戦略人事の実施率とは?多くの企業で実践できていない理由について
戦略人事とは、戦略的人的資源管理の略語で「企業の経営戦略の目的達成を目指して、人的マネジメントを行うこと」を意味する言葉です。
戦略人事は、日本のビジネス界において近年大きな注目を集めています。日本の人事部の人事白書2018によると、約9割の企業が戦略人事の重要性を認識しているという調査結果が出ています。
出典元『日本の人事部』9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割
同調査の結果を業種別にみると、戦略人事が重要であると考えている企業の割合は、市況よりも業績の良い企業ほど高く、悪い企業ほど低いという結果が出ています。
出典元『日本の人事部』9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割
ほとんどの企業が戦略人事の重要性を認識しており、重要性の認識度が高い企業ほど業績が良いという結果が出ている一方で、戦略人事を実践できていると答えた企業は約3割という結果が出ています。
出典元『日本の人事部』9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割
日本の人事部の調査結果からは、多くの企業が戦略人事の重要性を認識していながらも、上手く実践できている企業は全体の3割程度にすぎないという現状が見て取れます。
今回の記事では、戦略人事の導入に成功した企業の事例を参考にして、戦略人事の導入に役立つヒントをご紹介します。
戦略人事の導入に成功した企業事例とは?人事課題の解決事例について
戦略人事の導入に成功した企業の事例について、具体的な課題や解決方法、取り組みの結果を3例ご紹介します。
- 日清食品株式会社の事例
- 株式会社日立製作所の事例
- 味の素株式会社の事例
1.日清食品株式会社の事例
日清食品株式会社は、インスタントラーメンを中心とした食品加工業を営む、従業員数12,539人(グループ連結、2019年現在)の企業です。
日清食品では、戦略人事の課題として「企業が向かうべき方向性」「企業戦略に沿って必要な人材の定義づけ」「必要と考えられる人材の育成プログラム」などを掲げました。
日清食品が行った戦略人事の具体的な施策としては、企業内大学「グローバルSAMURAIアカデミー」の創設による、次世代を担うグローバル経営人材の育成が挙げられます。
SAMURAIアカデミーのコースは、若手や中堅抜擢人材を対象とした「若武者編」、係長や課長といったミドル基幹人材を対象とした「侍編」など、年代別に5段階に分かれています。
SAMURAIアカデミーでそれぞれの段階に合わせた人材育成に取り組んだ結果、グローバル経営人材の候補者数は200人に増加しました。日清食品のSAMURAIアカデミーは、経営戦略に沿った人材育成に成功した、戦略人事の代表的な事例といえるでしょう。
2.株式会社日立製作所の事例
株式会社日立製作所は、電機メーカー事業をはじめとした様々な事業を営む、従業員数33,490人(2019年3月末日現在)の企業です。
世界でも有数の総合電機メーカーである日立製作所では、戦略人事の課題として、世界中の拠点にある各国各社ごとの人事制度や人事施策の標準化・統一化を掲げました。
日立製作所が行った戦略人事の具体的な施策としては、システムを活用した「リーダー人材データベースの構築」や「リーダーシップ能力の開発」が挙げられます。リーダー人材の特徴を定義・データベース化することで、各国各社でバラバラだった人材の評価制度や育成制度の標準化・統一化に成功したのです。
人材の評価制度や育成制度を標準化・統一化した結果、日立製作所の海外売上高比率は5割を超える成長を実現しました。日立製作所の評価制度や育成制度の標準化・統一化は、企業規模に合わせたグローバルな人事制度の構築に成功した、戦略人事の代表的な事例といえるでしょう。
3.味の素株式会社の事例
味の素株式会社は、食品や医薬品などの製造・販売事業を営む、従業員数34,504人(グループ連結、2019年3月31日現在)の企業です。
味の素では、戦略人事の課題として「一人ひとりの自立的成長の実現」「働きがいの実感」「多様な人材の共創」を掲げました。
味の素が行った戦略人事の具体的な施策としては、従業員本人が作成したキャリアプランをもとに上司と面談を行う「キャリア開発支援プログラム」が挙げられます。また、キャリア開発支援プログラムだけでなく、働き方改革の推進やタレントマネジメントシステムの充実にも取り組みました。
味の素では、従業員のキャリア開発支援や働き方改革の推進、タレントマネジメントの充実に取り組んだ結果、1年半の期間で日本人以外の100名以上を含む、300名以上の特定次期グローバルリーダー候補者の育成に成功しました。
戦略人事の導入に成功した企業の事例を参考に、自社の課題解決に取り組もう!
戦略人事の取り組み内容は、それぞれの企業が抱えている課題や解決したい問題によって、各社各様さまざまです。
戦略人事を実施する上では、解決すべき課題を具体的な人事施策に落とし込み、中長期的な視点で実施・改善していくことが大切です。
戦略人事の導入に取り組む際は、自社の課題を細分化・明確化した上で、自社に似た課題の解決に成功した企業の事例を参考にすれば、導入成功につながる重要なヒントを得られるでしょう。