メンタル不調の原因は、上司との人間関係
厚生労働省の調査によると、脳・心臓疾患の労災請求件数や精神障害の労災請求件数は年々増加傾向にあり、仕事が原因で労働者の健康に様々な害を及ぼしていることが分かります。
メドピアの子会社「Mediplat」のアンケート調査によると、従業員のメンタル不調の原因として何が多いかを複数選択式で尋ねたところ、最も多かったのは「職場の人間関係」で、次が「長時間労働、業務過多」、次に「パワハラ」という結果が出ました。
出典元『メドピア株式会社』産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」、1位は長時間労働ではなく「上司との人間関係」
メンタル不調の原因として「職場の人間関係」を選択した人に、不調の原因となる職場の人間関係で最も多いものを尋ねたところ、7割以上が「上司との人間関係」という結果でした。
出典元『メドピア株式会社』産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」、1位は長時間労働ではなく「上司との人間関係」
上司の適切なマネジメントが仕事のパフォーマンスだけでなく、健康にも影響を与えていることがわかります。
「初めて勤務した会社」を離職した人に対して、離職の理由を複数回答で聞いたところ、2位に「人間関係が良くなかった」と挙げられており、上司と部下の関係は離職にも影響を与えていることがわかります。
今回は、会社や従業員のトラブルを引き起こす「クラッシャー上司」の特徴について説明します。
クラッシャー上司とは?どんな特徴があるのか
クラッシャー上司とは、部下を精神的に追い込みつつも成果を残していく上司のことです。部下をつぶしてしまう上司というとパワハラを連想しますが、クラッシャー上司はパワハラ行為だけが該当するわけではありません。
通常のパワハラは自分のストレス解消のために部下をいじめ、他人に迷惑をかけたりします。しかしクラッシャー上司の場合、業績を上げるための指導であり、実際に結果を出している場合が多く、企業としても対応がしにくい傾向があります。
クラッシャー上司自身が優秀であり、自分が業績を上げてきたという自負があるため、自分の価値観を元に熱心に指導を行います。部下にも自身と同じレベルの完璧な仕事を求めてしまうのです。
クラッシャー上司が自社に与える影響について
企業において、人事担当者や経営者の方は「仕事ができるから」「結果を残しているから」という理由でクラッシャー上司を放置してはいけません。クラッシャー上司は、以下のような影響を企業に与える可能性があるからです。
人材が流出する可能性が高まる
クラッシャー上司は「自分ができるのだから他人にもできて当然」と考えてしまう傾向にあり、業績を上げるために行き過ぎた指導を行いがちです。行き過ぎた指導は、部下を委縮させ、疲弊させてしまいます。
本来能力があるはずの人材も、日々膨大な仕事量や難しいレベルの仕事、また上司からのプレッシャーにさらされていては自分の能力を発揮できず、成長できないまま精神的に追い込まれてしまい、潰れていことも考えられます。そのような指導は健全な人材育成とは言えません。こうした状況下では、うつ状態から休職に至る社員や退職を余儀なくされる社員も増えていくことでしょう。
離職する社員が増えると、会社の先行きを不安に思った社員がさらに離職を考えるという悪循環に陥りかねません。クラッシャー上司の放置は、優秀な人材を流出してしまう可能性をはらんでいるのです。
売上が落ちる
「仕事ができるから」「結果を残しているから」という理由でクラッシャー上司を放置していたとしても、いずれ売上は鈍化していきます。なぜなら前述のように、クラッシャー上司は健全な人材育成ができないため、部下が育たず人材が不足します。人材不足の状況では、チームを組んで大きな仕事を成し遂げることが難しくなります。
離職率があがると採用コストと新人教育へのコストがあがります。中長期的な人材育成ができなくなり、組織全体の生産性は落ちます。結果、次第に売り上げは落ち込んでいくことになるのです。
社会的信用の失墜
社会全体がパワハラに過敏になっているいま、クラッシャー上司を放置することは会社の評判に関わってきます。
クラッシャー上司は結果を残しているとは言え、その行為はパワハラと大差がありません。訴訟のリスクもある上に「問題を放置したブラック企業」というイメージがつけば、社会的評価や企業イメージに深刻なダメージを受け、売上や採用、経営に大きな悪影響を与えます。
クラッシャー上司を放置することは、退職者の増加や裁判のリスク、業績の悪化といったデメリットにつながる可能性があるのです。
クラッシャー上司の特徴について
クラッシャー上司の特徴として、以下のことが挙げられます。
仕事ができる
クラッシャー上司自身が優秀であり、実際に結果を出している場合が多くあります。業績を上げるために行き過ぎた指導を行ってしまうことで、部下を精神的に追い詰めてしまいますが、業績を上げてきたという自負があるため、自身の指導を見直すことはありません。
パワハラのように自分のストレス解消のために部下をいじめているわけではないため、企業としても対応がしにくい傾向があります。自分の価値観を元に熱心に指導を行い、部下にも自身と同じレベルの完璧な仕事を求めてしまいます。
すべての基準は「自分」
クラッシャー上司は、時に膨大な仕事量や難しいレベルの仕事を部下に任せてしまうことがあります。仕事を押し付けてやろうというパワハラ的な考えではなく「自分ができるのだから他人にもできて当然」という考えが元になっているようです。
これまで自分のやり方で結果を出してきたため、他の人にも自分と同じだけの働きを強要しようとします。業績を上げるために良かれと思ってした指導が、部下を精神的に追い詰めることになってしまっているのです。
他者への共感性が乏しい
クラッシャー上司は、他人を思いやるという感情が乏しい傾向にあります。すべての基準が「自分」であるため、自身の経験や価値観を優先してしまいがちです。
思いやりのある上司は、部下の感情に寄り添うことができますが、クラッシャー上司は、たとえ部下が追い込まれてつぶれてしまったとしても「メンタルが弱いから」と考えてしまうようです。
クラッシャー上司は、自分のやり方で実際に結果を出してきた場合が多く、自分のやっていること(クラッシャー行為)を悪いことだとは認識していません。「自分ができるのだから他人にもできて当然」と自分基準で考えてしまい、部下一人一人の能力差やレベルを考慮することができません。業績を上げるための指導であることが多く、企業としても対応がしにくいことが特徴です。
クラッシャー上司への対策は、役員や人事部が主導しよう
クラッシャー上司とは、部下を精神的に追い込みつつも成果を残していく上司のことを言います。業績を上げるために、部下に対し行き過ぎた指導を行ってしまうことが特徴です。結果として部下の健康被害や離職を引き起こしてしまいますが「自分ができるのだから他人にもできて当然」と自分基準で考えてしまうため、自身の行為が不適切であったという認識はありません。
高い業績を出すクラッシャー上司の場合、役員や人事から指導しづらいこともあり、問題を悪化させてしまうことがあります。コンプライアンスの観点からも、役員や人事部が主導となって改善を行うことが求められます。