理想のフォロワーシップは1つじゃない?
フォロワーシップとは、組織をうまく機能させるためにリーダーを補佐するスキルを意味しています。フォロワーシップはリーダーシップと相補的な関係にあるもので、組織の成果を最大化させるためには、両者がうまく噛み合い、相乗効果を生み出すことが不可欠です。
近年のリーダーシップの理論的研究では、状況や条件、構成員の性格に応じて取るべきリーダーシップが変化するという結果が報告されています。リーダーありきで機能するフォロワーシップもまた同様の性質を持ち、個々の性格に合わせ、リーダーや職場環境などの外的要因との関係性によって「理想のフォロワーシップ」は異なります。
この記事では、フォロワーシップ理論により分類される5つのタイプを紹介します。立ち居振る舞いの特徴や改善点などを再考するきっかけとなれば幸いです。
ロバート・ケリーにおけるフォロワーシップの分類方法
フォロワーシップ理論の中で代表的なものは、カーネギーメロン大学のロバート・ケリーにより提唱された分類モデルです。
ロバート・ケリーの理論では、フォロワーの性質を「発言の主体性の強さ(批判的思考or無批判思考)」と「行動の主体性の強さ(貢献力の高さ)」の2軸でフォロワーシップを分類しています。これによりフォロワーのタイプは下図のように5つの領域にそれぞれ位置付けることができます。
出典元『デュアルキャリアのためのセルフマーケティングと企画+E』フォロワーシップを身につける
このタイプ分類で注意すべきことは、フォロワー個人の本質的な性質を示すというものではないということです。フォロワー個人が置かれた状況により、どのタイプの振る舞いをするかは変化します。あくまで、個人と環境の双方を参照しながら検討されるべきものです。
模範的フォロワー(協働者)
図の右上に位置するフォロワータイプです。
発言・行動ともに積極的で、組織の機能を活発化してくれる存在です。フォロワーシップだけでなくリーダーシップも持ち合わせており、次世代のリーダーとしての素質を備えています。
孤立型フォロワー(破壊者)
図の左上に位置するフォロワータイプです。
「批判はするけれど行動はしない」という、「口だけ」の存在にもみられがちなフォロワーです。そのため組織の雰囲気を悪くする危険性も持っていますが、物事の問題点を見逃さない視力も持ち合わせていると考えることもできます。
リーダーの目的次第では、現状を変える良き協力者となり得ます。
順応型フォロワー(従事者)
図の右下に位置するフォロワータイプです。
自発的に意見を持ったり発言したりはしないですが、言われたことはきちんとする「イエスマン」です。リーダーの立場からすれば非常に仕事がやりやすい部下である反面、順応型フォロワーが多すぎると組織としての多様性が損なわれる恐れがあります。
消極的フォロワー(逃避者)
図の左下に位置するフォロワータイプです。
意見もなく貢献のための行動もしないという、組織に在籍してはいるものの存在価値を発揮できていないフォロワーです。フォロワーがこうした状態に陥っている場合、業務以前の信頼関係などに問題がある可能性が考えられます。
実務型フォロワー(実践者)
図の中央に位置するフォロワータイプです。
ほどほどに意見し、ほどほどに働くというタイプで、仕事は仕事と割り切った態度をとる傾向があります。自分の業務には責任を持ちますが、業務範囲以外のところでフォロワーシップを発揮しないというスタンスをとることがあります。
いかにして「模範的フォロワー」になるか
理想のフォロワーシップとは、図の右上に位置する「模範的フォロワー」です。組織機能を向上させるためには、チーム構成員がどのようなフォロワータイプであるかの現状をまず把握することが大切です。
メンバーそれぞれに足りていないのが「発言」なのか「行動」なのか、それとも両方なのかを見極め、日々のコミュニケーションや実務の中で少しずつアプローチしましょう。
大切なことは「メンバー個々のタイプを尊重する」ことです。確かに模範的フォロワーは組織として重宝しますが、メンバーそれぞれの個性や性格により向き・不向きがあるのも事実です。
苦手なことに対して負い目を感じているメンバーに対しては、得意なことをしっかり承認し、自信を持たせるように働きかけましょう。
フォロワーシップが組織を大きくする
フォロワーシップにも複数の種類があります。フォロワーシップのタイプは個人の性格だけでなく、置かれた状況などにも関係していますので、常に現状を理解しながら、理想とするフォロワーシップへ改善していくことが重要です。
リーダーシップの改善と同様に、フォロワーシップの改善も中長期を見据えて実施する必要です。全従業員が適切なフォロワーシップを身につけることができれば、非常に大きな組織成長が実現するでしょう。