AI面接をはじめ「AIマッチング」の注目が高まる
AI面接をはじめとするHR Techが増加しています。背景にあるのは、人事業務を効率化したいという企業からのニーズの高まりです。HR Techクラウド市場は急速に成長しており、まだまだ伸びしろがあると言われています。
HR Techには様々な業務に対応したサービスがあります。2018年12月にHR NOTEで発表された「注目のHR Techサービス2018」によると、企業で導入が最も進んだのは採用管理ツールでした。
出典元『HR NOTE』【結果発表】585名が投票!今年注目した人事(HR Tech)ツールはこれだ!
なかでも、最も注目されているのは「AIマッチング」による人材マッチングサービス。AI面接とはじめHR Techのトレンドは、おさえておいた方がよいでしょう。
出典元『HR NOTE』【結果発表】585名が投票!今年注目した人事(HR Tech)ツールはこれだ!
AI面接に対しては、応募者・人事担当者ともに戸惑い
AI面接は、ソフトバンクがIBMのWatson(ワトソン)を活用したツールを導入し、合否判定の業務効率を大幅に改善できたと発表したことから、広く世間でも知られるようになりました。
AI面接は、大手企業を含む様々な企業で導入が始まっています。しかしAI面接に対する意見は、応募者側・企業の人事担当者ともに戸惑いが目立ちます。
ヒューマネージが発表した「AI採用」に関する企業アンケート調査によると、4社に1社(25%)がAI採用を導入済または導入を検討しているのに対して、42%が「活用イメージがわからない」と回答しています。
出典元『株式会社ヒューマネージ』「AI採用」に関する企業アンケート調査
キャリスタ就活2019によると、応募者側も、AIが自分にあう企業をおすすめしてくれることに対しては好意的であるものの、AIが面接の合否を判定することに対しては8割以上が「よいと思わない」「よい・よくないのどちらでもない」としています。
出典元『株式会社ディスコ』キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果
AI面接を導入・実施する際には、メリットはもちろんですが、デメリットについてもしっかりと認識しておくべきだといえます。
AI面接を導入する企業のメリットとは?
AI面接におけるAI(人工知能)の役割とは、過去の採用履歴や社内で活躍している人材のデータをAIが学習し、応募者のスクリーニング、採用面接で質問や評価・合否判定などを行うことです。
AI面接を導入する企業側のメリットは、大きく2つ挙げられます。1つは「採用業務の省力化」、もう1つは「評価基準の統一化」です。
採用業務の省力化として、面接で適した質問を選択し事前準備の時間を削減する、面接官をAIに任せることで面接官が不要になるなどが挙げられます。
採用基準の統一化として、AIを用いることで、数値化できない情報を数値化できることが挙げられます。優秀な人材が使うフレーズやエピソードを学習し、どの程度類似しているのかを可視化する、コミュニケーションにおける仕草を採点することが可能になり、誰もが客観的に判断できる数値データとして出力できます。
AI面接の導入・実施における「3つのデメリット」
AI面接の導入・実施におけるデメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- AI面接による評価基準統一化はダイバーシティを阻む
- AIは結論を出せるが、理由を説明できない
- 人間の領域を犯される「不安」が拡大する
1.AI面接による評価基準統一化はダイバーシティを阻む
AI面接では「どのようなデータを学習させるか」が運用の精度に大きく関わるります。評価基準を統一化することで採用する人材の画一化が起き、結果として人材の多様性が失われかねないというデメリットがあります。
過去の採用履歴や現在活躍する人材のデータに依存しすぎた評価基準の統一は、デメリットになり得ます。企業のビジネス環境は刻一刻と変化しており、過去のデータにとらわれることで市場環境に対応した戦略的な人材採用を実行できなくなるためです。
過去の採用において、男性優遇や外国籍の方を排除するといった「無意識のバイアス」が存在していた場合、それをAIが引き継ぐことになります。バイアスがかかった状態の評価基準が統一化されることで、組織のダイバーシティを阻害する要因にもなりかねません。
2.AIは結論を出せるが、理由を説明できない
AIによる合否判定は、各人に対して合格、不合格の理由を説明しづらい、というデメリットにも注意すべきでしょう。AI面接において、AI(人工知能)は結論を提示するだけで、判断の理由を事細かに説明してはくれないからです。人事担当者がAIの判断に不信を抱くと、再度書類を確認したりなどの二度手間が発生し、結局は業務効率が落ちることになります。
2019年3月29日、政府の総合イノベーション戦略会議は「人間中心のAI社会原則」を発表しました。人間の尊厳が尊重され、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会を持続的に実現することを基本理念として掲げています。「AIを利用した企業の対して決定過程の説明責任」についても言及している点には、AI面接をはじめとするHR Tech導入を検討する企業は特に留意すべきでしょう。
参考URL『厚生労働省』人間中心の AI 社会原則
3.人間の領域を犯される「不安」が拡大する
人事担当者、応募者ともに、これまで人間の領域であった「コミュニケーション」をAIが代替することに対し、大きな不安や戸惑いを抱えています。人事担当者がAI面接に不安を抱えたまま導入・実施してしまうと、応募者に誠意を持って対応することができなくなり、結果として会社に対する応募者の印象を損なうリスクがあります。人材獲得難が続くいま、これは大きな痛手です。
応募者にとって、AI面接がどのようなメリット・デメリットがあるのか、人事担当者が把握しておく必要です。
AI面接を導入する、応募者側のメリット・デメリット
AI面接を導入する応募者側のメリットとして、AI面接ならオンラインでも採用面接をできるため、移動コストを省くことができる点が挙げられます。評価基準が客観的に統一化されるため、面接官との相性で不合格になる可能性を減らすことができます。
デメリットとしては、評価基準をクリアできるよう対策をすれば面接を通過できることになり、必ずしも自分という人間性にマッチする企業に入社できる機会が損なわれてしまうというデメリットが考えられます。
AI面接の導入・実施は、応募者に納得してもらえる説明をできる状態で行うことが重要です。
AI面接の導入・実施は、部分的にはじめてみよう
AI面接を導入する企業は、今後も増えることが予測されますが、合否の納得感を客観的かつ具体的に説明することが導入・実施の鍵になるでしょう。いきなり面接にAIを導入するのではなく、部分的に取り入れてみて、対外的に導入の利点を説明できる状態を作ることが重要です。
自社で活躍する人物と応募者のマッチ度を測るミツカリ(mitsucari)は、面接前に実施することで、採用要件をより明確にするのに役立ちます。あるいは書類選考にHR Techを導入し、あくまで人事担当者のサポートとして活用するのもよいでしょう。
部分的なHR Tech活用から、徐々に将来的なAI面接導入・実施の方向性を模索してみてはいかがでしょうか。