弱い紐帯の強みとは?情報収集で見落としがちな重要な関係について

就職活動での悩みと解消方法の実態について

就職マッチングイベントを行う株式会社DYMの調査によると、就職活動中の男女学生が就活で困っていることとして「自分に適している企業はどこかわからないこと」が1位として挙がり、多くの就活生が就活序盤での企業選びに苦労していることがうかがえます。

就活で困っていること
出典元『PR Times』<2020卒 就活生アンケート>一番の悩みは「自分に適する企業がわからないこと」

自分に適している企業を探す上で欠かせないのが情報収集です。大企業で広く名前が知られているのであればまだしも、BtoB企業や中小企業はまず自社のことを知ってもらうことが求められます。全国求人情報協会の調査によると、学生が会社選びをする上での情報収集源として「民間の就職サイト」の利用が最も高く、また家族や知人の紹介も一定数存在していることがわかります。

プレエントリー時の情報収集源
出典元『公益社団法人全国求人情報協会』2018年卒学生の就職活動の実態に関する調査」

「会社説明会」を実施したり「就職情報サイト」を利用することで自社の認知度向上を狙う企業は多くあります。大手企業と比較すると予算も人員も割きづらい中小企業は、人材獲得競争において非常に苦戦することが想定されます。その上で活用したいのが、第三者による紹介です。

今回は、社会的なつながりが弱い人からの影響を考察した「弱い紐帯の強み」について説明します。

弱い紐帯の強みとは?つながりが弱い人がなぜ重要なのか

「弱い紐帯(ちゅうたい)の強み」とは、米国の社会学者マーク・S・グラノヴェター(Mark S. Granovetter)が1973年に発表した社会的ネットワークに関する仮説です。

家族や親友、職場の仲間といった社会的に強いつながりを持つ人々(強い紐帯)よりも、友達の友達、またはちょっとした知り合いなど、社会的に弱いつながりを持つ人々(弱い紐帯)の方が、自分にとって新しく価値の高い情報をもたらしてくれる可能性が高いという説のことをいいます。

なぜ弱いつながりが効果的なのか

社会的に強いつながりを持つ人々(強い紐帯)は、生活環境やライフスタイル、価値観などが似通っているために、自分と同じ情報を持つことが多いとされています。一方で社会的に弱いつながりを持つ人々(弱い紐帯)は、自分と異なる環境や生活スタイル、価値観を持つため、自分が知り得ない、新規性が高く有益な情報をもたらしてくれる可能性が高くなると考えられます。

強い紐帯を持つグループは同質性や類似性が高い関係のため、外部と遮断されがちで、新規の情報が入りにくい状態です。弱い紐帯は強い紐帯同士を結び付け、価値ある情報が広く伝わっていく橋渡しとして非常に重要な役割を果たします。

情報伝播や相互理解を促進するためには、弱い紐帯が必要となるのです。

グラノヴェターによる実験内容と実験結果について

1970年、マーク・S・グラノヴェターは、転職を考えるホワイトカラーの男性に対して「転職するうえで誰からの情報をもとに職を得たか」を調査しました。その結果、調査対象の282人のうち16.7%が高頻度で会う人(一週間に少なくとも二回会う人)からの情報をもとに転職をしていたのに対し、83.3%が稀にしか会わない、いわゆるつながりの弱い人からの情報をもとに転職をしていたことがわかりました。

「弱い紐帯」を通して有用な情報を入手することは、キャリアに対する満足度、昇進、昇給に影響を与えていることがその後の研究で報告されています。

会社として弱い紐帯を活用する方法について

「弱い紐帯の強み」の考え方は、ビジネスシーンでも活用されています。

期間限定のプロジェクトチームを発足する際、組織横断的なメンバーを集めたり、異業種から人材を集めたりすることはよくあります。これは弱い紐帯のメンバーを取り入れることで多面的な情報交換を可能にし、高い創造性が発揮されることを期待しているからです。産官学連携などは、弱い紐帯を利用して多様性を高め、新規開発やイノベーションを起こす試みと言えます。

強い紐帯は、つながりが強固であるがゆえに保守的な傾向にあります。同じ価値観ではなく、別の価値観をもつ多様な人材をあつめることで、弱い紐帯が橋渡しをし、強い紐帯同士を結びつけることを助けるのです。

企業の組織づくりにも大きな影響を与えているのが、この「弱い紐帯の強み」の考え方なのです。

会社として弱い紐帯を増やす方法

「弱い紐帯の強み」を活用するために、企業はどのように「弱い紐帯」を増やしていくべきなのでしょうか。

SNSの活用

SNSが普及し、より多くの人と簡単にコミュニケーションを継続、維持できるようになりました。SNSでのつながりを「弱い紐帯」として、情報や利益を得ることが可能になったことを意味します。

SNSには「強い紐帯」のコミュニティも数多く存在し、「強い紐帯」同士を結びつける橋渡しとして「弱い紐帯」が役割を果たしています。企業が「弱い紐帯の強み」を活用するためにSNSを利用するのであれば、SNSの「弱い紐帯」にばかり期待するのではなく、「強い紐帯」である自社のコミュニティを形成しておくことも必要です。

フューチャーセンターの活用

フューチャーセンターとは、企業や組織、そして個人が、それぞれの専門の枠を超えて集まり、対話を通して中長期的な課題の解決を目指す施設のことをいいます。

昨今、就職活動を行う学生と企業の橋渡しを行う場として、フューチャーセンターを開設する大学も登場しました。フューチャーセンターは、弱い紐帯である組織や個人が集まる場として、相互に有益な情報や利益がもたらされる可能性を秘めています。

SNSとは異なり顔を合わせたコミュニケーションが可能なため、注目を集めています。

部署をこえたコミュニティの形成

企業が積極的に部門や事業所をまたいだコミュニケーションを取る場をつくることで「弱い紐帯」を社内で形成することが可能です。

以前は、社員旅行や飲み会といった形式で、あまりかかわりのない社員同士がコミュニケーションを取る場を作ってきたかもしれません。これからは、同じ旅行や飲み会といった形式であっても、部門間や事業所間のチームビルディング研修といった要素を取り入れることで、目的意識を持って参加できるようにすることが必要です。

研修により部門や事業所を越えた社員同士のコミュニケーションを促すことで、社内での「弱い紐帯」が多数形成されていくことでしょう。

強い紐帯あってこそ「弱い紐帯の強み」の活用を!

「弱い紐帯の強み」とは、新規性の高い価値ある情報は、社会的なつながりが弱い人からもたらされる可能性が高いことを意味する社会的ネットワークに関する仮説です。

「強い紐帯」同士を橋渡しする役割として「弱い紐帯」を利用することが「弱い紐帯の強み」であるため、「強い紐帯」であるコミュニティの形成など、強いネットワークの強化はもちろん必要です。

ただただ「弱い紐帯」ばかりを増やすことが重要というわけではありませんが、中長期的な成長を望むのであれば、弱いネットワークも増やしていくことが求められます。「弱い紐帯の強み」を正しく理解し、活用することをお勧めします。

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