人材発掘のキーワードは「適材適所」
リーマンショック以降、有効求人倍率は上昇の一途を辿っており新規人材の獲得の難易度は年々上昇しています。人事戦略として定期的に新規人材を獲得することは重要です。しかし、企業間での人材獲得競争が激化していることを考慮すると、安定した会社経営のためには、自社の人材の長所を見出し、その才能を発掘していく体制が不可欠です。
人材不足はいまや日本全体が抱えている社会問題とも考えられます。帝国データバンクの調査によれば、特に正社員の不足感は年々高まっており、2019年10月には調査対象の過半数を超えました。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 10 月)
深刻なのがいわゆる「雇用保蔵(社内失業)」です。雇用保蔵(社内失業)とは、会社に所属していながら実質的に生産を挙げていない、業務を与えられていない状態を指します。リクルートワークス研究所によると、2025年の雇用者に占める雇用保蔵者は、労働者全体の全体の8.2%(415万人)になると予測しています。
出典元『リクルートワークス研究所』2025年 働くを再開発する時代がやってくる
人材マネジメントには雇用保蔵率をどう減らしていくかが重要です。リクルートワークス研究所の同調査では、悲観シナリオにおいて、2015年と比較すると2025年には557万人もの就業者が減少する一方で、497万人もの社内失業者が生まれると仮定しており、職を失うだけでなく就業意欲の減退についても警鐘を鳴らしています。
この記事では、上記のような有効活用できていない人材を減らすための1つの方法を提案します。具体的には、様々なスキルをレーダーチャート化することにより行えるものですので、ぜひ参考にしてみてください。
性格や価値観がなぜ人材発掘のポイントになるのか?
社内失業状態にある社員を減らすことは、会社全体の生産性を向上させる人事戦略として重要です。人材発掘は、万能なスキルを持った社員を発見するためではなく、むしろ特定の分野において秀でた能力を持つ社員を発見すること、言い換えれば適材適所を実現することを目的としています。
人材発掘で重要になるのは、長期的なビジョンを持って起用することです。特に若手の起用においては、プロジェクトの舵取りがうまくいかなかったり、細部までケアが行き届かなかったりなど、大小様々なトラブルが想定されます。それも含め、起用した人材のサポート体制を作ることと、ゆくゆくは会社の中核として活躍できる人材へと成長するのに繋げていくことが大切です。
人材発掘では従業員の性格や価値観など、人間の根本にあるものをしっかりと見つめる必要があります。業務遂行に直結する実務スキルは後天的に身につけることができます。しかし、どういう考えをもってどのように行動するかという部分はなかなか変えることができません。いずれ他の従業員をひっぱっていく人材を育成するには、その資質を持った人材や、伸びしろが豊富な人材を発掘する必要があるのです。
スキルをレーダーチャート化する
しかし性格や価値観、行動特徴などは評価対象にするには定性的すぎ、公平性を担保するのはむずかしいところがあります。そこで利用価値が高いのがビジネスに関する様々なスキルをレーダーチャートにしてみるという方法です。
出典元『株式会社アイ・ティ・イノベーション』【第8回】 ヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルの育成事例 その2。
引用した図では、コミュニケーション能力や向上心、リーダーシップなどのいわゆる「ヒューマンスキル」と呼ばれるものや、論理的思考力や企画力などの抽象思考力を示す「コンセプチュアルスキル」と呼ばれるものを中心に作られています。一般にビジネススキルはこの2つに専門性・業務遂行能力を指す「テクニカルスキル」の3つに分類されますが、ここで取り上げたヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルは比較的汎用性の高いものだと考えられます。
レーダーチャートの形はもちろん大切です。しかし、成長を期待できる若手人材を発掘しようとするなら、それ以上に重要なのはどのスキルがどれだけ伸びているかという相対的変化です。上に引用したレーダーチャートでは青線から赤線の変化がその人材の成長であると読み取ることができます。
人材発掘ではまずスキルを細分化し、なんらかの基準を設けて計測することが大切です。向上心や責任感などの定性的なものは数値化がむずかしいですが、自己評価と上司による客観評価を参照するなどの評価方法も有効です。
どの要素がもともと強く、どの要素が成長中であるかを客観的に把握できれば、さらなる成長のためにどんな役職を与えるべきかが明瞭に見えるようになります。
人材発掘には評価項目の細分化が必要
社内人材を発掘するためには、具体的にどんな人材を発掘したいのかの要件定義を明確することがまず大切です。なにをどのように計測するのかを明らかにし、それを社内で公表することで従業員のモチベーションを刺激することもできます。
人材マネジメントの最適化のため、まずは自社の従業員のデータを必要な部署からスモールスタートで始めてみてはいかがでしょうか?