出戻り社員とは?再雇用する目的と日本企業における現状について

人材難が続く中、低下しない離職率について

帝国データバンクの調査によると、2019年10月時点で正社員が不足している企業は過半数にもなります。前年比では改善されていますが、まだまだ多くの企業が人手不足で悩んでいます。

従業員が不足している企業の割合
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019 年 10 月)

中小企業庁が委託した調査によると、中小企業での3年以内の早期離職率は中途採用で約30%、新卒においては40%前後と多くの離職が起こっています。

中小企業における就業者の離職率
出典元『中小企業庁』人材の定着

厚生労働省の調査でも、大卒の3年以内の離職率は長らく30%と、採用難易度が高まる一方で人材の流出を防止できていない現状が続いています。

新規学卒者の離職状況
出典元『厚生労働省』学歴別就職後3年以内離職率の推移

※こちらの厚生労働省の資料の29年入社、30年入社はまだ3年経過していないため、その2年入社の数字は2年在職、1年在職の離職率となっています。

今回は、一度会社を退職した人材が再び入社する出戻り社員について説明します。

出戻り社員の意味や定義、受け入れるメリットとは

出戻り社員とは、転職などで会社を辞めて退職した後、再び元の会社に戻ってきて働く社員のことを指します。今までは一度辞めたら2度と戻ってこられない文化が常識でしたが、最近では大企業でもその意識は変わりつつあります。

出戻り社員はアルムナイとも呼ばれます。アルムナイとは、「卒業生」「同窓生」「校友」を表す英語で、企業においては「退職者、OB・OG」を意味します。企業がこのアルムナイ(元社員)と継続的に接点を持ち、再雇用する仕組みのことをアルムナイ制度、カムバック制度、出戻り制度、と呼ばんでいます。自社の風土や組織体質を理解している優秀な人材を再雇用することで、採用の失敗を回避し、即戦力としての活躍を期待するものとして注目されています。

出戻り社員の受け入れ調査結果や具体的な理由

出戻り社員について既存社員はどう思っているのでしょうか。

サーブコープが行った調査によると、出戻り社員の受け入れに賛成と答えたのは、経営者は「賛成(22.0%)」、「どちらかといえば賛成(44.7%)」を合わせて66.7%。一般社員は「賛成(26.7%)」、「どちらかといえば賛成(44.7%)」を合わせて、71.4%が肯定的な意見でした。

出戻り社員について
出典元『サーブコープブログ』「出戻り社員」を許せる?許せない? 経営者と一般社員300名に聞いてみました!

賛成意見としては「即戦力にはなり得るし、社外の世界を経験したことで新しいマーケット展開も期待できる」「子育てや介護などで、泣く泣く現場を離れなければならなかった方が戻ることは良いこと」という理由があげられました。

反対意見としては「退職した理由によっては歓迎しかねる」といった意見や、「戻ってからの人間関係を懸念する「自分の意思で退社したのに、それを受け入れるような会社は信用されなくなる」「長くいる人の士気が落ちる」という声もきかれました。

とはいえ、前向きに捉えている人が多いようです。

出戻り社員を採用する企業の割合

出戻り社員を採用する企業はどの程度いるのでしょうか?

リクルートワークス研究所の調査によると、一度離職した従業員を再雇用する制度がある企業は約半数となっています。「導入していたが廃止した」「導入しているが見直す予定」と回答した企業は5%程度であり、再雇用制度を導入した企業の満足度は高いことが想定できます。

再雇用制度の導入状況
出典元『リクルートワークス研究所』Works人材マネジメント調査2017

出戻り社員を採用するメリットについて

出戻り社員を採用するメリットには、どのようなことがあるのでしょうか?

以前も同じ業務に携わっていた場合、即戦力として期待できる点が挙げられます。多少の業務の変化はあれど、以前同じ業務に携わった経験は非常に大きいものです。また、受け入れ時の教育研修なども既に受講している可能性が高いため、再度研修を行わずに業務に携わってもらうことが可能です。

出戻り社員は、低コストで採用できることもメリットです。採用時における性格や価値観の判断もスムーズに行えるだけでなく、自社での働きぶりや他社での経験のイメージが非常に湧きやすいため、人材の見極めにかかる工数も少ないです。

良好な人間関係を構築しやすいことも挙げられます。新入社員の受け入れには、受け入れる既存社員も「新入社員がどのような人なのか」がわからないまま受け入れなければなりませんが、出戻り社員であればどのような人材なのか、多くの現場社員も認識した状態で受け入れることができます。

他社で学んだ知識を活かし、イノベーションを引き起こす可能性があることも挙げられます。他社での業務経験から、自社の業務効率化や新しいアイディアなどを出すことは、外部の視点と内部の視点を兼ね備えた出戻り社員だからこそできるメリットです。

出戻り社員を採用するデメリットについて

出戻り社員を採用するデメリットとして、既存社員からの反発が考えられます。上記の調査でも、約3割弱の従業員が出戻り社員に対して反対と回答しています。愛社精神が欠如していると考えられる、自己都合退社で会社に迷惑をかけたのに戻ってくることが理解できないなどの意見があります。出戻り社員がいることで、「今の環境が嫌だから一旦転職したい。だめだったらまた戻ってこよう」と安直に考えられる可能性もあります。そのため現職のモチベーション低下につながる恐れもあります。

即戦力になりやすい人材とはいえ、必ず即戦力になるとは限りません。他社で働いている期間に、自社の業務内容に変化があった場合には、以前の知識をそのまま使えないだけでなく、以前のやり方にこだわってしまうことでパフォーマンスが向上しなくなります。以前の業務と現在の業務の差分を理解し、自ら改善・適合できる人材であるかを見極めることが大切です。

離職理由や在職時の働き方などから採用する理由を明確に

出戻り社員とは、一度退職した会社に再び入社した社員のことを指す言葉であり、多くの企業で受け入れ体制がある一方で、良い影響も悪い影響も与えていることが報告されています。

出戻り社員を単純に受け入れるのではなく、悪い影響を与えないか、実際の退職理由や在職時の働き方などから、採用する理由を明確にすることが求められます。

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