初めての面接官は「失敗しないためのTO DOリスト」を作成しよう
初めて面接官を担当するときは、いきなり大成功を狙うよりも「失敗しない」ことに注意したほうがよいでしょう。どんなに小規模な企業でも「初めて面接官に採用決定まで任せる」ことは、まずありません。次の面接官や経営者が採用合否を判断しやすくなるよう、「失敗しない」面接を目指しましょう。
そのために必要なのは、「失敗しないためのTO DOリスト」を作成すること。具体的には、面接で応募者のマインドセットを見抜くために、事前に質問の準備をすることはもちろんですが、「法的に聞いてはいけない質問」を頭に入れておくことは最も重要です。
ポイントは「面接官は会社の顔である」という意識
法的にタブーとされる質問を避けるべき、一番の理由は「面接官が応募者に悪いイメージを与えると採用活動そのものに悪影響を及ぼす」から。もし法的タブーに抵触する質問を受けた応募者が企業に対して激しい嫌悪感を持った場合には、「就職差別」を行う法的リテラシーの低すぎる企業としての汚名が広まることにもなりかねません。
応募者は面接時、緊張しているうえに、もともとは「入社したい」という想いで応募しているため、あからさまに嫌悪感を表したりしないでしょう。そのため、面接官側が気づかない可能性が高いので細心の注意が必要です。
また、外資系大手企業の中には、見送る応募者への面接時対応をマニュアル化しているほど意識の高い企業もあります。見送られた応募者が会社に対して嫌悪感を持つどころか、好感を持ってくれれば企業ブランディングに有利に働きます。「面接官は会社の顔である」という意識が表れた好事例と言えるでしょう。
不慣れな「初めての面接官」は、不適切な質問を行いがち
厚生労働省の調査によると「就職差別」につながる事象が平成26年に急増しました。これは雇用情勢改善に伴って求人数が増加したのに対して、長らく採用を抑制してきた企業が不慣れな採用活動を行うにあたり、「不適切な質問」を行ってしまったためとの考察があります。
応募者の緊張を解くためにと家族に関することを尋ねたり、応募用紙に家族欄が残っていたり。あるいは応募者の本当の姿に近づきたい一心で、思想に関する質問を投げかけてしまったり。
初めての面接官や、数年ぶりに面接官を担当することになった不慣れな面接官は、思いがけないところでタブーを犯す可能性が高く、特に注意が必要であることを示唆しています。
面接で失敗しないためのTO DOリスト
初めての面接官が「失敗しない」ためには、面接で聞いてはいけない「法的タブー」を含め、面接前後にそれぞれ行うべきことまで、網羅性を重視したTO DOリストを作成しておくことがおすすめです。
ここでは、「初めての面接官が面接で失敗しないためのTO DOリスト」を作成する際のポイントを紹介します。
TO DO1.
面接準備の段階では「質問と評価基準」をセットで用意する
書類選考の内容を把握して、面接の前に質問項目と評価基準を決めておきましょう。ここで意識すべきは、「採用のミスマッチ」の問題です。
応募書類を見たり、これまでの実務経験や学習経験を聞けば、スキルセットはある程度把握できます。しかし、自社に入社したあとで活躍できる人材かどうかを見抜くためには、応募者の「マインドセット」を把握し自社の人材要件にフィットするかどうかが重要です。
そのためには、面接官自身が「何のためにその質問をするのか」という目的を明確にし、意図を持って質問できるための準備が必要です。
「採用のミスマッチ」を防ぐために、あるいは応募者の人物特性を引き出すために面接の準備としても、適性検査を活用することもおすすめです。
TO DO 2.
面接本番で「話しやすい雰囲気」を作り本音を引き出す準備
面接官は、「応募者が緊張している」ことに配慮し、リラックスさせて会話を続かせる努力をする必要があります。応募者は初対面の相手です。しかも、あなたの会社に入社したいと思っており、基本的には「いいところを見て欲しい」と思っているはずです。いきなり腹を割ってありのままの姿を見せてくれることは皆無でしょう。
事前に準備しておいた、「聞きたいことだけ」を羅列してヒアリングをしても、会話が深まらず相手の価値観や人柄は見抜けません。本音をうまく引き出せるように、質問のシュミレーションしておくとよいでしょう。
面接官自身のことや、最近入社した人のエピソードを話したりすると、応募者がリラックスできることも多いようです。会話がループしてきたり、話が深まらない場合には、質問から一度離れて話題を提供してみることも有効です。
TO DO 3.
初めての面接官が最も留意すべきは「法的タブー」
応募者をリラックスさせるために、本音を引き出すために、とつい面接官が聞きたくなってしまう項目の中には、「法的タブー」に抵触するものもあるので注意が必要です。
厚生労働省によると、採用選考の基本的な考え方として、「応募者の基本的人権を尊重する」「応募者の適正・能力のみを基準として行う」ことを挙げています。つまり、これに抵触することは「法的タブー」に該当することを意識すべきでしょう。
厚生労働省が公表している「採用選考時に配慮すべき事項」を引用して紹介します。「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項」の2つの大別され、全11項目が挙げられています。「初めての面接官が失敗しないためのTO DOリスト」にぜひ加えていただきたい項目です。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること
(注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)
(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施
(注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
他にも、初めて面接官に抜擢されたときや、会社が久しぶりに採用面接を再開する場合にぜひチェックして欲しいのは「求人票」です。求人票に法的タブーが記載されたままになっていないか、確認してみましょう。
TO DO 4.
面接後は、応募者を「客観的に評価」できているか振り返る
応募者の評価までが面接官の仕事です。新米の面接官が陥りがちなのが、主観的に応募者を評価してしまうことです。「採用のミスマッチ」を防ぐためには、応募者をどういう基準で評価するのか、「評価基準を具体化、客観化」することが重要です。
客観的な評価基準が組織内にまだない場合は、相談ベースで指標を模索し関係各位と目線を合わせて行ってはいかがでしょうか。こういった地道かつ自発的な行動をとれるのも、初めての面接官だからこそかもしれません。
初めての面接官こそ、事前準備をしっかりと
初めての面接官は、採用活動の業務の流れを理解することも重要です。だけれども、「法的に聞いてはいけないこと」をきちんと理解して、会社の顔としてマイナス加点されないよう留意することは、それ以上に重要なことなのです。