面接チェック項目の明確化は、人材見極めの精度アップにつながる
複数の面接官や採用関係者で、人材見極めのポイントが噛み合っておらず、自社に合う人材の見極めに時間やパワーがかかったり、その間に内定を出したかった人材が他企業に入社を決めてしまうなどの、悩みを抱える人事担当者は少なくありません。
こうした問題は、採用における評価項目・評価基準が曖昧で、面接現場で見極めるべきチェック項目を社内で共通認識化できていないことに起因します。面接のチェック項目を明確にして、面接官が各自の主観に基づいた評価から脱却することこそ、人材見極めの精度を上げる鍵となるのです。
企業の採用活動は課題が山積である
「就職白書2019」によると、企業の採用活動は課題が山積みであることが分かります。実に76.4 %の企業が「採用に係るマンパワー」に課題を感じており、ほかにも「社内関係部署の協力体制」「採用に係るコスト」「採用計画」など、多くの課題を抱えています。
労働力人口の減少、人手不足倒産の加速、デジタルトランスフォーメーションなどの、外部環境の変化に応じて自社の採用要件を見直しながらも、採用活動はスピーディに行う必要があり、面接における人材見極めの精度を上げることは喫緊の課題といえます。
「就職白書2019」では、面接を実施する企業は99%にのぼる一方で、3割以上の企業が「採用関係者への採用選考基準の統一化」や「面接担当者の教育・訓練」に課題を抱えていることも明らかになりました。
面接で見極めるべきチェック項目を明確にするために必要なことや、メリット・デメリットを解説します。
採用選考で見極めるべき項目と評価基準とは
面接におけるチェック項目を定める前に、大前提として必要となるものがあります。採用選考における評価項目と評価基準を明確にすることです。人材の評価項目および評価基準は、自社の求める人材像に沿って決められます。
まだ評価項目が決まっていない場合には、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」を参考にするのもよい方法です。主体性、計画力、実行力、柔軟性、ストレスコントロール力など、12の能力要素が定められています。
評価項目を定めたら、評価項目ごとにどのような状態ならば合格とするのか、具体的な尺度を設定します。面接官や人事担当者ほか採用関係者全員で、評価基準の共通認識化を図り、評価基準を各自の主観から客観に変えて行くことが、人材見極めの精度を上げるポイントとなります。
面接で優先的にチェックすべき項目を選ぼう
採用選考における評価項目は、多岐に渡るのが一般的です。面接ではその中から、優先的にチェックすべき項目を、予め選んでおくことが重要になります。評価項目の全てを面接という限られた時間の中で見極めることは、応募者と面接官がほとんどの場合は初対面であることも考慮すると、現実的ではありません。
面接で優先的にチェックすべき項目を選ぶために、例えば、面接の前に適性検査を実施しておき、掘り下げてチェックすべき項目を定める方法は効果的です。新人面接官の場合には、「どの項目をなぜチェックしたいのか、どういう状態なら合格か」を人事担当者から事前に口頭で伝えるなどもよい方法です。
面接に限らずいえることですが、評価項目は2種類に大別されます。1つはスキルや能力で、これは動機付けや教育・研修などにより向上でき、可変性が高い項目になります。もう1つは性格や価値観で、生涯を通じて変わりにくいものです。
自社とのマッチ度が高い人材を採用するために重要になる、性格や価値観などのチェック項目は、面接のチェック項目として優先順位を上げるべきではないでしょうか。
面接でチェックすべき項目を明確にするメリットについて
面接におけるチェック項目や評価基準を明確にすることは、多くのメリットをもたらします。新米面接官でも、面接の目的に沿った面接を実施することができますし、一度に大量の面接を実施しなければならず面接官の負荷が高い場合でも、面接の質を落とさずに面接を実施できるでしょう。
面接官が誰であっても、面接官のスキルや経験、主観にも左右されずに面接を評価できるようになることで、「面接官による評価のばらつき」を回避し、人材見極めの精度向上を図れるのです。
面接でのチェック項目には「落とし穴」も・・・
接で優先的にチェックするべき項目を明確にすれば、評価のばらつきを抑えることができると考えるのは早合点です。そこには「主観頼み、経験優位」という落とし穴が隠されているのです。
例えば、チェック項目として「コミュニケーション能力」を掲げる場合について、考えて見ましょう。人によって、コミュニケーション能力の有無に対する基準は異なります。笑顔でテンポよく話せることを重要視する人もいれば、質問に対してロジカルな回答をできるかどうかで、コミュニケーション能力を測る人もいます。このようにして、複数の採用関係者の間で評価が割れたとき、経験の長い人の意見が暗黙の了解で尊重されがちだということも、面接現場の実情です。
面接のチェック項目として「素直さを感じたか?」「一緒に仕事をしたいと思ったか?」など、面接官の主観による評価を促すのではなく、客観的に評価できるレベルまで落とし込むことで、「主観頼み・経験優位」の落とし穴を回避することができるでしょう。
面接のチェック項目に「含まない」ものも明確にしよう
限られた時間で人材の見極めを行う面接では、見極めるべき評価項目や評価基準を具体的かつ客観的にして、誰が面接官であっても一貫した判断を行えるようにすることが大切です。
採用における評価項目を明確にし、書類選考や適性検査など、面接以外の手段でも見極められる項目については、面接のチェック項目に「含まない」よう、優先順位をつけて運用することが望ましいでしょう。