労働生産性が低い理由とは?日本企業の生産活動から考える

日本の低い労働生産性は、本当に問題視すべきトピックか

「日本の労働生産性は、世界各国と比較した場合にそれほど高くない(低い)」と言われています。実際に、2017年版の日本の労働生産性は、次のような特徴があります。

  • 日本の時間あたりの労働生産性は46.0ドル(4,694円)
  • OECD加盟35カ国中20位
  • 主要先進国である7カ国の中で見れば最下位(米国の3分の2の水準)

労働者1人あたりの労働生産性 時間あたりの労働生産性
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

日本国内での労働生産性を見ると、2016年度の調査では過去最高の労働生産性となっています。しかし1955年から1995年までは右肩上がりだった労働生産性も、1995年から2016年まではほとんど横ばいで推移しています。

日本の労働生産性の推移
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』日本の労働生産性の推移

国際社会において、日本の存在感が非常に大きい製造業について見てみましょう。2000年までは世界1位でしたが、日本の労働生産性も伸びていますが、他国の労働生産性の伸びが凄まじく、2015年には14位まで低下しています。

製造業の名目労働生産性水準
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

1995年以降の約20年間の市場動向としては、パソコンの普及によるITの利活用、グローバル化における市場競争の激化、経済不況やデフレによる日本経済の停滞などがあります。物がない時代では「ものを作る」ことが中心だったのに対し、現在は「他社との差別化をする付加価値を作る」ことが中心となりました。

今回は企業の生産活動にクローズアップして、日本の労働生産性が低い理由について掘り下げてみます。

日本企業の労働生産性が低い理由とは?

日本企業において労働生産性の向上を目指す上で、どのような障害があるのでしょうか。いくつか、考えられる理由を挙げてみましょう。

プロセスを重視する人事評価

一概にはいえませんが、日本の人事制度は、成果よりもプロセスを重視する内向きの評価体制がいまだ主流です。残業することを美徳とする企業内文化も多くの企業で蔓延していることもあり、結果、適正な人事評価がされていない傾向にあります。そのため、労働時間1時間当たりで生産量を計算する労働生産性の低下につながっていると考えられます。

年功序列や終身雇用ありきの人事制度で、適当でない人物の昇進・昇級、また組織の中では、不必要な会議や、レポート作成など本来の業務以外の雑務の多さなども労働生産性向上の障害となっていると考えられます。

残業ありきでの報酬を考える就業者の意識

残業とは、業務がキャパシティーを超えた場合に発生するなど、マイナスの要因で起こるものですが、日本の労働者の少なくない層が「残業代を稼ぐことで手取りを増やしたい」という意識をもっており、業務の効率化などに大きな問題になっていると言われています。

残業ありきという意識は労働生産性の低下はもちろん、仕事の効率化や時間管理術などを身につける機会損失にもつながります。

不十分なマネジメント体制

日本人の管理職や経営者の意識も、労働生産性低下の大きな原因になっていると言われています。現場の残業ありきで予算やプロジェクトを計画するなど「無理をすることが美徳」と考えている層は、働き方が多様化する現在においても、いまだ一定数存在します。

管理者が効率を重視しない、もしくは人員増強によるコストよりも既存従業員の残業代の方が低いという意識から来るものと考えられています。

経営者やマネジャーのマインドセットは、企業の労働生産性に多大な影響を与えるテーマです。過度な値下げ競争だけでは、このグローバルで変化の速いビジネス環境を勝ち抜くことは困難です。

ビジネスの場で、自社の高付加価値化が実現できなければ、一人当たり付加価値も低い水準で留まり、従業員の所得向上も実現できません。結果として、優秀な人材を取り込むことや、弾力ある組織を作ることは困難となるでしょう。

あなたの組織の労働生産性を把握していますか?

競合他社と比較して、自社の労働生産性が低い場合、そこには必ず何かしらの理由があります。今回ご説明した理由をはじめ、原因となるような事象や課題を自社でも抱えていないか、見直しを行うことから、まずは始めてみることをオススメします。

重要なのは「労働生産性を向上させる」ことをマストの目的として持っておき、その手段の一つとして、マネジメントや評価システムの見直しや、社員のスキルアップのサポート、組織のコミュニケーションの改善などを講じることです。

誰もが安心して働き続けることができる、魅力ある職場づくりを推進していく姿勢が今、求められています。

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