シニア採用が注目されている背景とは?
現在の日本は、少子高齢化社会と言われているように、長寿化と少子化が進んでいます。
総務省統計局の調査によると、2018年10月1日時点で総人口126,443千人のうち65歳は35,578千人と、総人口の約28%が65歳以上となっています。また、50歳~64歳は23,602千人であり、総人口の約47%が50歳以上となっています。
出典元『総務省統計局』人口推計-2019年(平成31年)3月報-
日本の高齢化率は年々増加していくと予測されており、女性や外国人、シニア層が今後の労働力として期待されています。
今回の記事では、シニア採用における企業側のメリットやデメリットについてご紹介します。
シニア採用を導入する企業側のメリット・デメリットとは?
政府が主導する働き方改革では、65歳以上を高齢者と定義しています。
年金は65歳から満額支給が始まり、企業においても65歳まで雇用を維持する努力を義務付けられています。しかし政府は、2019年5月の未来投資会議において、希望者が70歳まで働き続けられるよう高年齢者雇用安定法を改正し、高齢者の就業機会を広げる案を示しました。
就業機会の確保に対する企業の努力義務は、現在の時点では65歳までとなっていますが、未来投資会議の案が通れば70歳まで引き上がる可能性があるのです。
シニア世代の労働意欲とは?
内閣府の調査によると、高齢者の就業意欲は非常に高いことが分かっています。「何歳まで働きたいか」という質問に対して、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、定年を越えた「70歳くらいまで」以上の回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っていることがわかります。
リクルートワークス研究所の調査によると、高齢者の就業目的としては「経済上の理由」が大部分を占めており、次いで「健康上の理由」や「いきがい、社会参加のため」などが挙げられています。
出典元『リクルートワークス研究所』高齢者の就労意欲に関わる要因
高齢者の就業理由は、年齢が高くなるにつれて「経済上の理由」が減少して「健康上の理由」や「いきがい、社会参加のため」が増加していく傾向があります。高齢者にとって、労働から離れることによる体力の低下や社会との断絶は切実な問題となっており、体と心のバランスを保つために働き続けたいと望んでいる人が多いという実態が見て取れます。
シニア採用を行う企業側のメリットとは?
シニア人材を採用する企業側のメリットとしては、シニア人材には長年かけて培った経験・技術・人脈などがあるため、即戦力として活躍してもらえる可能性がある点が挙げられます。
企業側だけでなくシニア人材側としても、人生の中で培ってきたノウハウや技術を、若い世代や企業に還元することを望む傾向があります。シニア人材の経験や技術の継承は、若年層や中堅層の従業員のモラル向上やモチベーションアップ効果だけでなく、今までと違った視点での発見や人材育成にも期待できます。また、シニア採用を行い多様な人材の活用を推進しているという実績は、企業のブランディングやイメージアップにも繋がるでしょう。
シニア人材は就業意欲が高い傾向にあるため、離職率の低さや勤務態度の良さにおいても期待できます。シニア人材の離職率の低さや勤務態度の良さは、人材不足に貢献してくれるだけでなく、他の若手社員にも良い影響が期待できます。
シニア採用を行う企業側のデメリットや注意点とは?
シニア人材を採用する企業側のデメリットとしては、自社の社風や組織風土とのミスマッチが起きやすい点が挙げられます。シニア人材には、どうしても「自分には長く積み上げてきた経験と実績がある」というプライドがあるためです。
定年まで働いてきたのに全くプライドがない人の方が問題ではあるのですが、プライドが邪魔をして今までのやり方や仕事のスタイルを変えられず、職場の人間関係を悪化させてしまう可能性があります。職場の人間関係の悪化は、他の社員に悪影響を与える可能性もあるため、シニア採用では人材と社内のカルチャーマッチが重要となります。
定年年齢の延長や再雇用などでシニア人材を活用する場合は、定年前と同じ処遇で雇用を続けると人件費が負担となり、新しい人材を採用しにくくなります。また、高度な経験や技術が必要な業務をシニア人材に任せがちになるため、若い人材の経験機会を奪ってしまう危険があります。
シニア人材を活用する際は、単なる労働力としてだけでなく若い人材への技術の継承を期待している旨を採用時にハッキリと伝えると、シニア人材のプライドの保持やモチベーションの向上につながるでしょう。
シニア採用を導入する際はしっかりと事前準備を整えよう!
少子高齢社会によって労働人口が減少していく中で、シニア採用の注目度が年々高まっています。
シニア採用は単なる人手不足対策だけでなく、シニア人材の知識や人脈が活用できるなど、企業にとってさまざまなメリットがあります。ただし、不用意にシニア採用を導入すると、社内の人材サイクルの鈍化や人間関係の悪化などのデメリットを生む可能性があるため、注意が必要です。
シニア採用を行う際は、自社の課題を明確にした上でシニア採用によって解決できる課題かどうかを検討し、デメリットへの対策を事前に準備してから導入するようにしましょう。