従業員エンゲージメントやモチベーションが低い現状と問題
米ギャラップの調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが解ります。この割合は、米国の31%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだということです。
出典元『日本経済新聞』「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査
ベイン・アンド・カンパニーとプレジデント社が共同で調査した結果「やる気あふれる社員」は「満足している社員」よりも生産力が2倍以上あることがわかりました。「満足していない社員」と比べると、3倍も生産性が高いことがグラフからもわかります。
出典元『PRESIDENT Online』”3人に1人”の不満社員を奮起させるには
今回は、従業員がどのようにして自社と出会い、入社し、働いて退社していくのか、長い時間軸で見た従業員と企業の接点を設計する考え方であり、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める考え方である「エンプロイーエクスペリエンス」について説明します。
エンプロイーエクスペリエンスの意味や定義
エンプロイーエクスペリエンスとは、直訳すると「従業員の経験」です。
経験とは、仕事を通じて生産性が高く、夢中になる、楽しさを感じられるワークエクスペリエンスや、従業員の健康状態や会社組織・人事形成の中で経験する全ての影響を包括した考え方のことをいいます。エンプロイーエクスペリエンスは、企業と従業員との接点全てにおいて発生します。
要は入社前からの採用活動や入社後の研修や配属、教育、評価、異動、退職まで全てのプロセスにおいて発生しています。エンプロイーエクスペリエンスは社員と企業との接点、経験によって社員が得る価値やエンゲージメントを表すものです。
エンプロイーエクスペリエンスが実施される目的や背景
現在は、商品やサービスといった「モノ」だけが価値として認識されなくなってきました。良質な経験もトータルで提供していくことで、エンゲージメントを高めていくことが、企業が顧客とともに持続的に成長していく上での鍵となっています。同様に社員が豊かなエンプロイーエクスペリエンスを得ることで、従業員のエンゲージメントを高め、それが企業の成長へと繋がっていく、そんな流れが生まれています。
社員の中に「仕事をし、働く目的が収入ではなく自分の目的である」と考える新たな価値観をもった人も増えてきたことも背景となるでしょう。副業やパラレルキャリアをし、他の会社やボランティアを通して新たな経験を得ようという人も最近増えてきています。
お金が従業員にとって大事なモチベーション要因でなくなった今日において、どんな経験=価値を創り出していけるかが、今後選ばれる企業になる上での重要な要因となってくるでしょう。
エンプロイーエクスペリエンスを向上させるともたらされる企業のメリット
エンプロイーエクスペリエンスを向上すると企業にとってどんなメリットがあるでしょうか。エンプロイーエクスペリエンスには働きがいの観点(動機づけ要因)と働きやすさの観点(衛生要因)の両方があります。
働きがいはやりがいやモチベーションなど仕事を通じて経験できるエクスペリエンスと生産性向上や従業員の心身健康を向上させるなどの働きやすいと感じるエクスペリエンスがあります。どちらも向上すると、従業員を取り巻く環境、キャリアにおいての満足度が向上し、定着率にも繋がります。キャリア形成がしっかり行われると企業の成長にも繋がるでしょう。
多くの経験を積むことで、今まで本人も見えていなかったスキルや能力が開花し人材の教育にも発展します。それにより、生産性向上、業績向上に繋がります。
エンプロイーエクスペリエンスを向上させる方法
エンプロイーエクスペリエンスを高めるためには、様々な経験を積むことのできる人事制度や、横断的な責任者の配置や連携が必要でしょう。
社員のエンゲージメントを上げるために、リアルタイムで働く社員の状態、健康や満足度を把握するようなパルスサーベイや上司と部下の会話を促進し、関係性を高めたり、メンバー同士が、気軽につながり合いえるようなアプリを提供するなど、ナレッジの共有を促進するようなプラットフォームや環境を用意するのも方法の一つでしょう。
衛生要因を上げるために健康経営の推進や職場環境の改善なども効果的です。
離職率・定着率の改善や生産性の向上、業績の向上にもつながる
エンプロイーエクスペリエンスとは直訳すると「従業員の経験」のことであり、入社前の求人票を見た段階から、入社後に働き続ける環境なども含め、従業員の経験をデザインして満足度を向上させる概念です。
エンプロイーエクスペリエンスの向上は、離職率・定着率の改善だけでなく、従業員の健康やモチベーション・エンゲージメントの向上による生産性の向上、業績の向上にもつながる今後最も注目されていくキーワードです。