従業員満足度調査の目的と流れとは?課題を明確にして改善し続ける

従業員満足度とは

従業員満足度(Employee Satisfaction(ES))とは、その名の通り従業員の社内での満足度を表す指標です。

マーケティングリサーチ会社の株式会社アスマークは「現在の会社に満足しているのは約4割で、満足している人は過半数以下である」という分析レポートを公開しました。

あなたは、今の職場で働くことに満足していますか。
出典元『ASMARQ』1万人データから探る、社員の離職要因とエンゲージメント(愛着心・思い入れ)に関する分析レポート 【職種別・役職別】

米ギャラップの調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが解ります。この割合は、米国の31%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだということです。

出典元『日本経済新聞』「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査

ベイン・アンド・カンパニーとプレジデント社が共同で調査した結果「やる気あふれる社員」は「満足している社員」よりも生産力が2倍以上あることがわかりました。「満足していない社員」と比べると、3倍も生産性が高いことがグラフからもわかります。

意欲の度合いによる社員の生産性
出典元『PRESIDENT Online』”3人に1人”の不満社員を奮起させるには

「やる気にあふれる」従業員が多い、つまり、従業員満足度が高い企業では、会社全体の生産性があがり業績の向上へとつながる可能性があります。

従業員満足度は、日本国内の人口減少や終身雇用制の崩壊などの視点から、優秀な人材の獲得、定着、育成という点でも注目されています。

今回は、従業員満足度調査を実施する目的と流れ、調査結果の活用方法のイメージについて説明します。

従業員満足度調査とは

従業員満足度調査とは、企業が従業員満足度を把握するために、従業員を対象として実施する調査のことです。従業員満足度調査では、仕事内容や職場での人間関係、各種人事制度やワークライフバランス、会社への愛着度など、様々な観点から、日々の業務を通じてどの程度の満足感を得ることができているかを問います。

調査結果は、現時点における従業員満足度の把握の他、職場環境の改善や教育体制・研修などの見直し、福利厚生の充実など様々な形で活用することができます。

従業員満足度調査の目的とは

従業員満足度調査を実施するにあたって「何のために調査するのか」という目的を明確にしておくことが重要です。

従業員満足度調査には、大きく分けて2つの目的があります。

1つは、従業員の満足度を高めて気持ち良く働いてもらうため、もう1つは経営陣が気付いていない組織の課題を浮き彫りにして分析するためです。

従業員満足度調査の目的を明確にすることで、従業員満足度の状況を的確に知ることができます。調査結果の分析を行うことにより、改善するべき点や、企業が抱えている見えない課題を明確にすることができ、今後の対策や改善方針を決定することができます。

1.従業員満足度の向上

従業員満足度調査を行うことにより、従業員個人の満足度を向上させるという目的が考えられます。従業員それぞれのモチベーションアップや会社への帰属意識に直結するものです。調査による現状分析だけでなく、分析結果を踏まえた施策や前後での変化観測も重要になってきます。

従業員満足度が高ければ、従業員一人ひとりの生産性の向上が見込まれ、結果として企業の業績向上につながるといわれています。まずは従業員満足度調査を行い、満足度の高い部署と要因を分析します。その結果を他の部署に横展開することで、会社全体の満足度を向上できます。

会社や業務に何か不満を抱いている場合は、生産性が下がってしまうだけでなく、近い将来の離職に繋がるおそれがあります。調査結果から離職の兆候をキャッチできれば、事前に離職防止対策を行えます。

2.組織の課題発見

従業員満足度調査を行うことで、組織としての課題が浮き彫りになることがあります。業務内容の見直しや業務量の分散など、社内インフラ整備に活用することが可能です。

経営陣や人事と現場の従業員の意識・目標設定などの考え方にずれがないかの確認や、経営指標の参考としても活用可能です。経営陣が従業員の意見を直接聞くことは難しいですが、従業員満足度調査を行うことで、従業員一人ひとりの意見を聞くことができます。人事・組織面での従業員満足度調査の結果を踏まえて新たな人事施策を導入したり、導入後の改善や定着に向けた問題点の洗い出しにつなげたりすることが可能です。

従業員満足度調査の一般的な流れ

従業員満足度調査を実施する流れについて説明します。

  1. 調査目的の確認
  2. 調査対象の確認
  3. 設問準備
  4. 調査方法の決定
  5. 調査の実施
  6. 調査結果の分析
  7. 調査結果の活用

1.調査目的の確認

従業員満足度調査を行う場合、なぜ調査を行うのか、目的を明確にする必要があります。目的が曖昧なまま調査を始めてしまうと、調査結果も曖昧になりがちですし、たとえ結果を把握できたとしても有効な対策が検討できないことが起こりえます。

「離職率を下げたい」「社内のコミュニケーションを円滑にしたい」「評価に対する社員の納得感を把握したい」など、しっかりと的を絞ります。的を絞ることにより、的確な調査結果を得られやすくなり、結果に対する対策を立てやすくなります。そのため、調査目的は企業の重点的経営課題とリンクすると効率的です。

調査を行う目的を明確することは、調査の実施目的を社内に周知することにも役立ちます。従業員の貴重な時間を割いてもらい行う調査なので、しっかりと回答してもらうためにも、何のために協力してもらうのか、その目的をきちんと周知することが大切です。

2.調査対象の確認

調査の目的が決まれば、どの集団に調査を行うのかを考えます。

離職率低下を目的とする調査のような場合、離職が多い部署や年代という具合に、調査する対象を限定する方法があります。全社員への調査を実施し、その中で属性情報と回答結果を比較する方法もあります。

なぜ調査を行うのか、目的に合わせて調査対象を選ぶことが必要です。

3.設問準備

従業員満足度調査の目的が達成できるような設問を準備します。調査の目的や、あらかじめ想定できる仮説を元に設問を検討しましょう。設問によって調査の効果が大きく変わるので、最も重要な項目といえます。

例えば目的を「管理職のマネジメントに着目したい」とした場合、直接関係のない福利厚生に関わる設問は省きます。目的から外れた設問は、集計も分析もできないので、内容の選定には充分注意します。

設問数にも配慮が必要です。設問数が多すぎると集中力が切れて正確なデータが取れない恐れがあるからです。逆に少なすぎると、調査した結果をうまく活用できなくなってしまう可能性があります。

4.調査方法の決定

調査の目的と照らし合わせ、どの調査方法が適切かを検討します。一般的には、調査票を使う方法と、直接インタビューをおこなう方法があります。

調査票を使った調査は紙面だけでなく、WEBでのアンケートが考えられます。WEBを使った調査は、全体的な傾向がつかみやすい、集計がしやすい、と言われています。遠隔地でも調査しやすいことがメリットとして挙げられます。匿名で調査を行った場合、従業員の本音を聞き出しやすくなる反面、大まかな傾向しかわからない可能性があるので注意が必要です。

インタビューは、詳細な質問をしたい場合や従業員の反応も読み取りたい場合に行われます。例えば、管理職の意識調査など、対象が限られている場合に有効でしょう。しかし、調査対象者が限定されているとはいえ、全員にインタビューをおこなうのは手間もコストもかかります。対面となるため本音を聞き出すのが難しい、という側面もあります。

5.調査の実施

調査を実施するにあたっては外部機関に委託するのか、それとも自社で行うのかを検討します。

外部に委託するにせよ、自社で行うにせよ、従業員の貴重な時間を割いてもらって行う調査です。調査自体を「時間を取られる余計な作業」というデメリットに捉えられると回答が適当になり、正確な調査ができない可能性があります。正確な調査のためには調査の必要性や目的を周知し、協力を促すことが必要です。従業員の負担にならないよう、2週間前後の十分な調査期間を設けることも大切です。

社内の人間関係など、プライベートな内容での回答も想像されます。調査結果がどのようなケースで利用されるのか社内で明確にしておくと、従業員の協力が得られやすいでしょう。

6.調査結果の分析

調査結果を集計し、分析します。集計した結果は以下のような手法を用いて、比較や分析を行います。

  • 対象者全体の平均と、組織、属性別の平均値を比較
  • 同一回答をした組織、属性別の割合を比較
  • 項目間の相関関係を分析
  • 項目の平均値、偏差値を集計
  • 前回調査時との比較

分析を行うことで従業員満足度の状況がわかるだけではなく、改善するべき点がある部署など、企業が抱えている見えない課題を明確にできます。

7.調査結果の活用

調査結果で得られた情報を各種施策に反映させます。この段階で、特に施策に反映できるような調査結果が得られていないのであれば、調査方法の見直しや再実施についての検討が必要になります。

従業員満足度調査の目的は、従業員の声を集め分析して活用することです。「データを集計したら終わり」ではなく、多角的に分析して顕在化した問題に対応する必要があります。

分析結果を開示し、施策に反映させることで、従業員は「自分の意見が会社の経営に反映されている」という意識を強くします。この意識は、社内でのコミュニケーションが活発になることで社内環境の改善に役立ちます。

調査によって得られたデータや分析結果は、翌年以降おこなう調査と比較ができるように保存しておく必要があります。分析結果を反映させた施策が機能しているかどうか、社内環境が改善されているのか、継続的に比較していくためにも調査は単発で行うのではなく、定期的に実施していく必要があるからです。

調査の実施自体が目的化してしまわないように、調査を行ってどのような結果をもたらしたいのか、その目的を明確にしておくことが重要です。

従業員満足度調査を活用するために必要なPDCA

従業員満足度調査は、ただ実施しただけでは意味がありません。目的に応じた回答を集計し、目的に応じたレベルでの対策が必要となります。

従業員満足度調査の実施後、顕在化した課題に対してPDCAサイクルをまわしていくことが重要です。回答を受けて企業としてどのような行動につなげるのか、浮き彫りになった課題に対策を行った企業には、さまざまな効果が現れます。

調査実施後に対策を行ったとしても、改善効果を正しく測定できなければPDCAサイクルを回すことができません。調査を単発で行うのではなく、定期的に継続的に実施していく必要があります。

調査の意図・運用ルールをしっかりと周知すること、対策の実施と定期的に調査を繰り返すことで改善サイクルが回り、効果に表れてくるようになります。調査の実施自体が目的化してしまわないように、最終的にどのような結果を導きたいのか明確にしておくことが重要です。

従業員満足度調査の結果を活用しよう

従業員満足度調査は、調査を行うことが目的ではありません。調査を行った結果、明らかになった問題を解決し、継続的に改善していくことが目的です。

多くの従業員が抱える不満や悩みを分析することは、自社の抱える課題を顕在化することを可能にします。そのためにも、一般的にどんな課題が考えられるのか、どんな調査をすべきなのか、調査設計をしっかりと行いましょう。このことが従業員満足度を有効活用するために重要なステップなのです。

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