社内コミュニケーションの活性化はなぜ必要なのか?
社内コミュニケーションの重要性は多くのところで指摘されていますが、社内のコミュニケーションの問題に対応するには「社内コミュニケーションが不足している」時に引き起こされる問題や要因についても知っておくことが重要です。
シリコンバレーのIT企業をはじめ、さまざまなビジネス現場で「従業員感の連帯、つながり意識の醸成」が経営課題として認識されている米国ですが、McKinsey & Companyが実施したワークスタイルに関する調査で興味深いものがあります。
「従業員同士が連携し合うことで、組織の生産性は20~25%向上し、その効果は年間1.3兆ドル(日本円にして140兆円超)に相当する可能性がある」という内容です。働きがいのある組織、社内コミュニケーションが活発な企業が、いかに企業の生産性を高めていくかをあらわしている調査と言えます。
別の調査、米SMB Communicationによると「社内コミュニケーションの弊害による生産性の損失は従業員1人当たり年間約2万6000ドル(約300万円相当)」という算出もされています。
社内コミュニケーションの不足によって引き起こされる問題は、従業員が数十人いる場合は数千万円、大企業の場合は数億円規模の生産性損失が生まれることになります。社内コミュニケーションの活性化の重要性を、2つの調査が如実に表しています。
参考URL『IT media NEWS』職場コミュニケーション不足は「数千万円の損」? 米IT企業が取り組む“意識改革” (1/3)
調査結果から見る社内コミュニケーション不足の背景
社内コミュニケーションの不足は、組織にどういった影響を具体的に与えているのでしょうか。
HR総研が実施した「社内コミュニケーションに関する調査」から読みといていきます。
部門間・事業所間のコミュニケーションに課題ありが70%近く
「課題のあるコミュニケーションはどこか」を選択式で聞いたところ、セクショナリズムが課題となる「部門・事業所間」が一位で68%です。拠点は物理的に離れていることから、対面でのコミュニケーション機会が限られていることが大きいとみられます。
「経営層と社員間」の壁を挙げる企業も半数以上います。部門内では「部長とメンバー」の間に距離があるとの結果が出ています。
出典元『HRpro』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
社内コミュニケーション不足は業務の障害になると認識している
「社内コミュニケーション不足は業務の障害になるか」という質問には、ほぼ回答者の全員が「そう思う」と認識しているという結果となっています。
社内コミュニケーション不足に対する危機感は、従業員規模に限らず、どのような組織でも強いことが見て取れます。
出典元『HRpro』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
情報共有は6割の企業が「できている」と回答
社内コミュニケーションに問題があると認識している一方で「社内の情報共有は十分にできているか」という質問には、「十分共有できている」「ある程度はできている」と回答する企業は60%と割と多めの結果になっています。
ただし「十分に共有できている」と自信をもっている企業はわずか4%にとどまっています。「情報共有=情報発信」はSNSなどのITツールを活用することでできている印象はあるものの、効果的に使われているかどうか自信を持っている企業は多くないのかもしれません。
出典元『HRpro』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
社内コミュニケーションを阻害する原因は?
調査結果1位は「組織風土・社風」
社内コミュニケーションを阻害する原因について聞いてみたところ、1位は過半数の54%が挙げた「組織風土・社風」です。「組織風土・社風」は組織全体、経営層の方針などにもかかわるところなので、トップ自らが率先しての風土改革が求められると言えます。
ITツールなどの普及による「対面の機会減」を挙げる声も多くあります。20代のデジタルネイティブ世代が社会の中で増えてくるにつれて「コミュニケーションスキルの低下」対策は、より重要になってくると言えます。
出典元『HRpro』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
社内コミュニケーション不足が引き起こす問題・課題とは
仕事に対する視野や範囲が狭まる
社内コミュニケーション不足の問題は、個人の仕事にも大きく影響します。自分一人でできる仕事の幅は限りがあるもので、自分のスキルでできる仕事をしているときは充分ですが、ステップアップすることはできません。
個人の仕事の幅を広げ、スキルアップを考えるならば、他者と交流し新しい分野に挑戦するなど、社内のコミュニケーション活性化が必要不可欠です。
チームや部署の垣根をこえたコミュニケーションは、横のつながりを強固にし、個人のスキルアップにも役立ちます。個人間のコミュニケーションが活性化することで、部署間のつながりも強くなり、組織力も強化されていくのです。
コンプライアンス違反や不正行為につながる
社内のコミュニケーションが不足すると、お互いに誰が何をやっているのか、部署間や個人同士のつながりも希薄になり、業務に支障をきたすことも多くあります。
社内コミュニケーションが不足している組織では、コンプライアンス違反が起こっていても、周りがタイムリーに気が付くことが困難になります。お互いに意識が希薄という社内環境は、コンプライアンス違反や不正の温床になる可能性があるのです。
お互いの行動をきちんと把握できている壁のない組織は、お互いの目がけん制となりますし、透明性のある組織で万が一不正行為があっても、早い段階で解決することも可能になるでしょう。
社内コミュニケーションが活発であるかどうかは、組織の健全性にも関係してくるのです。
営業機会の損失や顧客との信頼関係にも影響する
社内コミュニケーションが活発でない組織は、誰がどういった仕事をしているかを把握できていません。顧客からの問い合わせに対して迅速かつ適切な対応を取れないケースも発生し、せっかくの営業機会やオーダーの可能性をなくしてしまうこともあります。将来的に大きな契約につながるクライアントも逸してしまうケースも発生します。
社内のコミュニケーションが活発であれば、仮に自分の部署の業務でなくとも、部署の枠を超えて協働する意識が働き、部署間で上手に連携し営業利益を最大化することができます。お互いに顧客を紹介し合うような関係性が生まれることも期待できます。
まずは自社のコミュニケーションの課題を明らかにしよう!
社内のコミュニケーション不足は、社員の能力低下から引き起こされる業績の低下だけでなく、コンプライアンス違反による法的な問題、顧客満足度や自社ブランディングの低下など、さまざまなリスクがあります。
社内コミュニケーションが不足することでひき起こされる問題を社内で共有し、全従業員が課題意識を持つことが大切です。一朝一夕には改善しづらいものですが、一つひとつ課題を解決して継続していくことが、組織のコミュニケーション不足を解消する近道になるのです。