社員のモチベーションアップ方法とは?欲求を理解し、向上につなげよう

社員のモチベーションの上げ方とは?動機付けが重要!

モチベーションとは「動機付け」という意味の英語で「人が行動を起こすことにつながる要因」を意味します。

「モチベーションを上げる」ということは、動機付けという名前の通り「行動を起こすための理由(動機)付けを明確にする」ことです。

「罪と罰」などで有名なロシアの小説家ドストエフスキーの話に「半日かけて穴を掘り、半日かけて穴を埋める繰り返し」という刑罰があります。「動機の無い労働」が刑罰に値するほど厳しい行動であることを示唆する話は、逆説的にモチベーションを上げるための動機付けがいかに重要かを示しています。

今回の記事では、社員のモチベーションアップの方法と、モチベーションの上げ方のコツをご紹介します。

社員のモチベーションアップの方法とは?上げ方のコツ!

行動を起こす理由は人それぞれです。「生活するためにお金を稼ぐ」「同僚や上司から認められたい」「実現したい将来がある」など、何かの欲求を満たすために行動を起こします。

社員のモチベーションを上げたいのであれば、社員がモチベーションの元として「何を求めているか」が明確である必要があります。ゴールが決まっていなければ、スタートが切れません。

社員のモチベーションの元になっている欲求を知ろう!

モチベーションの元となる人間の欲求には、様々なものがあります。人間の欲求を体系的に表したことで有名な、アメリカの心理学者マズローの「欲求5段階説」が、モチベーションの理論としても有名です。

マズローの欲求5段階

  • 第1段階:生理的欲求
  • 第2段階:安全欲求
  • 第3段階:社会的欲求(帰属欲求)
  • 第4段階:尊厳欲求(承認欲求)
  • 第5段階:自己実現欲求

マズローの欲求5段階説では「低階層の欲求が満たされることで、より高次の欲求を欲する」とされています。各階層の欲求が社員のモチベーションにどのように影響を与えるのか、具体例を挙げながら説明していきます。

第1段階:生理的欲求

生理的欲求とは「生きるために必要な最低限」を求める欲求です。

生理的欲求を阻害する例としては、ブラック企業に代表されるような環境があります。

「長時間労働によって家に帰れず寝ることもできない」「食事を摂取する休憩時間すらとれない」などの労働環境や、「最低限生きるための家賃や食費が払えない低賃金」「そもそも給料が支払われない」などの状況では、生理的欲求は満たされません。

生理的欲求が満たされる状態とは?

生理的欲求は、基本的には「最低賃金」や「休日日数」などの法律で定められている内容を満たしていれば、最低限のレベルでは満たされる欲求です。

「家に帰って睡眠できる」「食事をとる時間がある」「休憩時間に飲み物が飲める」「適切な温度で仕事ができる」など、快適な職場には当たり前にあるものが「生理的欲求」を満たす環境だと言えます。

第2段階:安全欲求

安全欲求とは「危険を回避したい、安心安全な場に身を置きたい」という欲求です。

「自社の建物が古く、いつ崩れ落ちるか分からない」「会社が倒産しそうで、いつ仕事がなくなるか分からない」など、身の安全だけでなく経済的な安全や保障が無ければ、安全欲求は満たされません。

安全欲求が満たされる状態とは?

安全欲求が満たされている状態を仕事に置き換えて考えると、身近なものとして「雇用の保証」があります。

無期雇用である正社員への登用が保証の代表例ですが、安全欲求を満たすためには、正社員以外に対しても雇用期間の明示や延長などを行うことが大切です。

労働契約法第5条には「使用者は、労働契約により、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することが出来るよう、必要な配慮をするものとする。」と明記されています。「労働安全衛生法」第71条2で事業者にも「快適な職場を形成する努力義務」が定められています。

パワハラの事例において安全配慮義務に違反していたと主張する訴訟も起きています。パワハラやセクハラは安全欲求を脅かし、低次の欲求を阻害する原因となるため、細心の注意が必要です。

第3段階:社会的欲求(帰属欲求)

社会的欲求とは「会社や家族や仲間に属したい」という欲求です。

「毎日違う会社やチームに派遣される」「自分の仕事が何の役に立っているか分からない」といった状態では、社会的欲求は満たされません。

社会的欲求が満たされる状態とは?

いち社員として会社に属するだけでなく「所属する組織において必要とされている」「一員として認められている」と感じることで、社会的欲求が満たされます。所属する組織が他よりも優れていると思える事も影響を与えます。

職場にいじめがないことはもちろんですが「社員同士が気軽にコミュニケーションをとれる(同僚などの仲間がいる)」「自分の業務が他の人の役に立っている」などの状態が、社会的欲求が満たせる職場です。

書類のコピーのような雑用と呼ばれる作業でも、上司がコピーする時間を他の業務に充てられていることを説明すれば、無意味な労働ではなく上司の役にたっていると感じて、社会的欲求を満たす動機付けとなります。

第4段階:尊厳欲求(承認欲求)

尊厳欲求(承認欲求)とは、「仲間から価値ある存在として認められたい」という欲求です。

不明瞭なあいまいな評価制度などで「結果を出しているのに評価(承認)されない」のであれば、尊厳欲求を満たしていない状態と言えます。

尊厳欲求が満たされる状態とは?

尊厳欲求は、地位や名誉、権力などによって満たされます。

役職やプロジェクトの一任などで権限と責任、裁量を与えられることで尊厳欲求が満たされます。優秀な成果を上げた社員を社内で発表する表彰制度も、尊厳欲求を満たす仕組みと言えます。

役職を与えることには「(社外の人からも)仕事のできる人物だと思われたい」「自分の業績や結果を認めて評価してほしい」などの欲求を満たす効果もあります。

第5段階:自己実現欲求

自己実現欲求とは「理想とする自分になりたい」という欲求です。自己実現欲求の特徴として「無償性(報酬などの見返りを求めていないこと)」が挙げられます。

「生活や安全が保障され会社の仲間や上司にも評価されているが、自分の興味にもとづく仕事とは無関係な勉強をするための、プライベートの時間が足りない」などが、自己実現欲求が満たされていない状態です。

自己実現欲求が満たされる状態とは?

教育制度が充実している、ワークライフバランスでプライベートで自由に使える時間があるなどが、自己実現欲求が満たされる環境として挙げられます。

ボランティア活動による社会貢献も、見返りを求めていない自己実現欲求を満たす行動と言えます。逆に見返りを求めるボランティア活動は、自己実現欲求ではなく、ボランティア活動組織に属したい帰属欲求や、他人から褒め称えられたい承認欲求からの行動です。

自己実現欲求の実現を求める段階に至った人材に対して必要なのは、可能性や能力を伸ばす・発揮する場を与える事です。自己実現を応援するための人事制度がどれだけ作れるかがカギになります。

優秀な人材であればあるほど、自己実現欲求を満たす段階に至っています。しかし「この会社では自己実現欲求を満たせない」となってしまうと、自己実現欲求を満たせる会社への転職が起こる可能性があるため、従業員が「どんな理想像を描いているのか」を理解することが大切です。

低次の欲求が満たされていなければ意味がない!

第5段階の「自己実現欲求」は成長欲求と言われます。社員のモチベーションが最も高い理想の状態は、社員全員が「自己実現欲求」を満たそうとしている状態です。

自己実現欲求を満たすためには、第1段階の「生理的欲求」から第4段階の「尊厳欲求(承認欲求)」までの「欠乏欲求」と呼ばれる欲求が満たされていることが前提になります。

「常に仕事が忙しくて家に帰れない」「賃金が低くて最低限の生活すら怪しい」状態で「仕事のやりがい(自己実現欲求)」を満たそうとしても、効果は薄いです。自己実現欲求を満たそうとするのであれば、低次の欲求を満たしておくことが必要です。

欠乏欲求は、一度満たされた後はモチベーションを高めるための理由になりにくい、という特徴があります。「多少足りないことがあっても我慢することができる」ことが理由だと言われています。

例外として、繁忙期などで「睡眠時間が十分にとれない」「家に帰れない」などの生理的欲求が満たされない状況であっても「繁忙期が終わるまでの我慢だ」といった目標があれば、帰属欲求の「会社のために必要な仕事をしている」、尊厳欲求の「成果を出して認められたい」などの動機付けで、モチベーションを保つことができる場合もあります。

第4欲求の「尊厳欲求(承認欲求)」や第5欲求の「自己実現欲求」は、従業員ごとの価値観により「何をすれば満たされるのか」が異なります。自社の社員が大事にしている価値観を理解することが、社員のモチベーションアップを図る上で重要です。

モチベーションアップは社員の価値観の理解から!

社員のモチベーションをアップさせ、会社の業績を向上させるためには、社員の自己実現欲求を満たすことが大切です。

自己実現欲求を満たすためには、低次の生理的欲求から尊厳欲求(承認欲求)を満たしている必要があります。長時間労働の是正や雇用体系の整備、社風や人間関係を考慮した職場作り、客観的で明瞭な評価制度などが、全社員のモチベーションアップに大きく貢献します。

高次の欲求になるほど「何を得ると満足できるのか」に個人差が生まれます。従業員一人ひとりと信頼関係を築き、本音での会話をすることが、社員のモチベーションを上げるコツです。

社員のモチベーションアップを図るためには、社員が今どんな欲求を満たしているのか、次にどの欲求を満たすべきなのかを明確にして「何を得ると満足できるのか」という社員の価値観への理解を深めることが、最も有効な社員のモチベーションの上げ方と言えるでしょう。

スポンサーリンク