エンプロイメンタビリティとは
帝国データバンクの調査によると、正社員が不足している企業は2020年1月時点で約半数であり、若干改善傾向にあるものの、依然として厳しい状況に変わりはありません。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2020 年 1 月)
マイナビの調査では、中途採用の採用活動も厳しさを実感している企業が多いことが報告されています。2017年と比較した2018年の中途採用の印象は「前年より厳しかった」「前年並みに厳しかった」が「前年並みに楽だった」「前年より楽だった」を大きく上回っています。人材の不足感は根強く、売り手市場が続いている状況がわかります。今後、新規人材の獲得と既存従業員の流出防止の2つの視点が人事としてとても重要な任務となるでしょう。
新規人材の獲得においては自社企業がどれだけ魅力的にみえるか(自社で働きたいと考えてくれるか)、既存従業員の流出防止においても自社企業がどれだけ魅力的にみえるか(自社で働き続けたいと考えてくれるか)が大切になってきます。
エンプロイメンタビリティとは「企業の雇用能力」を意味する言葉であり、求職者から見て働きたいと思えるような魅力的な企業であるのか、従業員から見て働き続けたいと思えるような魅力的な企業であるのかの価値を表す概念のことです。
エンプロイメンタビリティは、給与や報酬などの金銭報酬よりも、働き方改革などによって、ライフワークバランスの実現や長時間労働がないなどの非金銭的な報酬の重要性が増してきています。
今回はエンプロイメンタビリティにはどのような要素があるのかについて説明します。
エンプロイメンタビリティを構成する要素とは
エンプロイメンタビリティを構成する要素として、大きく分けて「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2種類に分かれます。
1.金銭的報酬
金銭的報酬とは、その名の通り金銭を伴う報酬のことです。
給与や賞与
高い給与や賞与などが挙げられます。
ハーズバーグの二要因理論において、金銭報酬は衛生要因として位置づけられています。衛生要因は、不満足を生む要因ですが、満たされたからと言って満足するわけではないと定義づけられています。
高い給与や賞与は興味をひく内容とはなりますが、高い給料だけでエンプロイメンタビリティが急激に向上するわけではありません。逆にきちんと支給されていないとエンプロイメンタビリティが下がる要因となります。
「成果に応じて報酬を与えられているか」という観点が重要になるため、仕事ぶりをきちんと評価し認識するという人事制度の確立も同等に重要となります。
2.非金銭的報酬
非金銭的報酬とは、金銭を伴わない報酬のことです。
スキルアップできる環境、教育制度
スキルが身につくか、成長できる環境なのかということは社員にとって大切な要素です。社会的にも通用するだけの専門能力がつく環境であったり、質の高い最先端の情報が得られる環境、ビジネスパーソンとしてのヒューマンスキルが向上できる環境など人によって得たいスキルは様々ですが、期待され能力の向上が可能となる職場はエンプロイメンタビリティの向上に繋がります。
スキルアップや能力向上のための教育制度の確立も大切となります。研修制度やOJT等スキルアップを推奨している環境かどうかも要素となります。
ワークライフバランスの実現
1人1人の価値観にあった働き方の提供はエンプロイメンタビリティ向上にとって不可欠です。
働き方を個人が選択できたり、リモートワークや多様な働き方を自由に選ぶことができ家庭と仕事の両立やバランスを保つことができることは昨今求められている要項の1つです。
働き甲斐やキャリア支援
能力に応じた働きがいのある職場や機会の提供など1人1人の状況やキャリア、スキルをみた配置や異動は働き甲斐やエンプロイメンタビリティの向上に直結します。
人や社会のためになる仕事の経験や成長できる機会、達成感等をいかに提供できるか、また個人の価値観にあった機会の提供も大切となります。
エンプロイメンタビリティの効果を具体的に落とし込むことが大切
エンプロイメンタビリティを高めることは、優秀な人材からの応募が集まり、優秀な人材の流出防止にもつながります。
金銭報酬は定量情報(数字などで客観的に判断できる情報)であるため社内外に向けてアピールが容易となりますが、定性情報(数字などで伝えられない情報)を説明するためには、定量情報になるまで具体的に落とし込むことが大切になります。
ワークライフバランスの実現など、新たな自社の取り組みをエンプロイメンタビリティとしたい場合にも、具体的にどれだけの社員がワークライフバランスを実現したのか、数字で評価できるレベルまで落とし込むことが、施策の成功だけでなくエンプロイメンタビリティの表現にもつながっていきます。