時間外労働等改善助成金のテレワークコースとは?導入費用が軽減できる!

時間外労働等改善助成金とは?

平成30年4月に公表された「時間外労働等改善助成金」は、時間外労働に対する施策を取った中小企業に向けて助成金を出す制度です。現在関連法案の改正などが進められている「働き方改革」ですが、残業規制による「長時間労働」の是正も改革の目的の大きな一つとして含まれています。

育児や介護などのライフイベントによって働く時間が制限される社員に対して、在宅勤務やサテライトオフィスなどの勤務を行うテレワークを推進する制度が「テレワークコース」です。

テレワーク導入におけるメリット

テレワーク導入におけるメリットは通勤時間のカットによる拘束時間の軽減と心理的負担、物理的負担の軽減が挙げられます。

平成28年の社会生活基本調査の結果によると、日本人の1日あたりの平均通勤時間は1時間19分とのことです。しかし都道府県ごとに確認すると、1位は神奈川県の1時間45分、2位は千葉県の1時間42分、3位は埼玉県の1時間36分、4位は東京都の1時間34分と上位の都道府県が首都圏に固まっていることが分かります。首都圏のみに限定すれば、往復1時間30分以上、片道45分以上かかる計算となります。平日5日間の出勤だとしても、1時間30分×5日で週7時間30分と、1日の就業時間と同程度の時間を通勤に費やしていることが分かります。

参考URL『総務省統計局』社会生活基本調査からわかる47都道府県ランキング

出勤の手間がなくなれば1日あたり約1.5時間は削除することができ、1週間でみると1営業日分は働けることがいえます。テレワークを導入すれば出勤する手間も省け、また朝の混雑する時間帯を避けることもできるため、通勤ラッシュの緩和にも繋がるでしょう。

テレワークを導入することで得られる効果は、通勤時間の短縮だけではありません。

総務省の発表によると、テレワークを「導入している」と回答した企業は16.2%にとどまり、「導入していないが、具体的に導入予定がある」と回答した企業と合わせても全体の2割程度となっていて、約8割が導入する予定がないと話しています。

我が国企業のテレワーク導入状況
出典元『総務省』第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~

しかし導入企業においては約8割がプラスの効果を実感していて「効果がなかった・マイナスの効果だった」といっているのは1.5%のみとなっています。

我が国のテレワーク導入企業における導入効果
出典元『総務省』第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~

テレワークの導入率は必ずしも高くはないのですが、テレワークを導入した企業の多くが導入の効果を実感しており、企業におけるテレワーク導入の意義を示唆する結果となっています。

テレワークの導入目的としては「提携型業務の効率性(生産性)の向上」が最も多く、次点に「勤務者の移動時間の短縮」、他にも「非常時(地震・新型インフルエンザ等)の事業継続に備えて」「顧客満足度の向上」などが挙げられます。導入目的に対して、8割以上の企業が満足しているテレワークの導入施策は、非常に有用であると考えられます。

テレワークの導入目的
出典元『総務省』平成 27 年通信利用動向調査の結果 

多様な働き方を推進していく上で欠かせないテレワーク。テレワーク導入をサポートしてくれるテレワークコースについて紹介していきます。

テレワークコースの目的や概要とは?

多様な働き方の推進は、育休や介護の社員の対策に限らず、通勤の負担の軽減やワークライフバランスを保つことで従業員も満足度を上げることができる、今やどの企業でも取り組むべき課題となっています。

在宅勤務やサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施した企業に対し、実施にかかった費用の一部を助成する制度がテレワークコースです。

どんな取り組みで助成金を受給できるのか

時間外労働等改善助成金はそれぞれのコースごとに成果目標が決まっていて、目標を達成するための取組みを実施し、成果目標を達成することで助成されます。テレワークコースの成果目標は下記で、①~③全てを達成する必要があります。

  1. 評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる
  2. 評価期間において、対象労働者が在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した日数の週間平均を1日以上とする
  3. 年次有給休暇の取得促進について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して4日以上増加させる。または所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる

「評価期間」とは交付決定の日から平成31年2月15日までの中で、1か月~6か月の期間で、申請者が事業実施計画際に設定した期間の間で判断します。

受給金額

テレワーク導入に要した経費や取り組み費用の一部が成果目標の達成状況に応じて支給されます。支給額は、対象経費の合計額 × 補助率ですが、上限額を超える場合は上限額となります。

テレワークコースの受給金額
出典元『厚生労働省』「時間外労働等改善助成金」のご案内(テレワークコース)

上限額は「1人当たりの上限額」×「対象労働者数」 または「1企業当たりの上限額」のいずれか低い方の額となります。助成金額が決まっているものでなく、成果目標に対して達成できたか、未達成だったのかでテレワークコースの助成金の支給額が変わります。

もちろん達成するように努力しなければなりませんが、未達成の場合にも一定の金額は支給されます。まずは評価期間を通して取り組みを推進してみましょう。

どんな取り組みが認められるのか

テレワークコースの助成金の対象になるのは、以下のものです。以下の中から1つ以上実施してください。

  1. テレワーク用通信機器の導入および運用、例えば、社内のパソコンなどを外部から遠隔操作するための機器を導入する場合等が該当します。
    ※ただし、パソコンやタブレット、スマートフォンは支給対象外ですのでご注意ください。
  2. 保守サポートの導入
  3. クラウドサービスの導入
  4. テレワークに関する規定の整備など、就業規則・労使協定などの作成や変更
  5. 労務管理担当者や労働者に対する研修や周知と啓発
  6. 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング

引用元『厚生労働省』時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

契約形態が、リース契約、ライセンス契約、サービス利用契約などで 事前に設定しておいた評価期間を超える契約の場合には、評価期間の間の経費のみが対象とされます。

受給できる事業所の要件について

時間外労働等改善助成金に共通となる企業の受給要件は、下記のすべてを満たす必要があります。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること
  • 中小企業事業主であること

中小企業事業主
出典元『厚生労働省』時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

テレワークコースでは、下記もいずれも要件として必要となります。

  • テレワークを新規で導入する事業主(試行的に導入している事業主も対象)
    またはテレワークを継続して活用する事業主
  • 時間外労働の制限やその他の労働時間等の設定の改善を目的として、在宅又はサテライトオフィスで就業するテレワークの実施に積極的に取り組む意欲があり、成果が期待できる事業主であること

申請期間

平成30年12月3日(月)までに「時間外労働等改善助成金交付申請書」を事業実施計画書などの必要書類とともに、テレワーク相談センターに提出します。そして平成31年2月15日までの中の、1か月~6か月の設定した期間中で取り組みを実施します。

平成31年度の締切は、記事を公開しました平成30年12月28日時点では、まだ公表されておりません。

テレワーク導入に政府も力を入れている

テレワークコースは成果目標が未達成であっても補助がされる、時間外労働等改善助成金のコースの中でも、特に国や政府が力を入れているコースです。テレワークが実現することは、育児や介護の都合で退職する従業員が減少し、優秀なスキルをもった人材に長く活躍してもらえる環境作りにも役立ちます。

最近では「ワークライフバランス」を採用時に重視する人も増えてきています。多様な働き方を推進し実施しているということは企業の大きなブランディング要素にもなります。

大きな可能性を秘めたテレワークの導入に是非チャレンジしてはいかがでしょうか。

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