部下との信頼関係を作るにはまず「傾聴」が大切!
社会経験が浅く、専門性も低い若手人材ほど、採用面接ではコミュニケーション能力の高さを見られます。その理由は、若い人材は即戦力としてでなく、中長期的に自社で活躍することを想定した採用がメインであるためです。経験や専門性は入社後の教育で集中的に育成できる一方で、コミュニケーション能力はその汎用性ゆえにあらかじめ持ち合わせてもらいたい……というのが採用側の本音です。
HR Proの調査に寄れば、コミュニケーション/コーチング研修を実施している企業は全体の40%です。同調査では研修対象者が抱えている課題のアンケートも行っており、「部下との関係構築」と「傾聴力(聴く力)」が共に56%にのぼったと報告されています。コミュニケーションスキルにおいて傾聴力に課題を感じている人材が多いということを示しています。
出典元『HR Pro』「HR総研 人事白書2016」人材育成に関する調査結果【6】 コミュニケーション/コーチング研修
出典元『HR Pro』「HR総研 人事白書2016」人材育成に関する調査結果【6】 コミュニケーション/コーチング研修
実際の研修内容について「傾聴力(聴く力)」を扱っている企業が72%であることから、コミュニケーション/コーチング研修に置いて「傾聴力(聴く力)」が重要だと考えられていることがわかります。
この記事では、多くの企業が重視する「コミュニケーションスキル」のうち、カギとなる「傾聴力」に焦点を当てます。傾聴力とは何か、どのように育成できるのか、どうアピールできるのかを以下で紹介します。
傾聴とはどんなスキルか?
傾聴とは、字のごとく「耳を傾けて聴く」ことです。
「聴く」は「聞く」よりもさらに注意深く捉えようとする意味が込められているのです。「聴」という漢字は「十四の心」に「耳」をすませて成り立つ漢字ですので、このことを思い出すとどういう行為かを理解しやすいのではないでしょうか?
「聴く」ことによりもたらされるのは「相手の意見の理解」だけではありません。相手の意見だけでなく、相手の性格や思考をも理解でき、それがあなたへの信頼にも繋がります。
ビジネスシーンでは、クレーム対応など相手の言い分をしっかりと受け止めることが大切な場面で重要になるスキルです。ただ理解するだけでなく、相手に対しての真摯さを伝える意味でも「傾聴」は大切なスキルです。
習熟度別「3段階の傾聴スタイル」
傾聴力を育成するためには、「どのくらい聴けているのか」を客観的に把握することが大切です。
どのくらい、と言えば主観的な評価に思われますが、傾聴の度合いによりどのように相手や場の認識が変化するかを段階的にまとめたものが、以下の3つとなります。
レベル1:内的傾聴
内的傾聴は、相手の話を聴きながらも意識は自分の方向へ向かっている状態です。傾聴では相手の立場になること、相手の感じ方や考え方に同化することが不可欠ですが、内的傾聴ではそれができていないということを意味しています。
相手に聞き返す時でも自分の好き嫌いや考え方を軸にしている傾向が見られますので、相手の言葉に耳を傾ける姿勢を習得する必要があります。
レベル2:集中的傾聴
集中的傾聴では、相手の話にしっかりと意識を向けられている状態です。相手の感じ方や考え方としっかり同化できていて、きちんと相手の立場になりきることができています。
話の内容への理解だけでなく、相槌や表情、間の取り方など、非言語的なコミュニケーションスキルも使うことができ、相手に安心感を与えることに成功している状態でもあります。
レベル3:全方位傾聴
非常に高い集中力が発揮され、相手の話にしっかりと意識を向けられているだけでなく、周囲や場の雰囲気までも的確に読み取れている状態が「全方位傾聴」です。全方位傾聴では、相手を取り巻く環境にも意識を回すことができていて、広い視野かつ客観的な視座で相手を見つめることができています。
傾聴力は、レベル3になるほど高い習熟が求められるスキルとなります。相手の意見をしっかり聴くフェーズと、それを踏まえた上で周囲と同調するかは別問題だということです。技術的に高い傾聴技術を要するのはやはり後者ですが、状況によりレベル2とレベル3は使い分けが必要です。
「集中的傾聴」は相手の主観的な部分に焦点を当てたもので、「全方位傾聴」は客観的な部分に焦点を当てたものだと考えると、傾聴とは「集中的傾聴」と「全方位傾聴」を適宜使い分けるスキルが必要だということがわかります。
自在に「聴き方」を使い分けられる状態が、傾聴力の目指すべきゴールとなります。
傾聴の心構えとは?
相手に対して好奇心を持つことが、傾聴で最も重要な姿勢です。相手の言葉を引き出すには、「相手に喋ってもらう」のが大切です。傾聴とは、単に口にされた言葉を聞き取るだけの能力ではなく、相手から言葉を引き出すスキルでもあるのです。
採用面接で傾聴力をアピールするとき、重要なのは「好奇心」を示すことです。面接前に会社のホームページや資料を熟読し、必要な情報を頭に入れて、しっかり準備することから始めましょう。
次に重要なのは、その好奇心を前提として「ちゃんと聴いている」という態度を示すことです。身につけておきたいのが、「頷き」などの非言語的コミュニケーションや、「オウム返し」です。相手の話を遮ることなく「ちゃんと聴いている」という姿勢を伝えることができます。「しっかり聴いている」という姿勢を相手に伝え、信頼関係が構築できたフェーズで、疑問に思ったことを質問していくと、より深く相手の話を聴くことができるようになります。
面接では、話した内容だけでなく「どのようなプロセスで話したのか」こともチェックされます。このプロセスに傾聴力をはじめとするコミュニケーションスキルが現れるのです。
傾聴力をつけるには普段からの意識が大切!
傾聴力は多くの企業が人材にもとめているスキルの1つです。
社内でも教育研修なども活発に行われているため、転職時の採用選考だけでなく、現在の会社の人事評価などにも活きるスキルとなっています。しかし、これは1人で養えるものではありません。
短期的に身につけづらいスキルではありますが、常日頃から傾聴力の心構えを意識することで、自然と身に付けることができます。
傾聴力を高めたいという方は、この記事で取り上げた「傾聴力の3つの段階」や、「あいづち」や「オウム返し」といったことを普段から意識して生活してみてはいかがでしょうか?