心理的安全性を解明したGoogleのプロジェクト・アリストテレスとは?

心理的安全性とは?Googleのプロジェクト・アリストテレスが見つけた労働生産性との関係とは?

心理的安全性とは、チームの生産性を高める重要な要素として、Googleが2015年に発表したことで注目を集めた言葉です。

Googleは、生産性の高いチームが持つ共通点を見つけるために、2012年に調査を開始しました。「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられたこの調査において、何百万ドルもの資金と約4年の歳月を費やした結果、心理的安全性が労働生産性を高める重要な要素であると結論づけました。

リクルートマネジメントソリューションズが2018年1月に発表した「心理的安全性に関する実態調査」によると、3名以上の部下をマネジメントする管理者やリーダーのうち「心理的安全性」という言葉を知っている人は53.5%と過半数を超えるものの「内容の詳細までよく知っている」「だいたいの意味を知っている」と答えた人は、合わせて25.6%でした。

「心理的安全性」という言葉の認知度
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』職場での心理的安全性に関する実態調査

心理的安全性の意味を知っている人は4人に1人程度である一方で、同調査における「自分の考えや感情を安心して気兼ねなく発言できる雰囲気」を必要だと考えている管理者やリーダーは、75.2%に登りました。

「心理的安全性」の必要度
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』職場での心理的安全性に関する実態調査

リクルートマネジメントソリューションズの調査結果から、心理的安全性という言葉の認知度は低いものの、職場において心理的安全性は必要であると考えている人が多いことがわかります。

今回の記事では、Googleのプロジェクト・アリストテレスについて、プロジェクトの概要や目的、研究結果から導き出された心理的安全性と労働生産性との関係をご紹介します。

プロジェクト・アリストテレスとは?心理的安全性と労働生産性との関係について

Googleのプロジェクト・アリストテレスについて、プロジェクトの概要や目的、研究結果から導き出された心理的安全性と労働生産性との関係を、順を追って詳しくご紹介します。

プロジェクト・アリストテレスの概要や目的とは?

プロジェクト・アリストテレスとは、何百万ドルもの資金と約4年の歳月を費やして実施された、2012年にGoogleが開始した労働改革プロジェクトです。

プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)は、アリストテレスの言葉「全体は部分の総和に勝る」にちなんで名付けられ、Googleの「人員分析部(People Analytics Operation)」によって実施されました。

プロジェクト・アリストテレスの目的は「生産性の高いチームの条件は何か」という問いに対して、答えを見つけ出すことです。

Googleには様々な業務に携わる数百のチームがあるとされていますが、生産性の高いチームもあれば、低いチームもありました。生産性の高いチームが持つ共通点から、生産性向上の成功要因を見つけ出し、より生産性の高い働き方を見つけることを目指したのです。

Googleは、社員同士のコミュニケーションを中心に、社員の仕事ぶりを徹底的にモニタリング・分析・検証しました。分析や検証は、社内で働く統計の専門家やエンジニアだけでなく、外部から組織心理学者や社会学者などの専門家を人員分析部に召集して行われました。

プロジェクト・アリストテレスが導き出した心理的安全性と労働生産性との関係とは?

プロジェクト・アリストテレスの人員分析部は、チームの生産性向上に重要なのは「高い能力を有したメンバーを集める」ことよりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。

Googleは研究結果として、2015年11月に自社の情報サイト「re:Work」で「チームを成功へと導く5つの鍵」を発表しました。発表の中でGoogleは「心理的安全性は(成功するチームに含まれる単なる1要素ではなく)その他の4つの力を支える土台であり、チームの成功に最も重要な要素である」と述べています。

「チームを成功へと導く5つの鍵」に含まれる5つの要素について、詳しくご紹介します。

  1. 心理的安全性(Psychological safety)
  2. 信頼性(Dependability)
  3. 構造と明瞭さ(Structure & clarity)
  4. 仕事の意味(Meaning of work)
  5. インパクト(Impact of work)

1.心理的安全性(Psychological safety)

心理的安全性(Psychological safety)とは、チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対して弱い部分をさらけ出すことができるかという要素です。

心理的安全性が高いチームでは、自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露しても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じることができます。メンバー全員が失敗を恐れずに発言・行動できるため、有意義な議論や積極的な協力が日常的に行われ、チームの生産性が向上します。

2.信頼性(Dependability)

信頼性(Dependability)とは、チームメンバーが互いを信頼し、他のメンバーが仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると信じられるかという要素です。

信頼性が高いチームでは、チームのメンバー同士がお互いに、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げてくると信じることができます。メンバー全員が自分の仕事に強い自負と責任感を持てるようになるため、半端な仕事や責任の押し付け合いがなくなり、チームの生産性が向上します。

3.構造と明瞭さ(Structure & clarity)

構造と明瞭さ(Structure & clarity)とは、チームの役割・計画・目的がハッキリしており、自身や他のメンバーがやるべきことが明確かという要素です。

構造と明瞭さが高いチームでは、チーム全体の目標や各メンバーに求められている役割、達成までのプロセスやメンバーの行動がもたらす成果が明確です。メンバー全員が自分の役割と全体への影響を理解しているため、報告・連絡・相談などの情報共有がスムーズに行われ、チームの生産性が向上します。

4.仕事の意味(Meaning of work)

仕事の意味(Meaning of work)とは、チームメンバー全員が、今の仕事が自分にとって意味があると感じているかという要素です。

仕事の意味は属人的な要素であり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によって様々です。

仕事の意味が高いチームでは、仕事そのものや仕事の成果に対して、意味や目的を感じられます。メンバー全員が自分の仕事に意味や目的を持って取り組むため、仕事へのモチベーションが高く保たれ、チームの生産性が向上します。

5.インパクト(Impact of work)

インパクト(Impact of work)とは、チームメンバー全員が自分の仕事について意義があり、良い変化を生むものだと思っているかという要素です。

インパクトが高いチームでは、メンバー個人の仕事がチーム全体の目標達成に対して強い意味を持ち、チームに貢献していることを実感できます。メンバー全員が自分の仕事に誇りを持つことができるため、仕事へのモチベーションが高く保たれ、チームの生産性が向上します。

チームの生産性に対して影響力の低い要素とは?

プロジェクト・アリストテレスの研究では、チームの生産性向上につながる要素を調べていく中で、チームの生産性にそれほど影響していない要素も明らかにされました。

  • チームメンバーの働き場所(同じオフィスで近くに座り働くこと)
  • 合意にもとづく意思決定
  • チームメンバーが外交的であること
  • チームメンバー個人のパフォーマンス
  • 仕事量
  • 先任順位
  • チームの規模
  • 在職期間

先任順位や在職期間は、日本でも年功序列制度が見直され始めているため、身近で分かりやすい例でしょう。しかし「チームメンバー個人のパフォーマンス」がチームの生産性に対して大きな影響力を持っていないという研究結果は、世界中に衝撃を与え、集団的知性の重要性を認識させる大きなきっかけになりました。

チームメンバー個人のパフォーマンスはチームへの影響が低いという結果は、個人の力の合計とチームの力はイコールではなく、チームの生産性向上のためには集団的知性(Collective Intelligence)へのアプローチの方が効果的であると示しています。

ただし、チームの生産性への影響が低いとされた項目については「Google以外のどの組織でも同じであるとは限らない」と補足されています。Googleの分析ではチームの規模の影響は低いとされましたが、人数の少ない(10人未満の)チームの方が人数の多いチームよりも成功しやすいという研究成果もあります。

プロジェクト・アリストテレスが結論に至った経緯とは?

プロジェクト・アリストテレスが「チームを成功へと導く5つの鍵」という結論に至るまでの経緯について、詳しくご紹介します。

プロジェクト・アリストテレスのリサーチチームは、チームの生産性向上の成功因子を見つけるために、成功するチームの共通点として考えられる可能性の全てをリストアップし、多くの仮説を立てていきました。

リサーチチームは、100以上のプロジェクトチームに対して実施したモニタリング結果を元に、チーム編成やチームワークに重点をおいた分析作業と仮説の検証を行いました。しかし、データ分析を得意とするGoogleが召集した人員分析部の力を総動員しても、チーム編成やチームワークと労働生産性の相関性は、明確になりませんでした。

チーム編成と労働生産性の相関性が明確にならなかったことから、チームのメンバー編成だけではなく、チーム内の不文律や暗黙の了解(ルール)といった集団規範に着目しました。同時に、集団心理学に関連する学術論文の読解といった、学問的視点からのアプローチも試みました。

プロジェクト・アリストテレスのリサーチチームが調査を進めるうちに、集団心理学関連の文献の中には、多くの有用な情報が詰まっていることがわかりました。特に、カーネギーメロン大学とマサチューセッツ工科大学、ユニオン・カレッジの心理学者や研究者たちで結成された研究チームの研究記録は、チームの生産性を高める成功因子の発見に大きく貢献しました。

プロジェクト・アリストテレスの人員分析部のメンバーは、3大学の共同研究チームの学術論文とプロジェクトアリストテレスの実施データを見比べることにより、生産性の高いチームの活動内容から共通点を見つけ出すことができたのです。

Googleによるプロジェクト・アリストテレスの研究成果を、自社の生産性向上に活用しよう!

心理的安全性とは、チームの生産性を高める重要な要素として、Googleが2015年に発表したことで注目を集めた言葉です。

Googleは、生産性の高いチームが持つ共通点を探し出すために、2012年に「プロジェクト・アリストテレス」を開始しました。

プロジェクト・アリストテレスとは、何百万ドルもの資金と約4年の歳月を費やして実施された、Googleが開始した労働改革プロジェクトです。プロジェクト・アリストテレスの人員分析部は、チームの生産性向上に重要なのは「高い能力を有したメンバーを集める」ことよりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。

Googleによるプロジェクト・アリストテレスの研究結果を参考に、チームの心理的安全性を確保した上で「チームを成功へと導く5つの鍵」で示された他の4要素を満たすことで、自社の生産性向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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