コンサルティング会社や外資系金融会社で用いられるケース面接
ケース面接という面接手法をご存知でしょうか?元々はGoogleの採用面接で用いられた面接の手法で、現在は外資系金融会社やコンサルティングファームなど、優秀な人材を集めたい企業で導入されています。
ケース面接は、フェルミ推定の応用とも言われており、すぐに答えの出せない質問を出題することで、妥当と思われる仮説を立てながら、質問の回答を論理的に導き出す面接のことです。立てた仮説が妥当であるか、論理が飛躍していないか、質問の本質から外れていないか、などが判断できます。
ケース面接の評価項目として、物ごとに対する考察力や課題解決能力などが挙げられます。論理性が求められるが、固定概念にとらわれない広い視野を持った人材の見極めに使われています。
本記事では、ケース面接とよく比較されるフェルミ推定の概要を説明し、ケース面接の説明、自社での採用選考にケース面接を導入すべきなのかの観点について説明します。
ケース面接とフェルミ推定について
ケース面接の前に、応用元となったフェルミ推定について説明いたします。
フェルミ推定についてはグループディスカッションのお題としても使われているものです。
フェルミ推定とは?
フェルミ推定というのは、実際に調査することが難しい数量などを、いくつかの手掛かりを元にしながら最低限の知識で論理的に概算することです。
本来は科学分野で用いられた手法ですが、データ不足の状況であっても精度の高い推定ができる手法として、人事分野などにも広まっています。
フェルミ推定の質問として、下記の様な例があります。
- 「今地球上では何人の人が寝ているでしょうか?」
- 「日本にある電信柱の数はどれくらいでしょうか?」
- 「世界で一番売れている清涼飲料は何でしょう?」
- 「東京都内にマンホールの蓋はいくつあるでしょう?」
問題を見ただけだと、正解の数が存在することは分かるものの、具体的な数字はすぐには分かりません。フェルミ推定は、出した結論が正解かどうかということよりも、どんな仮説や論理を立てたのか、どう考え結論を出したか、その過程を評価します。
例えば「今地球上では何人の人が寝ているか」という問題を、フェルミ推定で計算してみましょう。
まずは「この地球上に何人の人がいるのか」を考えます。世界の人口は統計データとして一般的に知られているため、調べたらすぐに分かります。ここでは70億人であると仮定します。(2017年時点で、正確には76億人と言われていますが、数字が正しいかでなく、どんな仮説や論理を出したのかが重要なため、一旦おおよその数字とします。)
次に、「人が寝る時間」を仮定します。人が寝るのはおよそ夜の24時から6時くらいまでだと思われるので、このように仮定します。地球上の時間は24時間ですから、今現在24時から6時の時間で過ごしている部分が地球上の1/4であると考えられます。
すると、その時間帯で過ごしている人=寝ている人は、70億×1/4で出すことができます。もちろんその時間帯で過ごしている人が全員寝ているとは限らないですし、人口もその土地によって変わるので、正確には4等分できるわけではないです。
ですが、フェルミ推定は数字が正解かどうかということより、どんな切り口で考えたか、どんな仮説や論理を立てたのか、そしてどう考え結論を出したか。その人の考え方や論理的思考を判断しているのです。
ケース面接とは?
本題である、フェルミ推定の応用とも言われているケース面接について説明します。
ケース面接では、数値を概算した上で、具体的な問題に対する打ち手を考える質問が出題されます。
ケース面接の質問として、下記のような例があります。
- 「都心の駅前にあるカフェの売上を3倍にするにはどうしたらよいでしょうか?」
- 「Jリーグのサッカーチームで、観客数の減少により売り上げが落ちてしまっている。売上をあげるにはどうしたらよいでしょうか?(球場は30,000人収容、年間40試合行っている)」
- 「文化祭で出すアイスクリームの利益を昨年の2倍出したいがどうしたらよいでしょうか?(他のクラスもアイスクリームを出すことが決まっている)」
フェルミ推定と比べて、よりビジネスの実践的な問題が出される傾向にあります。フェルミ推定と同じく、どんな仮説を立てるのか、その上で論理立てて結論を導き出していきます。解き方自体は、フェルミ推定と同じように考えることができます。
例えば、「都心の駅前にあるカフェの売上を3倍にするにはどうしたらよいでしょうか?」という問題を、ケース面接の場合で考えてみましょう。
まず売上を「顧客1人あたりの売上」と「顧客数」に分解します。売上は「顧客1人あたりの売上」×「顧客数」ですので、「顧客1人あたりの売上」と「顧客数」のどちらかを上げるのか、または両方を「どのくらい」引き上げるのが妥当かを考えていきます。
次に、お店の特徴を考えます。その特徴を踏まえて、「顧客1人あたりの売上」と「顧客数」をどのくらい引き上げるのが妥当なのかを判断します。今回の例題のお店の情報は「都心の駅前にあるカフェ」ということだけ。そこから特徴を考え仮定していきます。
- 駅前にあるため顧客数が多い
- 都心にあるためビジネスパーソンがコーヒーをテイクアウトすることが多い
- 単価が安い
- カフェなので長時間過ごす顧客が多い
特徴を考えると、客単価を上げる、回転率を向上させる(テイクアウトは回転率が高い)の戦略が現実的だといえます。
次に「顧客1人あたりの売上」や「顧客数」の内訳を考えます。「顧客数」も店内を利用する顧客とテイクアウトの顧客がいます。当然、それぞれの顧客数、および顧客単価は違うでしょう。また売上全体に占める「店内」と「テイクアウト」、それぞれの売上の割合も考えていきます。どう考えて論理づけたのかが大切ですので、ここは自分がカフェを利用する際のテイクアウトを使用する頻度と店内を利用する頻度のイメージで考えて問題ありません。
ここまでできたら、具体的な拡大策を考えます。客単価を上げるため、回転率を向上させるために何をするかを店内とテイクアウト顧客ごとに考えます。客単価UPも一品当たりの単価を上げるのかメニューを多く頼んでもらうのか検討しましょう。
売上3倍にするためにいくら単価UPにしたらいいのか具体的な数字に落として3倍になるロジックを組み立てていくのです。
ケース面接によって応募者の評価項目は何なのか?
では、このケース面接で応募者の何を測れるのでしょうか。
その前に「社会人基礎力」について説明致します。平成18年に経済産業省では社会人に必要なスキルを表の12項目に設定しました。このケース面接でも12項目のうち測れるものがあります。
まず1番に上げられるのは「考え抜く力」の「課題発見力」でしょう。論理的に様々な情報から仮説を見つけ、必要条件の捻出や洗い出しが問題を解く上で必要なスキルの1つでした。
「創造力」もユーモアな面白い発想や他にはない観点から解を導き出した等から評価することができるでしょう。
また論理的に考える力だけでなく「前に踏み出す力」の「主体性」や「実行力」も測ることができます。無理難題な問題に対し、逃げずに解を見つけだそうという姿勢からそのスキルを見つけることができるでしょう。
「チームで働く力」からも評価できるスキルがあります。面接者から情報をきき確認する「傾聴力」や自ら出した解をプレゼンする「発信力」もこのケース面接からも判断することができるスキルです。
ケース面接は地頭の良さ、ロジカルシンキングを測るものと思われがちですが、それだけでなくヒューマンスキルも含めたトータルスキルを確認することができるのです。
ケース面接を導入するべきかは求める人物像次第
ケース面接は、現在コンサルティング会社等が使用しているもので一般企業の選考ではあまり使用されていません。
ケース面接で判断できるものは多いですが全ての企業が導入するべきかどうかは自社の求める人物像と合わせて考える必要があります。自社の求める人物像とケース面接で評価できる項目が一致していれば、導入検討するのはありでしょう。職種別採用を行っているのであれば、特定の職種だけ導入するのも1つだと思います。
まずは自社の採用したい人物像にどういうスキルを持っていてほしいのかの整理と、それを見定める方法として何があるのかを考えること。その1つとしてケース面接があることは情報として知っていて損はないと思います。