シニア採用が注目されている背景とは?
現在の日本は、少子高齢化社会と言われているように、長寿化と少子化が進んでいます。
総務省統計局の調査によると、2018年10月1日時点で総人口126,443千人のうち65歳は35,578千人と、総人口の約28%が65歳以上となっています。また、50歳~64歳は23,602千人であり、総人口の約47%が50歳以上となっています。
出典元『総務省統計局』人口推計-2019年(平成31年)3月報-
日本の高齢化率は年々増加していくと予測されており、女性や外国人、シニア層が今後の労働力として期待されています。シニア採用を導入する際には、厚生労働省が実施している助成金制度を活用すれば、導入にかかった費用の一部を補填できる場合があります。
今回の記事では、シニア採用に活用できる助成金の種類や支給要件、受給できる金額についてご紹介します。
シニア採用に活用できる助成金の種類とは?支給要件や受給金額の違いについて
シニア採用に活用できる助成金の種類を、支給要件や受給できる金額とあわせてご紹介します。
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
- 65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
- 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
- 65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは、高年齢者のシニアや障害者などの就職困難者を、ハローワーク等の紹介によって継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成される制度です。
受給できる助成金額
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)で受給できる金額は、以下のようになっています。
出典元『厚生労働省』特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
ただし、平成27年4月30日までの雇入れの場合は、支給額・助成対象期間が異なります。支給額や対象期間の違いについての詳細は、厚生労働省の資料をご覧ください。
助成金の支給要件
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を受給するためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者(適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等)の紹介により雇い入れること。
- 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること。(対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること)
より詳しい支給要件や受給できない事業主の条件については、厚生労働省が公開している「各雇用関係助成金に共通の要件等」をご確認ください。
2.特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)とは、雇入れ日の満年齢が65歳以上の離職者を、ハローワーク等の紹介により1年以上継続して雇用することが確実な労働者(雇用保険の高年齢被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成される制度です。
受給できる助成金額
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)で受給できる金額は、以下のようになっています。
出典元『厚生労働省』特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
ただし、平成28年3月31日までの雇入れの場合は、支給額が異なります。支給額や対象期間の違いについての詳細は、厚生労働省の資料をご覧ください。
助成金の支給要件
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)を受給するためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。
- 雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが確実であると認められること。
より詳しい支給要件や受給できない事業主の条件については、厚生労働省が公開している「各雇用関係助成金に共通の要件等」をご確認ください。
3.65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)とは「65歳以上への定年引上げ、」「定年の定めの廃止」「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」のいずれかを導入した事業主に対して助成される制度です。
受給できる助成金額
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)では、定年引上げなどの措置の内容や年齢の引上げ幅、60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて、下表の金額が支給されます。
助成金の支給要件
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 制度を規定した際に経費を要した事業主であること。
- 制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること。
- 制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条または 第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと。
- 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること。
- 高年齢者雇用推進員の選任、次の(1)から(7)までの高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であること。
高年齢者雇用管理に関する措置
- 職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
- 作業施設・方法の改善
- 健康管理、安全衛生の配慮
- 職域の拡大
- 知識、経験等を活用できる配置、処遇の改善
- 賃金体系の見直し
- 勤務時間制度の弾力化
より詳しい支給要件や受給手続きの流れについては、厚生労働省が公開している「65歳超雇用推進助成金」のご案内をご覧ください。
4.65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)とは、1年以内に「高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置」を実施した事業主に対して、一部費用の助成を行うコースです。
高年齢者の雇用管理制度の整備等に係る措置とは、以下のような高齢者雇用に関する人事制度等の導入や改善を指します。
- 高年齢者の職業能力を評価する仕組み及びこれを活用した賃金・人処遇制度の導入又は改善
- 高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入又は改善
- 高年齢者が意欲と能力を発揮して働けるために必要な知識を付与するための研修 制度の導入又は改善
- 法定外の健康管理制度の導入
受給できる助成金額
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)では、雇用管理制度の整備等の実施に要した経費の額に、下表の助成率を乗じた額が支給されます。
表の中で言及されている「生産性要件」の詳細については、厚生労働省が公開している「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」のページをご覧ください。
助成金の支給要件
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 「雇用管理整備計画書」を高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出し計画内容について認定を受けていること。
- 上記計画に基づき、高年齢者雇用管理整備の措置を実施し、当該措置の実施の状況及び雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備している事業主であること。
- 雇用管理整備計画書提出日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと。
- 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者であって、講じられた高年齢者雇用管理整備の措置により雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月以上継続して雇用されている者が1人以上いること。
※短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除きます。 - 雇用管理整備の措置の実施に要した支給対象経費を支給申請日までに支払ったこと。
より詳しい支給要件や受給手続きの流れについては、厚生労働省が公開している「65歳超雇用推進助成金」のご案内をご覧ください。
5.65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)とは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用に転換させた事業主に対して助成を行うコースです。
受給できる助成金額
65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)では、対象労働者一人につき、下表の金額が支給されます。
表の中で言及されている「生産性要件」の詳細については、厚生労働省が公開している「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」のページをご覧ください。
助成金の支給要件
65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- (1)「無期雇用転換計画書」を高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出し、計画内容について認定を受けていること。
- (2)有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定していること。
※実施時期が明示され、かつ有期契約労働者として平成25年4月1日以降に締結された契約に係る期間が通算5年以内の者を無期雇用労働者に転換するものに限ります。 - (3)上記(2)の制度の規定に基づき、雇用する50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換すること。
※無期雇用転換日において64歳以上の者はこの助成金の対象労働者になりません。 - (4)上記(2)により転換された労働者を、転換後6カ月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6カ月分の賃金を支給すること。
※通常勤務をした日数が11日未満の月は除きます。 - (5)無期雇用転換計画書提出日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと。
より詳しい支給要件や受給手続きの流れについては、厚生労働省が公開している「65歳超雇用推進助成金」のご案内をご覧ください。
シニア採用で受給できそうな助成金があれば積極的に活用しよう!
シニア採用は、政府が主導する働き方改革で推進されており、企業への導入を促進するために様々な助成金制度が設けられています。
シニア採用に活用できる助成金制度は、助成金の種類によって支給要件や受給金額が多岐にわたるため、シニア採用を導入していれば支給対象に当てはまる可能性が高いです。自社のシニア採用制度において受給できそうな助成金があれば、積極的に活用しましょう。