エンゲージメント、ロイヤルティ、コミットメント、モチベーション、従業員満足度は全て意味が違う!
「エンゲージメント」「ロイヤルティ」「コミットメント」「モチベーション」「従業員満足度」といった言葉が、働き方改革などの影響で様々な場面で使われるようになりました。従業員の状態や感情などを示すこれらの言葉ですが、実は全て意味が違うことを皆さんはご存知でしたでしょうか?
よく誤解されがちな言葉の違いを知り、正しいアプローチをしていくことが、組織マネジメントにおいては重要です。エンゲージメントを高めることを目的とした施策を打ち立てても、従業員内でエンゲージメントについて誤解があると、目的意識がバラバラになってしまうからです。
本記事では「エンゲージメント」「ロイヤルティ」「コミットメント」「モチベーション」「従業員満足度」の言葉の意味とそれぞれの違いを説明していきます。
エンゲージメント、ロイヤルティ、コミットメント、モチベーション、従業員満足度の意味とは?
まずはそれぞれの言葉の意味や定義を確認しましょう。その後に、類似している言葉の違いが明確になるように比較して考えます。
- エンゲージメント(Engagement)とは?
- ロイヤルティ(Loyalty)とは?
- コミットメント(Commitment)とは?
- モチベーション(Motivation)とは?
- 従業員満足度とは?
1.エンゲージメント(Engagement)とは?
エンゲージメントとは、企業や商品、ブランドなどに対して ユーザーが「愛着を持っている」状態を指します。わかりやすく言えば、企業とユーザーの「つながりの強さ」を表す用語です。
上記の定義は、マーケティングにおけるエンゲージメント(Engagement)の説明です。この定義を人事業務、すなわち従業員エンゲージメントとして置き換えて考えると、従業員エンゲージメントとは、従業員が自社へ「愛着を持っている」状態です。
婚約指輪のことをエンゲージメントリングと言うように、従業員エンゲージメントとは「会社と従業員との間の絆」のこととも言えます。
エンゲージメントが高まれば、会社と従業員が一体となり、共に成長・信頼しながら経営目標の達成を目指す状態になります。そのため、従業員の潜在的な能力を引き出しながら、高いパフォーマンスを発揮することができます。
2.ロイヤルティ(Loyalty)とは?
ロイヤルティ(Loyalty)とは、そのまま直訳すると「忠実」や「忠誠」などと言った意味になります。
似た言葉としてロイヤリティ(Royalty)がありますが、ロイヤリティとは「印税」や「特許使用料」などの権利に関する言葉となるため、会社と従業員の関係を示す言葉としては不適切になります。
会社と従業員の関係でのロイヤルティとは、従業員が会社へ「忠誠」を持って「忠実」に行動している状態と言えます。
会社が圧倒的に権力を持っており、従業員が会社に尽くす状態です。終身雇用制度や年功序列制度などの会社で良く見られるものになります。そのため、ロイヤルティは海外企業ではあまり見られない、日本企業の特徴的な社風とも言えます。
3.コミットメント(Commitment)とは?
コミットメント(Commitment)とは、「関わり合うこと」「委託」「委任」「公約」「約束」などを意味する言葉です。
ビジネスのシーンでも「取引先とコミットする(約束する)」「プロジェクトにコミットする(参加する、関わり合う)」などの使い方がされます。
会社と従業員の関係でのコミットメントとは、会社が従業員に対して積極的な「関わり合い」を要求し、従業員がそれを承認した状態です。
例えば、経営者が自社の従業員に対して「経営者目線を持て」などと要求した場合に、承認する(コミットする)などの状況が考えられます。従業員が「経営者目線を持っている」状態ではなく「持つ経緯が外発的である」ことがコミットメントの状態です。
4.モチベーション(Motivation)とは?
モチベーション(Motivation)とは、「動機付け」や「やる気」などを意味する言葉です。
モチベーションは、従業員の働く意欲ややる気などに関わる言葉です。会社と従業員の間には直接は拘らず、間接的に関わってくる概念です。
モチベーションは、従業員一人ひとりの中に生じるものです。会社が従業員のモチベーションを上げるために「モチベーションを上げろ」と言っても上がりづらく、「これだけの成果を出したら昇進・昇給させる」などの何かしらのキッカケが必要なものです。
モチベーションが上がるキッカケは、個人の価値観によって違い「お金」「社会的地位」「社会への貢献度」「自己成長」など、人によって様々です。
5.従業員満足度(社員満足度)とは?
従業員満足度(社員満足度)とは、従業員が組織で働く上での居心地の良さを指します。福利厚生や労働環境、上司や部下との人間関係などが要因として挙げられます。
従業員満足度と企業の業績アップに相関関係はなく、必ずしも企業の業績アップに役立つということはありませんが、離職率の改善に効果があります。
エンゲージメント、ロイヤルティ、コミットメント、モチベーション、従業員満足度の違いとは?
エンゲージメント、ロイヤルティ、コミットメント、モチベーション、従業員満足度のそれぞれの言葉の意味や定義を確認しましたが、類似している概念が多く、具体的にどう違いがあるのか判然としない方も多いかと思われます。
それぞれの意味の違いを、詳しく確認してみましょう。
- エンゲージメントとロイヤルティの違いとは?
- エンゲージメントとコミットメントの違いとは?
- エンゲージメントとモチベーションの違いとは?
- エンゲージメントと従業員満足度の違いとは?
- ロイヤルティとコミットメントの違いとは?
- ロイヤルティとモチベーションの違いとは?
- ロイヤルティと従業員満足度の違いとは?
- コミットメントとモチベーションの違いとは?
- コミットメントと従業員満足度の違いとは?
- モチベーションと従業員満足度の違いとは?
1.エンゲージメントとロイヤルティの違いとは?
エンゲージメントにおける会社と従業員の立場は同等であり、ロイヤルティにおいては会社の立場が非常に強い状態であることが違いです。
エンゲージメントは、会社と従業員が共に助け合い、共に成長する状態です。一方でロイヤルティは、会社が主導となって会社を成長させ、そんな会社に従業員が忠義を尽くしている状態です。
結婚で例えるのであれば、エンゲージメントは夫妻共働きなどでお互いに主導権がある状態、ロイヤルティは亭主関白のような関係であると考えられます。
1970年代、日本の高度経済成長時代には、ロイヤルティが高い社員が多くいることが業績にも良い影響を与えていました。終身雇用や年功序列制度が一般的であったからです。
現在は、勤める会社はもちろん、働き方についても多くの選択肢があります。自らの意志で「この会社で働く」と決め、自らの理由で、会社のビジョンを実現しようとする人材、会社と共に自分の未来を描くことができる人材こそ、結果的に一番、力強く、会社の業績に貢献することができるのです。そのためにはエンゲージメントを高めることが必要なのです。
2.エンゲージメントとコミットメントの違いとは?
エンゲージメントは自発的に行動を行うことです。コミットメントは、外発的に選択を迫られて、行動している状態です。
エンゲージメントは、相手に何かを求めるのではなく、自然と湧き上がってくる状態です。今の仕事に対するコミットメントが非常に高くても、長期的に、その会社で働くことに意味を見出せず、自分の未来を不安に思っている従業員は多く存在しています。
3.エンゲージメントとモチベーションの違いとは?
エンゲージメントとは従業員が自社へ「愛着を持っている」状態、モチベーションとは従業員が「やる気のある」状態であることです。
「お金」や「社会的地位」などにモチベーションを見出している状態の従業員が、必ずしも会社に「愛着を持っている」とは言えません。
4.エンゲージメントと従業員満足度の違いとは?
エンゲージメントとは従業員が自社へ「愛着を持っている」言葉、従業員満足度とは従業員が組織で働く上での居心地の良さを示す言葉です。
福利厚生がしっかりしている、職場が清潔で広いなど、居心地が良かろうとも、必ずしも自社への愛着が生まれるわけではありません。業績を上げるためには、従業員が一丸となって経営目標を達成するなどの、目的意識が必要です。
5.ロイヤルティとコミットメントの違いとは?
ロイヤルティは会社に忠誠を示している状態、コミットメントは、外発的に選択を迫られて、行動している状態です。
ロイヤルティがあれば、会社から選択を迫られても基本的にコミットメントを行うため、共に高くなることはよくあります。
ただ、ロイヤルティは「忠誠」といった感情的な概念、コミットメントは「選択」といった行動的な概念と考えると分かりやすいと思います。
6.ロイヤルティとモチベーションの違いとは?
ロイヤルティは会社に圧倒的な力があり、従業員は会社に尽くしている状態。対してモチベーションとは従業員が「やる気のある」状態であることです。
例えば「家族を養う」ことがモチベーションであれば、会社のロイヤルティは高くともモチベーションは会社ではない状態です。
7.ロイヤルティと従業員満足度の違いとは?
会社に忠誠を示していても、働く上での居心地の良さは関係がありません。
例えば、50代の男性が、新卒からずっとお世話になったからと忠誠を示していても、中間管理職で上司と部下との板挟みで居心地が悪いなどの場合が考えられます。
8.コミットメントとモチベーションの違いとは?
コミットメントは、外発的に選択を迫られて行動していること、モチベーションとは従業員が「やる気のある」状態であることです。
会社の経営方針や上司の意向に従っていたとしても、モチベーションが「会社の経営方針」や「上司の意向」でなく、「自己成長」や「お金」などになる場合は考えられます。
9.コミットメントと従業員満足度の違いとは?
外発的に選択を迫られて行動していたとしても、働きやすさや居心地の良さは関係がありません。
10.モチベーションと従業員満足度の違いとは?
「お金」や「家族」のために働くモチベーションがある人が、職場に対して居心地の良さを感じるかどうかは関係がありません。
従業員満足度(ES: Employee Satisfaction)が上がると、業績もアップする?
「もっと社員の立場を考えよう」「従業員の目線でものを考えよう」という考えは、とても大切です。しかし、給料を上げることや社会福祉施設を提供するなどの、従業員へのご褒美を充実させることと業績が上がることには、相関性がないことがわかってきています。
従業員満足度が高すぎると、居心地が良すぎることでぬるま湯文化が蔓延し、組織全体のパフォーマンスが下がってしまうこともあるくらいです。
離職率などが高い場合には従業員満足度を向上させる施策は有効ですが、業績を上げるためには、経営目標を共に達成する共通の目的意識を持つ方が重要です。
言葉の意味と違いを知り、アプローチを変えることが大切
「エンゲージメント」「ロイヤルティ」「コミットメント」「モチベーション」「従業員満足度」、それぞれの言葉の意味と違いを知ることで、どのように施策に落とし込むべきかアプローチが変わってきます。
特に事業を成功・成長させていくカギは「エンゲージメント」を向上させ、従業員が会社に愛着を持ってくれることです。
今後本ブログでは、従業員エンゲージメントを高める方法について解説していきます。