OJTとOff-JTの違いとは?メリットを高めデメリットを防ぐ方法

OJT、Off-JTとは?企業におけるそれぞれの実施状況とは?

OJT(On the Job Training)とは、職場で実務を通して行う研修のことで、逆にOff-JT(Off the Job Training)とは、職場を離れて行う合宿や集合研修などの研修のことです。OJTとOff-JTは、どちらも企業が従業員の能力開発のために行う教育研修の手法の一つです。

日本でのOJTとOff-JTの実施状況は、厚生労働省が平成13年から毎年実施している「能力開発基本調査」を見ることで、国内の企業における労働者の能力開発の実態を知ることができます。

厚生労働省の調査によると、正社員に対する教育訓練で「OJTを重視する(に近い)」と回答した企業は70%程度であるのに対して「Off-を重視する(に近い)」と回答した企業は30%程度でした。日本企業ではOff-JTよりもOJTが重視される傾向にありますが、Off-JTを重視する企業も常に20%~30%程度存在することが分かります。

重視する教育訓練(正社員)
出典元『厚生労働省』平成29年度能力開発基本調査

同調査によると、正社員以外に対する教育訓練でも「OJTを重視する(に近い)」と回答した企業が多数派ですが「Off-JTを重視する(に近い)」と回答した企業も常に20%程度存在することが分かります。

重視する教育訓練(正社員以外)
出典元『厚生労働省』平成29年度能力開発基本調査

Off-JTはOJTに比べて重視する企業が少ないものの、実際の実施状況については計画的なOJTを実施している企業よりもOff-JTを実施している企業の方が多く、教育研修としての重要性はどちらの方が明確に上ということはないと分かります。

実施状況比較
出典元『厚生労働省』平成29年度能力開発基本調査

人材育成制度としてはOJTの方が耳にする機会が多いように思いますが、厚生労働省の調査によれば、実施状況としてはOff-JTの方が広く浸透していることが分かります。OJTとOff-JTは、どちらか一方だけを活用するのではなく両方を併用することで、より高い効果が得られます。

今回の記事では、OJTとOff-JTの違いについて説明した上で、それぞれのメリットを高める方法とデメリットを防ぐ方法についてご紹介します。

OJTとOff-JTの違いとは?それぞれのメリット・デメリットとは?

OJTの意味や定義とは?

OJTとは、英語の「On the Job Training」の略称で、実務を通して学ぶ教育研修のことを意味します。

OJTの起源は、第一次世界大戦までさかのぼります。当時のアメリカでは、従来の10倍の作業員の補充が必要となり、大量の新人を効果的に育成する必要がありました。新人育成プロジェクトの責任者を任せられたCharles Ricketson Allen氏が、大量の新人の育成方法として職務現場での実地研修を提唱し、研修方法を発展・改良して開発された「4段階職業指導法」が、OJTの始まりだと言われています。

Off-JTの意味や定義とは?

Off-JTとは、英語の「Off the Job Training」の略称で、実務の現場を離れて行う教育研修のことを意味します。OJTが職場で実務を通じて行われる研修であるのに対して、Off-JTの研修は職場とは別の場所で行い、指導役も外部の人間が担います。

Off-JTでは、座学やグループワークなどを活用して、様々な知識を身につけるための教育研修を行います。業界やビジネスの基礎・理論・原理原則などを、専門の知識を持つ外部の人間からインプットすることで、業務に必要な基礎知識を構築します。

OJTのメリット・デメリットとは?

OJTで人材教育を行うメリットは多数ありますが、代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 実務を通して学べるため、早期に即戦力を養える。
  • 個々のスキルや習得度合いに応じて柔軟に対応できる。
  • 実務をこなしながらの教育なので、ほとんどコストがかからない。

OJTを実施する上での特に大きなメリットは、実務を行いながらの教育となるため、業務が完全に止まってしまうことがない点です。OJTは自社内で完結するため、合宿や外部委託と違い、ほとんどコストがかからないこともメリットとして挙げられます。

OJTで人材教育を行う際には、メリットだけでなくデメリットや注意点も存在します。

  • 教育担当者が複数人いる場合、新入社員間で習得スピードに差が生じる可能性がある。
  • 現場の状況によって、教育に粗が出たり後回しになってしまう可能性がある。
  • OJTを行う部署全体で、教育担当者と新入社員をフォローする意識が必要になる。

OJTを実施する上で特に注意すべきことは、部署全体での協力が不可欠という点です。教育担当者は新人に教えながらの業務となるため、どうしても普段より業務効率が落ちてしまいます。

OJTを実施する際には、教育担当者の業務を部署全体でフォローし、新入社員の教育への協力体制を作ることが大切です。一時的に部署全体の負担は増えますが、新入社員が早い段階で戦力になるメリットを考えれば、先行投資としての価値は十分にあります。

Off-JTのメリット・デメリットとは?

Off-JTで人材教育を行うメリットは多数ありますが、代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 少数の指導者で複数の社員に対して研修ができる。
  • 学習内容の統一ができ、研修を受けた社員間でバラツキが生じにくい。
  • 外部講師を招くことで、新たな視点・ノウハウ・技術を得ることができる。

Off-JTを実施する上での特に大きなメリットは、専門の知識を持つ外部の人間が研修を行うことによって、通常業務への影響や研修の質のバラつきを抑えられる点です。Off-JTでは最新の知識や技術を得られるため、Off-JT受講者からのフィードバックを取り入れることで、自社の知識や技術の時代遅れ化を防止できることもメリットとして挙げられます。

Off-JTで人材教育を行う際には、メリットだけでなくデメリットや注意点も存在します。

  • 外部に委託するためにコストがかかる。
  • 自社の業務に活用できない内容が含まれている場合がある。
  • 座学が中心となるため、実践の機会は別に設ける必要がある。

Off-JTを実施する上で特に注意すべきことは、外部の講師は当然自社の業務に精通しているわけではないため、研修はあくまで一般的な内容に留まる点です。業種に特化した研修を行うサービスもありますが、自社とは違う・自社では使えない内容が含まれる場合があることに注意が必要です。

Off-JTを実施する際は、事前に人事部と外部講師で研修の内容を相談した上で、不足している内容や自社ならではの知識や技術については、別途OJTによる教育研修を行うことが大切です。

OJTとOff-JTの研修効果を高める方法とは?

OJTとOff-JTは、両方を組み合わせることでそれぞれのデメリットを補完し合い、教育研修の効果を最大限に高めることができます。

OJTは、実務に直接役立つ知識や技術を学べる反面、研修中の業務効率の低下や研修の質にバラつきがあることが難点です。Off-JTは、基礎となる知識や技術を一定の質で学べる反面、研修の内容は一般的なものに留まるため実務能力の習得には向かないことが難点です。

OJTとOff-JTの効果を最大限に高めるためには、Off-JTで基礎を学んでから、学んだ内容を実務に活かす具体的な方法をOJTで学ぶことで、OJTとOff-JTのメリットを活かしデメリットを補う方法が有効です。

Off-JTは、主に以下のような研修を行う際に活用されます。

  • 新入社員向け集合研修
  • ビジネスマナー研修
  • ロールプレイング研修(営業やプレゼンテーションなどのシミュレーション)
  • プレゼンテーション研修(資料の見せ方や作成方法など)
  • ロジカルシンキング、クリティカルシンキング研修
  • コンプライアンス研修
  • 管理職向け研修(新たに昇格した管理職をまとめて研修)

Off-JTで基礎を学んだ後は、実際の職場でOJTを行い実践で試したり、研修内容を振り返ったりするような機会を設けることが大切です。

OJTを実施する際には、直属の上司がOJTの基本4ステップを意識しておくことが重要です。OJTの基本4ステップとは、以下の通りです。

  • やってみせる(Show)
  • 説明する(Tell)
  • やらせてみる(Do)
  • 評価・追加指導する(Check)

OJTとOff-JTを効果的に併用していくためには、人事部と各部署との連携が欠かせません。

Off-JTの研修内容を人事部から各部署に伝達し、各部署が研修内容を実務で活かす方法をOJTで教育することで、OJTとOff-JTの効果を最大限に高めることができます。研修内容の伝達をスムーズにするために、OJTの教育担当者の一部をOff-JTに参加させるという方法もあるため、検討してみるのもよいでしょう。

OJTとOff-JTを併用して、教育研修の効果と効率を高めよう!

OJTとOff-JTにはそれぞれ違ったメリットとデメリットがあり、どちらか一方だけでなく両方を組み合わせることで、教育研修の効果と効率を最大限に高めることができます。

OJTでは業務への影響や研修の質にバラつきが出るデメリットをOff-JTで補い、Off-JTでは実務能力や自社特有の業務は学べないデメリットをOJTで補うことで、それぞれのデメリットを打ち消すだけでなく、メリットを最大限に活かすことができます。

実際の業務に特化したテクニカルスキルはOJTで、ビジネスマナーやオフィスソフトの使い方などの一般的なスキルはOff-JTで教えることで、OJTとOff-JTの教育研修としての効果・効率を最大限に高めることができるでしょう。

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