジティブな雰囲気だと社歴やキャリアに関係なく自由に発想・発言することが推奨される風土になります。従業員は自分で試してみたいこと・チャレンジしたいことに積極的に取り組むことができ、高いモチベーションでやりがいを持って働けます。

組織を成長させるソーシャルレコグニション

レコグニションとは「承認」を意味する言葉であり、日本の人事制度にも従来から取り入れられていました。現代では、会社から個人への一方通行の承認だけでなく、組織メンバー間で相互に承認しあう「ソーシャルレコグニション」が注目されるようになりました。

従業員同士が感謝し合うピアボーナスは様々な企業で導入が進んでいます。それだけでなく、ソーシャルレコグニションを支援する仕組みも開発が進んでいます。HRテックサービスも存在し、360度評価などでもソーシャルレコグニションの効果が現れています。

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