メンタルヘルス不調における休職とは?企業が行うべき対応について

働き方改革をしてもなかなか減らないメンタルヘルス不調による休職

2019年4月からの働き方改革関連法案の一部施行に伴い、雇用する者・される者双方が「働き方改革」を意識するようになりました。厚生労働省は、働き方改革が目指すものを“働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること”としています。現状よりもっと働きやすく、各々の良い将来に繋がっていくよう、働く環境を柔軟に改善していきましょう、というものです。具体的には、長時間労働の是正、有給休暇取得の義務、働く環境の整備などがよく知られているでしょう。これらの効果として、休職・退職・離職を防ぐこともできるはずです。

しかし「仕事がつらい」「うつになって会社を辞めた」ということは、あなたの身近にも起きているのではないでしょうか。厚生労働省の調査では、過去1年間(平成29年11月1日から平成30年10月31日までの期間)にメンタルヘルスの不調によって1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は6.7%、退職者がいた事業所の割合は5.8%であったことが報告されています。

メンタルヘルス不調により連続一ヶ月以上休業又は退職した労働者数階級別事業所割合
出典元『厚生労働省』メンタルヘルス対策に関する事項 

労働者に対するメンタルヘルス対策への取り組みは重要であることが周知され、現在では、従業員数の多い企業ほど具体的な取り組みが進んでいます。同調査によると、従業員数100人以上の企業ほぼ全てが、何らかのメンタルヘルス対策に取り組んでいると回答しています。それでも尚、メンタルヘルスの不調を訴えたり、休職・退職に至る従業員は後を絶ちません。企業としてどれだけメンタルヘルスに気を配っていても、メンタルヘルス不調やそれに起因した休職を完全に防止することは難しいという現状があります。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合の推移
出典元『厚生労働省』メンタルヘルス対策に関する事項 

本記事では、メンタルヘルスの不調による休職者が出てしまった場合の、企業(人事担当、経営者)としての対応方法について説明します。

心の不調からの休職=メンタルヘルス休職

休職理由は多岐に渡りますが、健康上の問題かそうでないか、健康上の問題である場合はそれが精神的なことかそうでないか、などで分類できます。

精神的な不調から休職に至るケースを「メンタルヘルス休職(メンタルヘルスの不調による休業)」として扱っていきます。精神的な不調とは、例えば長時間労働、不当な人事評価、人間関係不和、業務内容の不適合等により強いストレスを感じ、就労や日常生活に支障を来している状況を意味します。一般的な心療内科の診断でいう「抑うつ気分」「うつ病」「適応障害」に該当する場合もありますが、必ずしも診断基準を満たすとは限りません。

厚生労働省の報告によると、怪我や癌など身体的な疾患の場合は、治療と就業を継続できる仕組みづくりが進んでいる企業もあり、働き手に負担がかかりすぎない形で復職できる可能性も高くなっているようです。しかし精神的な不調の場合は、一度休職すると、その期間中に退職するか、復帰後ほどなくして再び休職、そして退職、となる場合が多い傾向があります。退職者が出ることは、企業側にとっては大きな損失となります。まずはそもそもメンタルヘルスの不調を来さない職場環境であることが一番ですが、不調者が出た場合も、一定の休職期間を経て安心して復帰できる環境を整備することが大切です。

メンタルヘルス休職者が出た場合、どのように対応する必要があるのか、具体的に順を追って説明していきます。

事前周知と、双方の合意による進行を推奨

メンタルヘルス休職に必要な手続きや復職までの流れは、可能であれば健康なうちに整え、詳細説明と質疑応答、双方の合意、という段階を踏んでおくことが望ましいでしょう。なぜなら、メンタルヘルス不調の最中にある人は、あらゆることがうまく進みにくい状況になっていくためです。

例えば、何でもネガティブに解釈したり、思考回路が止まってしまい頷くことしかできなかったり、手続きが煩雑に思え適当に署名をしてしまったり・・・などが起こりえます。このような状況での手続きは、休職者側には不利益であり、企業側にとっては後々の訴訟トラブルにもなりかねません。

そこで、心身が健康な時にこそ、以下のような点を押さえておく必要があります。

  • どのような状況になった場合にメンタルヘルス休職と認めるか
  • 手続きに要する提出物は何か(診断書、受診証明等)
  • 社会保険の扱いや休職満了時の規則をどうするか
  • 休職中の連絡手段や生活面のルールをどう設定するか
  • どれくらいの期間を目安として休職を許可するか
  • 復職の条件として企業側は特に何を重視するか

これらを規定し、“記録に残る形で”契約として交わす必要があります。

特に小規模の事業所の場合は、雇用側は「常識的に考えると〜」「採用時に口頭で伝えたように〜」など言いたくなるかもしれませんが、正式な書面に明記し契約として残すことが、後のトラブルを防ぐ意味でも非常に重要です。

段階に合わせた対応を着実に

休職〜復職の具体的なステップとして、以下の5つを紹介します。それぞれの段階で特に取り組むべきことを示しています。

第1段階:休職の開始

  • 休職を申し出た理由は何か(労災に該当していないか)
  • いつから休職を開始するか
  • 休職前の引き継ぎは完了したか
  • 休職中に対応を求める場合はどうするか

休職を悪用する(勤務継続が可能であるにも関わらず何らかの理由をつけ休職を申し出る)ことを防ぐためにも、休職を認める要件を明確にしておくことが望ましいです。やや冷淡ですが「休職は解雇を猶予するための制度である」という点を共通理解しておくことも重要です。

「ゆっくり休んで戻って来てね」というよりも「しばらく休んでも戻れなければ辞めてもらう」という手続きを伝えるのは心苦しいかもしれませんが、企業の運営・経営を維持するには、厳しさも必要です。

第2段階:医療との連携

  • 主治医の判断はどのような状況か
  • 主治医の診断書をどう扱うか
  • 主治医と産業医の連携が可能か
  • 本人の復職希望と医師の見解に相違はないか

基本的生活に支障がない程度に回復した一方、就労においては支障が残る場合は、職場内で十分に検討しましょう。就労可能レベルで回復したのか、医師や心理士に確認を求める必要があります。

主治医と産業医の見解が異なる場合は、業務内容や職場環境を把握している者も同席し協議することが望ましいでしょう。

第3段階:復職計画の作成

  • 本人は復職に関しどのような意向であるか
  • リワークプログラムの受講、模擬出勤、時短出勤等の取り組み状況はどうか
  • 復職先の受け入れ体制は整っているか
  • 担当予定業務に見合う能力があるか、懸念点はないか
  • 復職後に要する配慮、監督者の選定、労働時間や給与に双方納得しているか
  • 休職に至った原因は解決したのか

復職計画を立てる際には、本人の意向だけでなく、主治医、産業医、復帰後の現場管理者、同僚等の意見も取り入れることが望ましい場合もあります。可能であれば、家族らからも様子を伺い、現実的に可能な計画を立てていくと良いでしょう。

本人が早く復帰しなければと焦る可能性もあるため、具体的かつ段階的で、現実的なプランを伝え、本人が安心して取り組めるようにサポートしましょう。

第4段階:復職の決定

  • 今一度、復職の要件を満たしているか
  • 本人の経過や現状をどの程度現場に伝え理解を得るか
  • 配慮をする側もされる側も不平不満のない決定事項になっているか
  • 服薬・通院等が業務に支障を来す場合どうするか
  • 今後も定期的な受診の意向があるか

特にうつ病を発症していた場合は、本人が気丈に回復をアピールする可能性も考えられます。一見回復している際も、定期的な受診を義務付ける(受診証明の提出を求める)、もしくは推奨する(受診しやすい環境を作る)などが重要になります。

第5段階:復帰後のケア

  • 勤務状況・業務効率や成績が適正か
  • 問題が再発していないか・新たな懸念事項が発生していないか
  • 第3段階で作成した復職計画に添っているか・見直す必要はないか
  • 休業に至った原因の再燃や小さな契機は起きていないか
  • 再びメンタルヘルス不調を来した場合に早期に相談できる環境があるか

休職により周囲に迷惑をかけたと感じている従業員は、復帰後に張り切って仕事し、再び無理を募らせ不調を来すことがよくあります。

復職計画を見直し修正することを容認し、問題には早期対応を心がけることが、復帰後の就労継続には大切です。

全社が準備しておいて損なし!ぜひ早期対応を

メンタルヘルス休職とは、ストレスによって精神的・身体的不調に陥ってしまった従業員に対して、復職を前提として一時的な休職期間を設ける制度です。復職を前提としているため、休職期間の満了を迎えそのまま退職したり、一度復帰したもののすぐに再び休職したりすることは避けたいものです。そのために、5つの段階に応じた具体的ケアが必要となります。

メンタルヘルス休職は、充実した労働条件や従業員のメンタルケアに配慮の行き届いた企業であっても、本人のストレス耐性や職場の人間関係、本人の特性と業務内容の不一致など、さまざまな要因によって発生します。残念なことですが、全ての従業員が毎日快適に絶好調に働くことは、現実的には難しいものです。

メンタルヘルス休職者が出てから対応を構築しようとすると、不備によるトラブルが生じ、休職者も対応者も疲弊が募ったり、企業側の大きな損失となってしまいます。会社の規模や従業員数、すでに実施しているメンタルヘルス向上のための取り組みに関わらず、メンタルヘルス休職のための制度を早期に整備しておくことは、とても重要なのです。

安心して仕事できる環境整備の一つとして、メンタルヘルス休職に関するルールの設定や、復職後に実現可能なフォロー施策について、しっかりと準備しておきましょう。

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