Googleをはじめ多くの企業が「チームワーク」を重視
Googleが、「プロジェクトアリストテレス」で成功するチームの共通点を分析したのは有名な話です。目的は、チームの生産性を高めるための成功因子を探し出すこと。すべてのプロジェクトにおいて、よりよいチームワークを発揮し、生産性向上を図ったのです。
Googleに限らず、組織が大きくなればなるほど、1つの業務やプロジェクトを複数人のチームで進めるケースは多く、チームワークは日常的に求められるスキルとなります。デジタルトランスフォーメーションをはじめとしたイノベーション創発には、チームワークは欠かせません。いま多くの企業が「チームワーク」を重視しているのは、このためです。
「チームワークを発揮した経験」を見極める難しさ
リクルートキャリアの就職白書2019によると、面接は99%の企業が実施する採用手法です。従業員規模が多くなるほど、実施率も上がります。
同調査によると、採用面接で学生がアピール項目として多いのは、アルバイト経験や所属クラブ・サークルです。多くの学生が、アルバイトやサークル活動の経験から「チームワーク」をPRしようと考えているようです。
しかし「チームワークを発揮した経験」は、面接で質問することは可能ですが、面接官によって採用基準にバラつきが出やすく、見極めが難しい採用要件です。チームワークとは何かの定義、どのような人物をチームワークがあると評価するかの基準が、曖昧であるためです。
今回の記事では、面接で応募者のチームワークを見極める質問について説明します。
チームワークの意味と定義について
チームワークとは、一般的には「複数人が集まって、1つの目標を達成するために、個人の力を最大限に発揮し、知恵を出し合い協力し合いながら、行動すること」を意味しています。
チームワークの定義は、組織によって少しずつ異なります。スピード感を持って効率的に目標達成を目指すチームと、1つの業務をタスクシェアしながら運用するチームとでは、求められるチームワークが違うことは想像できるでしょう。
面接で応募者のチームワークを見極める方法
面接で応募者のチームワークを見極めるためには、まずチームの目的に合わせて、「どのようなチームワークが必要か」という採用要件を定義します。自社が求めるチームワークとは何かの定義を、明確に言語化するのです。
そのうえで、どのような人物をチームワークがあると評価するべきかを言語化し、採用基準を明確にします。評価のばらつきを抑止するためには「どういう状況において、どのような行動があれば、チームワークがあるとみなす」のように、具体的な事例を挙げながら採用基準を共有する方法がおすすめです。
面接で応募者のチームワークを見極める質問例
面接で応募者のチームワークを見極めるための、具体的な質問例を紹介します。ここでは、応募者のチームワークに関する過去の経験を具体的に掘り下げる際の質問例を紹介します。
これは「STAR」とよばれる、Situation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Result(結果)の頭文字をとった言葉で、S→T→A→Rの順番に質問する面接手法です。
1.Situation(状況)
チームワークを発揮した経験について、そのときの状況や背景、応募者が置かれていた環境、チームワークを意識したきっかけなどを質問します。まず最初に「チームワークを発揮した経験についてお伺いします」など、話題を明確に伝えるとよいでしょう。
「あなたがチームワークを発揮した経験について、その背景をお聞かせください」
「これまでチームワークが重要な局面で、あなたはどのような状況にありましたか?」
「あなたがチームワークの重要性について意識するようになったエピソードをお聞かせください」
2.Task(課題)
チームワークを発揮するにあたっての課題、応募者が担っていた役割、課題の難易度などを質問します。応募者のチームワークに対する考えを掘り下げて理解することができます。
「あなたがチームワークを発揮しようとした際、どのような課題がありましたか?」
「また、いま振り返ると、その課題の難易度はどれくらいでしたか?」
「チームワークを発揮するにあたり、あなたはどのような役割を担っていましたか?」
3.Action(行動)
チームワークを発揮するために取った具体的な行動やその理由、工夫したこと、軌道修正したことなどを質問します。
「チームで目標を達成するため、あるいは困難による遅れを取り戻すために、あなたはどのような行動を取りましたか?」
「チームワークをうまく機能させるために、あなたが取った行動の理由をお聞かせください」
「チームをよりよくしようと努力する途中で、気がついて工夫したことや、軌道修正したことなどがあればお聞かせください」
4.Result(結果)
チームワークを発揮した結果、得られた成果、学んだことなどを質問します。いま当時の行動を振り返って、どう評価しているか、いまの自分にどう活かされているかなどを聞くこともチームワークに関する応募者の人物理解に役立ちます。
「チームで行動することで、どのような結果を得られましたか?」
「チームワークを発揮した経験を振り返って、チームワークのメリットは何だと思いますか?」
「チームワークを通じて、いまのあなたに活かされていることはありますか?」
面接でチームワークを見極めるメリット
面接で応募者のチームワーク能力を見極めるメリットは、チームにおける生産性向上や、チームの一体感が高まることによる定着率向上などが挙げられます。
新たに採用した新規人材が、入社後に既存人材とうまくチームワークを発揮することができれば、既存人材のモチベーション向上や組織へのエンゲージメント向上も期待できます。
採用関係者一同での「チームワーク」研修がおすすめ
チームワークを発揮する能力は、入社後の教育に時間がかかるため、面接の段階で見極めておく必要があります。そのためには、自社が求めるチームワークの定義、どのような人物をチームワークがあると評価するかを明確にすることが重要です。
特におすすめなのが、採用関係者が一同に集まって、チームワークについてディスカッションする研修です。こうした議論自体に、チームワークが求められます。チームワークに対する自己理解、他者理解が進み、評価のばらつき軽減に役立つはずです。
面接でチームワークに関する質問内容や質問の仕方についても、面接官同士でナレッジを共有し、目線を合わせることで、どの面接官も適切な質問をできるようになるでしょう。