行動力とは育成できるスキルなのか?
リーマンショック以降、求人倍率は年々上昇を続け、求人市場は売り手市場となっています。それゆえに即戦力となる優秀な人材の獲得難易度は高く、業界・職種未経験の若手人材を入社後に教育するのを想定することも大切です。その際には採用面接での見極めが大切です。では一般的にどのようなことが採用基準として設定されている傾向にあるのでしょうか?
経団連の新卒採用に関するある調査の結果を見てみましょう。「選考時に重視する要素」の上位5項目の推移ですが、16年連続で「コミュニケーション能力」が2位以下に大差をつけて1位となっています。2010年から第2位になっているのは「主体性」、ここ数年の第3位には「チャレンジ精神」が続いています。ここでは「主体性」や「チャレンジ精神」を要素とした「行動力」について注目します。
出典元『一般社団法人 日本経済団体連合会』2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結
日経新聞と日経HRは「企業の人事担当者からみた大学のイメージ調査」を行いました。このランキングで査定項目となったのは、「行動力」「対人力」「知力・学力」「独創性」の4つです。ランキングの第1位となった九州大学は、その4つのなかでも特に「行動力」で高いスコアを出しています。
参考URL『日経HR』企業の人事担当者から見た大学イメージ調査 『就職力ランキング 総合1位は北海道大学』上位を国公立が占める
これは大学が基幹教育として「アクティブラーナー」の育成を目指していることにもよります。アクティブラーナーとは文字通り「能動的に学ぶ人」です。学び続ける意志を持ち、未知の問題や課題に対して挑戦する精神を持った人であり、「指示待ち族」の対極とも言えるこうした人材の社会的な需要は、ビジネスシーンの多様化とともに増大しています。
この記事では、「行動力」を構成するスキルを4つ紹介し、その育成方法を解説します。
行動力とは?どんな能力から構成されるのか
行動力とは「目的のために積極的に行動する力」です。状況を変えたい、仕事で目標を達成したい、理想の自分に成長したい……抽象性や具体性の差は様々ですが、なんらかの願望を叶えるためにはみずからが動かなくてはなりません。目標に対するフットワークの軽さを「行動力」と呼ぶこともできるでしょう。
行動力と実行力の違いは「計画性」にある
「行動力」と似た概念として「実行力」があります。両者の違いは「行動力の概念の一部として実行力がある」と考えれば理解しやすくなります。行動力も実行力も、ともになんらかのアクションを起こす力に変わりありません。
両者の違いは、目的に対する行動に「計画性」が伴うか否かです。行動力とは計画の有無にかかわらず行動を起こすことであり、実行力とは目標に対する計画を設定し、その計画を実行するスキルのことです。つまり「計画」という条件設定がなされた状態での行動力が「実行力」であるとも考えられます。実行力とは、行動力のなかでも思考力を特に要する能力です。
行動力のない人の特徴について
行動力は目的意識を原動力として発揮されます。行動力のない人には「目的がない」という特徴をもっています。行動を起こす以前に行動する理由を持っていない、あるいは行動する理由を見つけられていないと考えられます。
重要なのは、行動の目的は「みずからが行動しなければ見つけられない」ことです。行動を起こさなければ、ますます内向的になり積極性が失われていきます。
行動力のない人を教育するには、まずなんでもいいので行動する理由を与えることが大切です。「1日15分、なにについてでもいいので勉強をする」など、簡単なことを習慣化させるのが効果的です。
行動力を構成する4つの要素とは?
行動力は細分化すると、以下の4つの要素に細分化できます
- 主体性
- 挑戦志向
- 知的好奇心
- 優先順位付け
1.主体性
行動力の源泉となる「目的をみつける力」になります。
いまどんな問題に直面しているか、そこにはどんな原因があるかへ積極的にアプローチするスキルです。
2.挑戦志向
自分の能力を客観的に把握し、それよりも少し高い位置にあるものを見つけるスキルです。
常に新鮮な目的をつくり続けるためには、挑戦志向が欠かせません。
3.知的好奇心
広い視野を持つと行動力は向上します。知的好奇心はその「視野」といっても過言ではありません。
知的好奇心の広さは、池で釣りをするか海で釣りをするかの違いと考えればイメージがつきやすいでしょう。
4.優先順位付け
行動を阻害する要素として考えられるのが「なにから手をつければいいかわからない」という迷いです。やることが多すぎて八方塞がりになると、フットワークが重くなってしまいます。
まず最初になにをすべきか、後回しにしていいものはなにかを冷静に順位付けできれば、行動リストの渋滞を防ぐことができます。
行動力を向上させる方法
行動力を向上させるには「目的」を与えることが大切です。同時に、目的は行動しなければみつけることができません。たとえば「毎日15分だけでも勉強する」というように、行動をタスク化・習慣化させることが効果的です。
そのほかにも行動力を向上させる方法はもちろんあります。ヒントになるのが、先に挙げた行動力を構成する4つのスキルです。これらを伸ばすことで、行動力は向上します。
主体性を養う
主体性の育成には、責任感を持たせることが大切です。手っ取り早いのが、仕事をひとりで任せ、自力で問題解決を行う経験をさせることです。
しかし、いきなり放り出すのはNGです。困っているときのフォロー体制を整え、失敗した場合の対処法をあらかじめ用意しておきましょう。
挑戦志向を養う
スキルを可視化すると挑戦志向を抱きやすくなります。
資格取得のサポートなど、具体的な目標に対して興味を持ちやすい環境をつくると、社員のモチベーションを刺激できます。
知的好奇心を広げる
勉強を習慣化することが大切です。毎日ニュースをチェックし、さまざまな本を読むことで知的好奇心を広げることができます。
従業員にこうしたことを促す方法として「最近の関心はなにか?」を日常会話のなかに盛り込み、学んだことをアウトプットする機会を設けるという方法があります。
優先順位付けを身につける
現在抱えているタスクを「緊急度」と「重要度」の二軸で整理すると、なにから手をつけるべきかがはっきりとします。
すぐにやらなければならないのはいうまでもなく「緊急度が高く、重要度も高い」タスクです。そして自己成長を促すために大切なのは「緊急度は高くないが、重要度は高い」タスクです。これらに取り組むためにはどのように時間をつくればよいかを考えると、行動力を向上させることができます。
行動力を育成するなら、構成要素に目を向けよう
行動力とは文字通り「行動をする能力」のことです。ある目的のために積極的にみずからが動くフットワークの軽さと考えることもできます。
似た概念で「実行力」がありますが、「行動力」と「実行力」には計画の有無で差があります。何をどのように行うかの計画がきちんと設定されたものを形にする力を「実行力」と呼び、これは「行動力」のなかでも思考力が求められるスキルに位置付けられます。
行動力を細分化するとさまざまなスキルが見えてきます。「主体性」や「挑戦指向」などの性格・価値観に依存し変化しづらい部分はあるものの、「知識量」や「優先順位決め」などの育成・変化が可能な部分もあります。
行動力を高めるために具体的にどのような部分を強化したいのかをまずは検討してみましょう。目的を明確にして教育研修などを実施することで、従業員の行動力を高めることができます。