リファラル採用に関わる報酬設定については知識が必要
日本でも良く耳にするようになったリファラル採用について、多くの企業ではどのように運用しているのか気になるところだと思います。多くの企業が設定している紹介者への報酬に関しては、決定方法や支払い方法など注意をする必要があるため、事前の知識や情報を調べておく必要があります。中でも人に関わる取引であるが故にリファラル 採用を導入した場合には、避けて通れないのが法的な問題です。
リファラル採用における報酬については本家アメリカでは一般的であり、Drafted Inc.が2017年に公開した有名企業のリファラル採用に関するデータでは高額なインセンティブを設定している企業も珍しくありません。ヤフージャパンと共同出資で事業を展開しているWebメディアのBuzzfeedでは$7,500(約85万円)とあります。またインバウンドマーケティングソリューションを展開するHubspotでは$30,000(約340万円)とあります。
参考URL『REFERRAL RECRUITING』海外有名企業のリファラル採用データが公開?Best Referral Programsとは何か?
この金額を支払ってでも導入する価値のあるリファラル採用という理解もできますが、日本での報酬設定には法的な関係性もあり、十分な注意と知識が必要です。
今回は、リファラル採用における報酬設定の際の注意点について紹介します。
リファラル採用における法律の関係について
リファラル採用における報酬は、紹介数を増やすために設定するのが一般的となっています。いざリファラル採用を導入しても、実際に活用されないという実態を避けるために、インセンティブ報酬制度を導入している企業が多いのが現実です。
人を紹介して金銭を得るということは日本では人材紹介業や人材派遣業に該当する可能性があり、リファラル採用に関しても該当する可能性が否定できません。人材紹介業や人材派遣業にみなされた場合、人材派遣免許や有料職業紹介免許が必要になります。職業安定法でも労働者の募集を行う者に対して報酬を与えることは原則禁止とあります。
(報酬の供与の禁止)
第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
引用元『厚生労働省』職業安定法(◆昭和22年11月30日法律第141号)
「職業安定法第四十条」にあるように、賃金や給与という形で紹介報酬を支払うということは、例外的に認められています。
法的背景に併せて、自社の社員が募集を行い会社がその紹介してくれた社員に対して、賃金や給与という形で紹介報酬を支払うといのがリファラル 採用におけるインセンティブ報酬の一般的な支払い方となっています。
リファラル採用の報酬支払うタイミングや報酬設定時の注意点
支払いのタイミングとしては、試用期間終了後に支払うというのが一般的な条件のようです。金額や場合によっては内定や入社後という条件にしても問題はないでしょう。
紹介者のモチベーションや社内の制度などに併せて、お互いが納得の行く形で支払われるというのが理想のタイミングだと言えます。不安な点がある場合には、社労士に相談して決めることが望ましいと言えるでしょう。
これらを踏まえた上で、リファラル 採用におけるインセンティブ報酬を設定する際に注意したい点をまとめると以下の2点となります。
1.インセンティブ報酬を就業規則や賃金規定に設定する
リファラル採用におけるインセンティブ報酬導入を決めたら、まずは就業規則や賃金規定の一部としてインセンティブ報酬を追加しましょう。
法的にも、賃金や給与の一部であるということを証明するためにも大切です。
2.インセンティブ報酬額は高額にしないこと
インセンティブ報酬額の決定基準は、人材紹介会社に支払う金額を超えない範囲という考え方があります。
「高額」の厳密な定義はありませんが、人材紹介業を生業としていると判断されないためには、人材会社が設定している基準よりも少額に設定する必要があるでしょう。それよりも高額な場合だと、無免許で運用しているとみなされ違法だと判断されてしまうリスクも出てきます。
報酬額としては、30万円~50万円が一般的なようです。
リファラル採用における報酬設定は慎重に行うことが大切
リファラル採用における報酬は社員の紹介意欲を高めるだけでなく、紹介された人にも与えることで、紹介する人の心理的ハードルを下げる効果も期待することができます。反面、日本の職業安定法的側面から見ても報酬の支払い方や金額の設定方法などについては十分注意して決定する必要があります。
支払いのタイミングや賃金に上乗せしての支給のため、その分税金が増え手取り額が減ってしまうことや一時的に収入が増えるこで社会保険料への影響が考えられることなど、事前に伝えておかなくてはならないこともあるでしょう。そういった事も含めた上でリファラル採用におけるインセンティブ報酬を休暇で支払ったり、チーム成果として飲食代を支給するなどという方法で取り入れているという企業もあるようです。
自社にあった支給方法や金額、制度などを比較検討しながら、納得のいく形のイリファラル採用における報酬を決定する必要があります。