アメリカと日本でのリファラル採用における状況の違い
現在働いている社員たちの人脈を活用し、友人や知人などを紹介・推薦してもらう採用制度リファラル採用。日本ではあまりまだ聞き慣れない採用活動ですが、アメリがでは広く浸透し実施されている一般的な採用活動方法です。
リクルートワークス研究所の報告書にある、2012年度米国の採用コンサルティング会社CareerXroads(以下,CXR)が実施した調査結果によると、100企業のうち何らかの形でリファラル採用を導入していると答えた企業は90%以上もあります。
出典元『リクルートワークス研究所』米国の社員リファラル採用のしくみ
新卒採用においてもリファラル採用の導入が進んでいます。MyReferの調査によると、2017年に28%であった新卒採用におけるリファラル採用は、2018年には37%と大幅に増加しています。
マンパワーグループの調査においては、リファラル採用を導入している企業は6割を超えているとの調査もあります。一方で、順調と回答した企業は2割強であり、2割弱の企業が順調でないと回答しており、単純にリファラル採用制度を導入するだけでは順調に運用ができないことを示唆しています。
出典元『マンパワーグループ』最近、注目の「リファラル採用」、企業の導入率はなんと約6割!効果的な運用のための対策とは?
アメリカでリファラル採用が浸透している背景には、高額な成果報酬を設定しているということが挙げられます。日本でも同じように報酬を高額にすれば浸透するのでは?と考える人もいるかも知れませんが、そう単純なことではありません。なぜなら、日本の法律はアメリカとは違い、リファラル採用が人材紹介業や人材派遣業に該当する可能性があるため、報酬設定において色々と制約が出てきてしまうからです。
どうすれば日本国内においても、リファラル採用を導入し、成果として発揮することができるのか?実際に国内企業で導入し、成功している事例を紹介します。
リファラル採用を導入している国内企業事例紹
リファラル採用を導入して成功させている企業として、3社の事例を紹介します。
- freee株式会社
- 株式会社リクルートキャリア
- ピクスタ株式会社
freee株式会社におけるリファラル採用の事例
freee株式会社は創業当時から、リファラル採用を導入している日本国内では珍しい企業です。背景には、自分たちのメンバーは自分たちで集めたいと言う強い思いがあります。社員数20名を超えたあたりからリファラル採用は失速する傾向にあるようですが、freee株式会社では現在でも積極的にリファラル採用が活用されています。
freee株式会社でのリファラル採用導入におけるポイントとしては、社員が友人・知人に紹介しやすい環境(オフィス)作りをしたことが挙げられます。オリジナルTシャツやノベルティなどを作り、気軽にオフィスに友人・知人を招き、記念品として配布するなどおもてなしをして、よりカジュアルにリファラル採用を使ってもらう雰囲気を作りに取り組んで来ました。その結果、リファラル採用をより自然に行える体制が確立され、そのまま推進に繋がっていると考えられます。
自社のことを一番分かっている社員からの紹介だからこそ、紹介からの採用決定率がUPしたことで、時間的なコスト削減につながっていることはもちろん、一番はやはり自社に合った人材を自分たちの力で集めることができているという信頼関係が、会社全体の一体感や活性化にも繋がっているようです。
株式会社リクルートキャリアにおけるリファラル採用の事例
株式会社リクルートキャリアでは、転職サイトなどに登録していない、埋もれている転職潜在層へのアプローチを課題として、リファラル採用を導入しました。「今以上に良い職場があれば転職したい」と考えている人へ情報を届けることが課題です。
リファラル採用を導入する上で注意した点は、社員への周知とモチベーションをアップさせるための取り組みです。リファラル採用自体を、社員紹介採用「MEET’S」と名付けてブランド化し、中途採用者向けにワークショップを開いたりしながら、浸透させ繰り返しアナウンスをして運用したことが結果へ繋がったと考えられます。
導入成果としては、2015年度におけるリファラル採用実績は上半期1名だったのが、下半期には12名へと伸びました。社員の協力率も1%だったのが9.4%にまで伸びたことで、採用に占めるリファラルの割合も2%から10%へ飛躍的UPしました。引き続き継続して実施することで、課題としていた転職潜在層へのアプローチも結果として繋がって来るのではないかという期待が持てそうです。
ピクスタ株式会社におけるリファラル採用の事例
ピクスタ株式会社は、従来の人材紹介エージェントや求人サイトを活用した採用活動に限界を感じ、リファラル採用を導入しました。リファラル採用を導入することで、従来の採用活動ではアプローチすることができていなかった層へアプローチすることが課題です。
ピクスタ株式会社では、役員が率先して自身の友人や知人を紹介することで、社員への理解を示しました。気軽にリファラル採用制度を使ってもらうために、食事の補助費を出すなどして、最近会っていない友人や知人に会ってもらうことを推奨しています。リファラル採用はあくまで「制度」であり「義務」では無いことを意識付けして、社員の「紹介しなくてはならない!」という心理的ハードルを下げる取り組みを行いました。
2015年で採用された社員のうち15%がリファラル採用という結果でした。翌年度は40%という数字にまで実績が伸びたことには驚きです。もともと友人・知人であった人たちが増えることで、フラットで風通しの良い社風が促進されてピクスタの理念にも近づいたという嬉しい結果につながっているようです。
リファラル採用導入のためには事前の調査や分析など準備が大切
日本におけるリファラル採用の成功事例としては、ベンチャーやスタートアップといった比較的、先進的な取り組みをしている企業に多く見られます。今後リファラル採用の導入を検討されているのであれば、まずは自社が抱える人材採用の課題を明確にし、リファラル採用を導入することでどの部分が解決できるのかを社内でよく検討する必要があります。
自社にリファラル採用を浸透させるためにはどのような取り組みが必要なのかなどを事前に検討した上で、導入することが成功への近道だと言えそうです。