クランボルツの意思決定理論とは?予測が難しい中で活用できるキャリア理論

適材適所を実現するためのキャリア理論とは?

人材の適材適所を考える上で、人事担当者や経営者が知っておきたいのがキャリア理論です。キャリア理論は、約100年ほど前に職業指導の父と呼ばれたパーソンズによる特性因子理論が始まりとされています。当時産業革命の波がアメリカにも押し寄せ、人々の仕事や生活環境が大きく変わり、失業者が増大して社会問題となっていました。

問題解決のため、パーソンズは個人の特性(性格や価値観)と仕事内容や求められるスキルなどの因子をマッチングさせることが重要であると考え、特性因子理論を提唱しました。

https://mitsucari.com/blog/characteristic_parameter/次いで登場するパーソナリティ理論は、特性因子理論を発展させる形で提唱された理論です。パーソナリティ理論では、個人個人は異なる存在であり、持ち合わせている特性も1つではなく、複数組み合わせて捉える必要があると考えられました。人は置かれた環境、育った環境によっても、取りうる行動が異なるとも考えられました。

今回はご紹介する、意思決定理論は、人生は意思決定の連続であり、人がキャリア選択をしていく「プロセス」や「意思決定そのもの」が大切であるという考え方から発展した理論です。

本記事では、社会的学習理論をベースにした意思決定理論を展開したクランボルツの理論をご紹介します。

キャリアの意思決定における社会的学習理論について

意思決定理論は、キャリアを選択していく上での意思決定そのものに焦点を当てた考え方です。我々は進学や就職、結婚、異動など様々な場面で選択をしている訳ですが、その意思決定のプロセスや、意思決定スタイルは様々です。

人はどのようなプロセスを経て意思決定しているのか、またより良い意思決定をするにはどのようなプロセスを経るべきなのか、意思決定の際の障害となりやすい要素はどのようなものがあるのか、意思決定のスタイルをその特徴毎で分けるとどのようになるのかといった研究がなされてきました。

ジョン・クランボルツ(Jonh D. Krumboltz)は、アメリカスタンフォード大学の名誉教授であり、社会的学習理論を提唱したバンデューラの理論をキャリアの意思決定に応用した人物です。具体的には「キャリアの意思決定は、これまでの学習経験に基づいて行われるもの」であり、「人間は学習し続ける存在である」という考えがベースとなっています。

クランボルツは、1979年に『A social learning theory of career decision making』を著し、キャリアの意思決定における社会学習論的アプローチを提唱しました。1999年に『Planned Happenstance』(計画された偶発性)を発表し、予期せぬ出来事を学習の好機と捉えることを唱えました。

クランボルツが提唱した主要理論とは?

クランボルツが提唱した代表的な理論には「社会的学習理論」と、先述の「計画された偶発性」があります。

「社会的学習理論」は、バンデューラの社会的学習理論をベースにクランボルツが理論化したもので、彼は4つのキャリア決定要因をがあると考えました。人がキャリアにおける意思決定をするときに影響を与える要素で「遺伝的特性」「環境条件と出来事」「学習経験」「課題アプローチスキル」の4つがあるとしました。

  1. 遺伝的特性
    性別・人種・民族、身体的特徴、運動能力など、生まれつき有している特性を言います。
  2. 環境条件と出来事
    個人のコントロール外の出来事のことを言います。例えば雇用機会や求人数、各種法律、労働条件などを指します。
  3. 学習経験
    過去の学習経験が意思決定に大きな影響を及ぼすとクランボルツは考えていました。学習経験については、「道具的学習」と「連合的学習経験」の2つに分けられます。

    1. 道具的学習
      あることを期待して行動するようになる学習のことです。あるスポーツが得意で人に褒められてもっと練習をして上手くなることで、より一層褒められるようになり学習が進んでいきます。
    2. 連合的学習
      連合的学習は、全く興味のなかったスポーツに友達が楽しそうに取り組んでいる姿を見ることで、スポーツに対してポジティブな感情を持つようになることです。モデリングによる学習とも呼ばれます。
  4. 課題アプローチスキル
    仕事や課題に対して取り組む能力やスキルのことです。課題アプローチスキルは、遺伝的特性や環境条件、学習経験などの影響を受けて養われるとしています。ある職業につきたいと思ったとして、課題に対して目標を定め、情報収集や努力などの取組をしていく過程が、課題アプローチスキルです。

もう1つの主要理論である「計画された偶発性(Planned Happenstance)」では、「予期せぬ出来事を学習の機会と捉えること」を提唱しました。人のキャリアは偶然に起きた出来事や出会いによって決定されていることから、偶然の出来事や出会いを積極的に活用することで、自らの力でキャリアの機会を創造することができるとしました。

クランボルツは「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つのスキルを高めることが重要だと述べています。

失敗を恐れず新たなことに積極的に取り組み、情報アンテナの感度を高く保つことで、巡ってチャンスを逃さず自分のものとすることができるでしょう。計画された偶発性についての具体的な事例が『Luch is no accident(その幸運は偶然ではないんです)』に掲載されているので、そちらも参考にすると良いでしょう。

優秀な社員の定着のためにキャリア理論を活用する

クランボルツは、予期せぬ出来事からキャリアが決定されている事実に言及し、そうであれば予期せぬ出来事を最大限活用することが、計画的なキャリア形成の機会となりうると考えました。

予測不可能な現代において、企業は時代の変化に応じてビジネス転換や体制変更などをせざるを得ない状況に直面することが増えてきました。優秀な人材の離職を防ぐために、人事担当者は単に異動やポジション変更などを伝えるだけでなく、その変化が社員のキャリアにどのような影響を与えるのか、キャリア理論を活用しながら伝える努力が有効なのではないでしょうか。

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