経営人材の育成方法とは?具体的な育成プロセスについて

経営人材がいない、または育たない理由とは?

経営人材の育成は、人事の重要課題として上位に挙がるテーマのひとつです。

経済産業省の調査によると、将来の経営人材の確保・育成について「順調」と答えた企業は7.2%しかなく「どちらかというと順調」を含めても37.6%となっており、過半数の企業が経営人材を確保・育成できていない現状が明らかとなっています。

貴社では、将来の「経営人材」の確保・育成の状況はいかがですか
出典元『経済産業省』「経営人材育成」に関する調査結果報告書

経営者の役割は「意思決定をする」「戦略を立てる」「組織をつくる」「目標を決める」など、挙げ始めればきりがないほど多元的です。組織にとってマストの存在である経営人材を育成するためには、基本的なプロセスを踏襲しつつ、具体的な人材育成戦略に落とし込む必要があります。

今回の記事では、経営人材の育成方法について、具体的な育成プロセスをご紹介します。

経営人材の育成方法とは?具体的な育成プロセスについて

経営人材の育成プロセスとは?

経営人材育成のプロセスとポイントは、基本的には以下のようにシンプルなものです。

  1. 人材要件を設定する
  2. 人材を把握し、候補者を選ぶ
  3. 候補者を評価・プールして育成計画を立てる
  4. 候補者に成長機会を与える

1.人材要件を設定する

経営人材育成の1つ目のプロセスとして、自社ならではの人材要件を設定する必要があります。

経営人材の育成に長期的・継続的に取り組む際は、育てたい経営人材のイメージを明確化して、人材要件として設定します。「育成のゴール=経営人材に求められる要件」を設定することで、組織内での人材選定におけるバラつきを軽減できると同時に、効率的な育成プランニングが可能になります。

大手企業や基幹産業が多岐にわたる組織では、組織内で共通した人材要件・定義が求められます。実際に大手企業や海外売上比率が10%以上の企業は、経営人材の要件定義の割合が高いことがさまざまな調査で分かっています。

自社の人材要件を決める際のポイントは、自社ならではの「らしさ」です。自社らしい経営人材を育成する際は、自社の社風や価値観などを明確化して、何を大事にして何を変えていくかを考え、自社ならではのエッセンスを要件に落とし込むことが重要です。

2.人材を把握し、候補者を選ぶ

経営人材育成の2つ目のプロセスとして、人材それぞれのスキルや適性を把握して、育成対象の候補者を選ぶ必要があります。

経営人材の育成は長期的に実施するプロジェクトなので、何をいつまでに決めるかという時間軸の視点がなければ、効果的に実行できません。

育成対象となる人材の選抜については、できるだけ早い段階から選抜する「早期選抜」をどのように実現していくかが重要です。企業によっては、新卒採用の時点で経営人材枠での採用を実施したり、入社時から公募・選抜を行うところもあります。

育成早期化の背景には、若くしてビジネスリーダーのポストに着任できる人材を育成したい、あるいはグローバルな環境でマネジメントできる人材を育成したいといった、各企業の狙いがあります。欧米のグローバル企業と同様に、日本企業でも「40代の社長」を求める時代となっているのです。

候補人材を選抜する際は、主に「360度評価」と「面接」を行う方法が一般的です。特に360度評価は、評価対象の人物を複数かつ多様な視点から評価できる点が有用です。候補人材に対して360度評価を定期的に実施すれば、リーダーとしての資質を継続的に測定できるだけでなく、360度評価のフィードバックで選抜者本人が自分の活動を見直すきっかけ作りにもなります。

3.候補者を評価・プールして育成計画を立てる

経営人材育成の3つ目のプロセスとして、候補者を評価・プールして育成計画を立てる必要があります。

経営人材候補者の選抜以降は、候補者たちの成長を管理するシステムが必要です。システムの形式は企業によってさまざまですが、経営陣を中心としたメンバーが候補者一人ひとりの特徴や成長状況などを定期的に確認し、今後の育成プランを検討する場を設けます。

選抜された候補者はハイパフォーマーでしょうから、候補者の配置や異動を行う際は、全社的な調整が必要になります。特定の部門だけでなく全社で最適な人材を現場で育成していくためには、経営陣が複数人参加する会で進めていくのが効果的です。

候補者の課題やステップを設定した後は、一人ひとりを最適なポジションに配置し、難しい課題にチャレンジさせて成長を促します。

一定期間チャレンジさせてみた後は、候補者の成長度合いを分析します。さらなる成長は期待できるのか、思いのほか伸び悩んだのかなどを確認して新しい課題を与え、実行と検証を繰り返して候補者の適性を見極めましょう。

4.候補者に成長機会を与える

経営人材育成の4つ目のプロセスとして、候補者に成長機会を与える必要があります。経営人材候補者にとっての成長機会は、大きく分けると「実務経験」と「研修」の二種類があります。

経営人材候補者に学習機会を与える際は「70:20:10フレームワーク」が参考になると言われています。70:20:10フレームワークとは、リーダーの学習の70%は「実際の仕事経験」によって、20%は「他者との社会的なかかわり」によって、10%は「公的な学習機会」によって起こるという理論です。

実務経験を通じた学習を意図的にもたらすためには、配置や異動をよく考えて行い、時には修羅場を経験させることも重要です。新しい業務や厳しい環境でチャレンジングな任務を与えることで、候補者の大きな成長を促し、適性を見極めやすくなります。企業によっては、国を越えて優秀な人材を登用する企業もあれば、候補者のために新しい仕事を一から創り出していく企業もあるほどです。

実務経験だけでなく研修から得る学習にも、日々の業務に役立つ知識だけでなく、日常業務だけでは学びきれない経営視点の知識を補完するという役割があります。経営人材の育成で最近特に注目されているのが「アクションラーニング型研修」です。

アクションラーニング型研修とは、研修前半にインプットをした後、後半で自分なりのアウトプットを考えさせるという形式の研修です。アウトプットは「事業の成長戦略の提案」や「新規事業提案」になるケースが多いと言われています。

経営人材の育成にかかる時間と労力を惜しんではいけない!

経営人材を育成するためには、経営層の取り組みだけでなく、中長期的な育成計画の作成が大切です。

経営人材を育成するプロセスでは、各ステップでやらなければならないことが山積みです。経営人材に限らず、人材の育成にはどうしても多くの時間と労力がかかるものですので、手間やコストは惜しまないようにしましょう。

経営人材の育成がうまくいっていない場合には、どのステップで失敗しているのか、何故失敗したのかを振り返りながら改善していくように努めましょう。

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