日本の労働生産性はなぜ低いのか?原因を働き方から探る

低迷していると言われる日本の労働生産性について

最近のメディアでよく問題視されているものの一つに「日本の労働生産性は、世界各国と比較した場合それほど高くはない」事象があります。

労働生産性自体は、現在の安倍政権が推進する『働き方改革』の柱の一つに取り上げられています。背景には、少子化による労働人口の減少や、売り手市場による労働力不足などの影響を受けて、外国人人材や女性の活躍推進などの労働人口の拡大だけでなく、1人あたりの労働生産性を向上させ、労働力不足の解消を目指していこうとする考え方があります。

なお、労働生産性の最近の国際比較を見てみると(2017年版)、以下のような特徴があります。

  • 日本の時間あたりの労働生産性は46.0ドル(4,694円)
  • OECD加盟35カ国中20位
  • 主要先進国である7カ国の中で見れば最下位(米国の3分の2の水準)

労働者1人あたりの労働生産性 時間あたりの労働生産性
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

日本は、労働生産性のデータが残っている1970年以降から最下位が続いており、特に、運輸や卸売、小売業、飲食・宿泊業などの主要分野に課題がある状況にあるのも特徴の一つです。

日本の労働生産性は、なぜ「低い」数値として表れるのでしょうか?今回は原因について、ご紹介します。

日本の労働生産性が低い原因とは

総体的に日本の労働生産性は低いという評価が続いています。何が原因なのか、理由として考えられるものをいくつか列挙してみます。

意味のない“効率重視”

短時間で可能な限り多くのものを算出することに注力してきたのが、これまでの日本の経済・企業活動の姿です。

効率性はどの時代でも重要ですが、どれだけ多くのものを生み出しても市場が縮小しているような現状の日本においては、効率性を重視する=売上の拡大につながるわけではありません。

日本の価格競争に見られる、購入意欲を高めようと価格を落とす手段も、本来は生産性には寄与しないのです。日本が求めてきた「効率」や「価格重視」の姿勢は、本来の意味での労働生産性に前向きの影響を与えているかは、疑問の残るところと言われています。

非効率な働き方の慣習

正社員と非正規社員の待遇の格差、数十年横ばい状態の賃金とその低さなど、過去から現在に至るまで続く日本の企業形態が生産性の向上を阻んでいるのは明らかです。

年功序列や終身雇用を前提にした人事制度や思考が残る企業は多く、キャリアアップと言えば企業内部のみ、容易に解雇できない法律なども、結果、労働者の能力低下につながるマイナスの要因です。働く意識の低さやスキルアップの意欲の低下につながり、生産性を上げられないという構図を作る要因にもなっていると言われます。

経営層や人事なども、社員の直近の成果ばかりを追い、長期的なキャリアプランを支援していないなど、社員のスキルアップに無頓着になっている点も大きな問題でしょう。

無駄の多い働き方

日本という国全体を見ると、企業が国の法律に則るため「だけ」の無駄なプロセス、企業レベルでは、企業ルールに沿うため「だけ」の無駄が、日本のビジネスの中には蔓延しています。

具体的には、署名捺印と書面が必須の書類処理、定例会議、担当者のみが把握する仕事などです。利益を創造する行動ではなく、ルールに即すことが目的になっている悪しき慣習の一つです。

プロセス重視の人事評価

日本の人事制度の特徴として、成果よりもプロセスを重視する内向きの評価体制があると指摘されています。長時間労働をいまだに美徳とする企業内文化が残る組織も少なくなく、人事評価が適正になされていない傾向にあります。

労働時間当たりの生産量を計算する労働生産性の低下につながっていると考えられます。

規制緩和や労働者保護政策の遅れ

「ホワイトカラー・エグゼンプション」や「女性活躍推進」などの働き方改革は、労働生産性向上には欠かせないものと考えれています。

その一方で、対象となる労働者(年収1,000万以上の給与所得者)の規制緩和や、育児・介護支援といった労働者の視点に立った政策の遅れが指摘されています。

日本の企業特性として、企業が社員を解雇がしづらい、というものがあります。結果として、労働人口が停滞するなどの悪影響につながる原因にもなっています。

労働生産性の現状を知ることは、自社の労働生産性向上に役立たせることにつながる

日本の労働生産性が低い理由としては、そもそも国の法律に基づくものや、新卒一括採用や終身雇用などといった、日本の従来の組織の在り方に関する点が多く、容易に改善できないものはたくさんあります。そういった労働生産性の現状や他国と比較する視点を持つことは、自社の組織力を高める仕組み作りに役立たせることにもつながるはずです。

まずは自社で何が出来るのか、経営層の問題意識も含めて全社として改善する姿勢を作らない限りは、根本の原因を解消することは難しい問題です。

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