逆境指数(AQ)とは?IQやEQと並ぶリーダーに必要不可欠な能力

個人によって異なる「逆境」への対応度合い

近年、ビジネスの現場はますます予測困難な時代になっています。市場のグローバル化に伴う競争の激化や、人工知能などのテクノロジーが一層速いスピードで進化している現代は「VUCAワールド」とも呼ばれています。

『人でないとできない業務』もまだまだ多いことも事実です。業務自動化を行う「RPA」も近年大きく注目されていますが、現状活用されているのは主にデータ入力などの定型業務であり、非定型業務を自動化するのに寄与するまでには、まだまだ時間がかかると予測されています。企業活動を担う人材の重要性は、依然高い状態であると言えます。

その中で今、知能指数「IQ」やこころの知能指数と言われる「EQ」とあわせて注目されている人の能力の一つが「AQ=逆境指数」です。

今回は、現代における成功者の条件として提唱された「逆境指数・AQ」について、その概要やメリットなどをご紹介します。

心の逆境指数(AQ)とは?

AQとは「Adversity(逆境) Quotient(指数)」の頭文字をとったもので、人にとって非常に大きな哀しい出来事から日常の些細な怒りまで、あらゆる逆境に対応するために人に組み込まれた行動パターンのことです。

AQはもともと、ハーバードビジネススクール客員教授のポール・ストルツ(Paul G. Stoltz)博士によって考案された考え方で「日常のさまざまな逆境に対して、人や組織はどのように反応するのか」を指数化したものでもあります。

AQでは、人の逆境に対する反応は「Core」と呼ばれる4つの要素が組み合わさって決まるとされています。4つの要素とは「コントロール(Control)」「責任(Ownership)」「影響の範囲(Reach)」「持続時間(Endurance)」です。

人はその逆境への対処方法で「脱落組」「キャンパー」「登山家」の3タイプに分けられるともいわれています。組織に属する人材の80%以上は「キャンパー」であり、逆境のような状況が続くと逃げ出したり、現状を維持しようとします。しかし組織で求められるのは、直接困難に向き合い、解決し、さらには新しいものへと発展させて頂上を目指す「登山家タイプ」なのです。

逆境指数が提唱された背景について

「AQ」は、米国ハーバードビジネススクールの組織コミュニケーションや組織発展についての研究者、ポール・G・ストルツ(Paul G. Stoltz)博士によって提唱された概念です。

知能の程度を表す「IQ(知能指数)」と「こころの知能指数」といわれる「EQ(感情指数)」とともに、『逆境に陥った時のストレス耐性や心の強さ:を表す指標として、ビジネスだけでなく学校など生活のさまざまな場所で注目されています。

変化が著しく多様な働き方、考え方を踏まえて決断していく必要がある現代の企業経営には、IQやEQと同様にAQが重要であるといわれています。

心の逆境指数(AQ)の評価レベルについて

AQのレベルは『CORE』という4つの要素の組み合わせによって決まります。4つの要素とは、「コントロール(Control)」「責任(Ownership)」「影響の範囲(Reach)」「持続時間(Endurance)」です。

AQのレベルは以下の5段階に分類されます。

  1. レベル1 逃避(Escape)……逆境に立ち向かえず逃げようとする
  2. レベル2 サバイブ(Survive)……なんとか生き残ろうとする
  3. レベル3 対処(Cope)……とりあえず対処をする
  4. レベル4 管理(Manage)…… 逆境を最善の方法で管理し解決しようとする
  5. レベル5 滋養(Harness)……ピンチをチャンスに変え、逆境をもとにさらなる飛躍を目指す

一般的に企業や組織の経営を成功に導く経営者やリーダーには、レベル4以上のAQが求められています。よりAQが高い人材の方が成功する確率も比例して高いと言われています。

AQは持って生まれたものではなく、トレーニングや経験した試練の数や大きさ、乗り越えてきた経緯などによっても鍛えることができます。逆境に耐えぬく力を養うことは組織の一員としてはもちろんですが、個人としても人生の中で大いに役に立つものです。こういった考え方をベースに、AQを人事研修などで取り入れている企業も多くあります。

AQが高い人材の特徴や行動例

AQが高い人とは『鋼のメンタル』を持つ人のことだと言われています。

自らの感情を制御しコントロールする能力に優れ、仮にトラブルに巻き込まれたとしてもすぐに落ち込むことはありません。「失敗は成功の元」という考え方をベースに、失敗したとしても常に良い方向へ捉えるため、失敗を恐れて何かを躊躇するようなことはないのです。

相手が何かの拍子に立腹した場合、さらに “怒り” をぶつけると人間関係に大きな亀裂が生じてしまいます。そうした意味のない行為は、可能な限り避けなくてはなりません。しかしAQの低い人同士で意見がぶつかり合うと、お互いに制御がきかず、大きな衝突に発展することも、往々にしてあります。

一方AQの高い人は、立腹している相手に流されることなく冷静に話し合い、自然と相手の怒りを発散させ、コミュニケーションを円滑に戻す力があり、ひいては組織に快適な環境を創造することができるのです。

心の逆境指数(AQ)を組織でどのように生かしていくか

AQとは逆境指数とも呼ばれ、現代における成功者の条件として提唱された一つの概念であり、メンタルの強さを意味しています。

AQを提唱したストルツ博士は『部下のAQを低下される方法』についても紹介しており、組織の人事に大いに役立つものとして人事評価制度での昇格要件としてAQを取り入れている企業も多くあります。

心の逆境指数(AQ)の有効な活用は、企業のこれからの成長につながる可能性があると言えるのです。

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