採ってはいけない人材とは?
人材マネジメントにおいて大切なのは、在籍社員が戦力としてきちんと機能している状態を作り出すことです。
まず深刻な問題が「早期離職」です。採用が難しい昨今だからこそ、ついつい「採用」がゴールに思えてしまうのですがそれは大きな誤解です。獲得した人材が定着し、会社利益を出す戦力になるまでが採用活動と考えると、新人が独り立ちするまでの3〜5年はいわば投資期間に相当します。
では投資には具体的にどれだけの金額がかかるのでしょうか?
新人に対する投資として、人材獲得にかかるお金があります。求人募集や人材紹介、大学へのリクルーティング活動など獲得には様々な方法がありますが、1人あたり約46万円の採用コストがかかるというのが、人材市場の相場です。
人を雇うには人件費が挙げられます。経団連によれば大卒新入社員(総合職)の初任給の平均は月給218,455円です。さらにそこに社会保険の企業負担分が上乗せされ、年に2回の賞与(1回あたり月給の2.4ヶ月分)の支払いもあります。これだけでも年間400万円以上、3年で1,200万円のコストとなり、早期退職はそれだけの損失を生んでいるのです。
参考URL『日本経済団体連合会』「2018 年6月度 定期賃金調査結果」
早期離職と同様に深刻化しているのが「社内失業」です。「社内失業」とは、会社に在籍していながらも仕事がない状態を指し、またその概念も広く知られている訳でもありませんが、その実態を把握することは人事業務として重要です。
社内失業者の割合については、内閣府の2011年の調査では8.5%にあたる465万人が該当し、リクルートの調査では、このままの推移だと2025年には415万人が雇用保蔵者として該当するとの予測データが出ています。
出典元『リクルートワークス研究所』2025年 働くを再発明する時代がやってくる
大企業となると総合職採用がメインになることが原因の1つと考えられます。総合職では具体的な職務が決まっていません。そのため実力が育ってない社員が社内で「浮いてしまう」ケースがありえるのですが、そうした人材を法律によって簡単に解雇できないこともあって「社内失業」状態にならざるを得ないということが起こっています。
採用活動では短期的な視点以上に、長期的な視点を持つことが大切です。会社にとって利益をもたらしてくれる人材こそ狙うべきであり、その観点からすれば「すぐ辞める人材」や「就労意識が低い人材」というのは大きなリスクを抱えていると見なせます。
今回の記事では「採ってはいけない人材」の特徴とその理由を紹介します。
採ってはいけない人材の特徴とは?
採ってはいけない人とは、会社に不利益・損害を与えうる人物です。特に冒頭でも詳しく述べた「早期離職」や「社内失業」に該当するものは、もっとも避けたい人の代表格だと言えます。
特に注意したいのが「会社と価値観や考え方を共有できない人」です。不一致があるにも関わらず採用してしまうことを「採用ミスマッチ」と言い、これがあると会社に余計な出費が出るだけでなく、現在働いている従業員への悪影響も懸念され、生産性の著しい低下につながりかねません。今いる従業員がより快適に働ける環境づくりにも具体的に取り組んでいく必要があるでしょう。
コミュニケーションと採用ミスマッチ
人間関係に目を向けたとき、「個人対個人」という最小単位のコミュニケーションがまずあると気づきます。社会心理学のある研究によれば、「人間は似た者同士が惹かれ合う」ということが主張されていて、「個人対個人」の関係性についての基本的なモデルとなっています。類は友を呼び、価値観の違いによって恋人が別れるようなものです。
では「個人対組織」であればどうでしょうか? 実のところ、大きな違いはありません。性格・価値観が似た組織に属してる方が離職率は低いということが、実証研究によって明らかになっています。
性格や価値観といったものはそう簡単に変えられるものではないが故に、採用時にこうした側面の見極めを重視し、採用ミスマッチが起こらないようにすることが重要なのです。
管理職採用で「採ってはいけない人材」
管理職採用で特に注意しなければならないのが、周囲への影響です。リクルートの「現在の会社・職場・上司は合っていると思うか」というアンケート調査によれば、会社・職場・仕事では約7割の人材が合っていると思っていることが報告されています。
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』職場での「適材適所」に関する実態調査
一方で、「上司」については合っていると回答する比率が1割ほど低い結果となりました。全体的に「合っている」という回答が多く見られるのですが、実際は「合っていない」と感じる人々がすでに早期離職をしてしまっている可能性が考えられます。職場とのミスマッチは、早期離職の主たる原因だからです。
部下のモチベーションや成長は、上司・管理職にかかっているといっても過言ではありません。そのため、状況に応じた適切な対応が可能であること、柔軟性がこの採用には求められます。
具体的にはプロジェクトの進行管理スキル、教育スキルなどの広義のマネジメントスキルが必須です。そして、直面した課題を抽象化して理解・把握し、チームの行動指針として設定できる「地頭の良さ」も重要です。
これらは特にビジネススキルのなかでも「コンセプチュアルスキル」と呼ばれるものですが、「上司」になる人材を採用するときは、この点を見極めることが大切です。
「採ってはいけない人材」に注意する
特に即戦力の求められる中途採用ではスキルや業務経験などが着目されがちです。しかし。、採るべき人材を明確にするだけでなく、「採ってはいけない人材」も明確にし、採用選考プロセスで見極めることが大切です。
そのためには、採用要件定義の段階で、求める人物像だけでなく採ってはいけない人物像を明確にし、採用選考プロセスで見極める方法についても設計しておく必要があります。どんなスキルをどんな方法で確認するかまで落とし込むと、採用の確度も高まります。