テクノ失業が世界中で発生している
テクノ失業とは、IT・AIの発展と導入により業務置換がなされたことで、人間が失業に追い込まれる状況を意味します。日々目覚ましい発展を続けるIT技術は、業務効率化・危険回避・正確性の維持などメリットが多数ある一方で、働く人間にとっては畏怖の念を抱くことにもなりうるのです。
パソコンやインターネットの普及率の推移を見ると90年代前半は10%程度でしたが、90年代後半からみるみるうちに上昇し、2001年には半数を超えたと報告されています。2014年頃からはパソコンに限らずスマホ、タブレット端末等の普及率も上昇しています。多くの方が、自身の幼少期と現在のPCやインターネットの普及具合、精度など、格段に発展していると実感していることと思います。
出典元『文化庁』パソコン,携帯電話,インターネットの普及率等
企業においては、ロボットやRPAの導入も進みました。ビジネス業界では、グローバル市場の競争激化、少子高齢化による労働人口減の問題、女性や外国人採用のダイバーシティ推進など、我々を取り巻く環境は大きく変化しています。
特に少子高齢化による労働人口減の問題は顕著であり、人手不足を理由とした倒産件数は年々増加しています。労働者確保が非常に困難な現状の打開策の一つに、ロボットやAIの存在があります。単純作業や事務作業がロボットやAIに置き換わることで、人手不足の解消が叶います。一方で、その業務を担っていた人材の側からすると、失業の危機に晒されることになります。
すでに大規模なテクノ失業が起きた例として、台湾・鴻海(ホンハイ)の精密工場では、約6万人の作業員をロボットに置き換えたことが挙げられます。そうすることで、24時間不休で工場が稼働可能となり、生産性が向上しました。一方で、その6万人はどうなったのでしょうか…経営者からすると、6万人を失業に追い込むことは容易なことでなく、従業員の継続雇用が叶う方法を考えたいのではないかと思います。
テクノ失業が発生しない?人間にしかできない仕事とは
ITやAI、ロボットが得意とするのは、単純作業、経理、評価、不備の発見、緻密で高度な作業工程、膨大な情報の分析などです。他にも、テクノ失業の可能性がある職業は増えていきますが、それでも「人間だからこそできること」「人間が最も得意とすること」を生かした職業は、永く生存すると考えられます。
あなた自身も振り返ってみてください。「私だからできる仕事」というよりも「人間にしかできない仕事」という観点で考えてみましょう。
創造性・協調性・共感性など、気持ちの通った仕事や、目に見える数値や物質では表しようのない事柄です。テクノ失業に強い仕事として紹介される代表例は、医療系、弁護士、カウンセラー、編集者、舞台作家、〜クリエイター、〜インストラクターなどです。人が人に対面して行うことが望ましい仕事や、既存のデータを集めて検討するよりゼロから自由な発想で構成していく事柄、臨機応変さや人情が活かされる事柄は、ロボットには高度な内容であり、テクノ失業を避けることができると考えられます。
会社としても従業員に対し、これら「人間らしさ」のある仕事を任せるようにすることで、高度な技術を導入しつつもテクノ失業を避けることができるのです。
自身の「心」に目を向ける
ITやAI技術が発達することで、テクノ失業が多発する可能性は、日に日に現実味を帯びています。技術の向上は生産性を上げるために欠かせず、今後一層、現在の想像の域を超えていくことでしょう。このような事態を受け止め、日本企業においても従業員が長く勤続できるよう、対策をする必要があります。
人間とロボットの大きな違いは、「心」の有無です。当然、ロボットにも高度な人工知能が搭載されれば協調・共感などがプログラムされるでしょうが、人間の心はそう簡単にパターン化されてはいません。まずはあなた自身が、人間の良さ・人間だから味わえる感覚に意識を向け、従業員の心通った言動に注目し、自社で活かせる「人間らしさ」を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。