面接の質問で、協調性の見極めが難しい理由
協調性とは、性格を科学的に記述する「ビッグ・ファイブ理論」によると、共感能力とも呼ばれ、他人の心の状態にどれだけ関心があるかという指標になります。優しさや思いやり、従順さなどの特徴も含み、集団の調和を大切にする日本においては重視されがちです。
面接で応募者の協調性の実態を見抜くことは、非常に難しいとされています。理由は2つあって、1つは協調性の定義が曖昧で人によって異なることと、もう1つは、採用面接ではどんな応募者でも、基本的には「自分は協調性がある」とアピールするためです。
47%の企業が、採用面接で協調性を重視
リクルートキャリアの就職白書2019によると、面接は99%の企業が実施する採用手法です。従業員規模が多くなるほど、実施率も上がります。
面接の実施回数は1回に限りません。doda「採用担当者のホンネ-中途採用の実態調査」によると、面接実施の回数は2回が最も多く、面接回数は2回と回答した企業の割合は67%でした。次いで3回(25%)、1回(6%)、4回以上(2%)が続きます。 大企業ほど回数が多い傾向で、さまざまな役職者が面接を段階的に実施しているようです。
出典元『doda』「面接は平均何回?」採用担当者のホンネ−中途採用の実態調査
経団連の新卒採用に関するアンケート調査結果によると、「協調性」を選考で重視する企業は47%にものぼることが分かりました。
出典元『日本経済団体連合会』2017年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
採用面接で協調性を見抜くためには、何をもって協調性があると判定するべきか、予め社内で目線を合わせておくことが非常に大切だといえるでしょう。今回の記事では、面接で協調性を見極められる質問について説明します。
面接で見極めるべき、協調性の意味や定義
協調性とは、性格を科学的に記述する「ビッグ・ファイブ理論」にると、共感能力とも呼ばれ、他人の心の状態にどれだけ関心があるかという指標になります。優しさや思いやり、従順さ、慎み深さ、利他主義などの特徴を含みます。
注意すべきは、ただ単に調整や順応が上手にできる能力ではないということです。多数派に従い妥協することと同義でもありません。自分より相手や周囲のことを一番に考え、行動できる能力であり、チームで物事を成し遂げていく性質の高低を指すため、共感能力のほかチームワークとも呼ばれます。
面接で協調性を見極める方法
面接で協調性を見極める方法として効果的なのは、応募者が協調性を発揮した具体的なエピソードを尋ねることです。過去の行動について質問する面接手法「行動面接(STAR面接)」を用いることで、協調性は見抜きやすくなるでしょう。
「協調性とは何か」という起点となる質問を投げかけて、なぜそう思うのか理由、背景やエピソードなど、フォローアップとなる質問を予め用意して掘り下げていく面接手法「構造化面接」を用いることもおすすめです。
いずれの場合でも、まずは自社が定義する「協調性とは何か」を明確にし、それに沿った質問を用意することが肝になります。
面接で協調性を見極める具体的な質問例
面接で協調性を見極めるための、具体的な質問例を5つ紹介します。
1.「協調性についてどのように考えていますか?」
まずは協調性に関する応募者の考えを聞きます。
「協調性とは何だと思いますか?」などの質問でもよいでしょう。
2.「なぜそう思うのですか?」
応募者の発言の背景、意図、理由について質問して、相手の価値観を深堀します。
3.「そのように考えるようになった、具体的なエピソードをお聞かせください」
協調性に関する応募者の過去の体験について聞きます。
発言に整合性があるか、過去に協調性を発揮したどのような実績があるかを探ります。
4.「あなたにとって協調性とは、〜〜〜」ということですね。
協調性に関する応募者の価値観について整理し、相手の自己理解度を確認することで、入社後の行動予測につなげます。
同時に、協調性と付随して応募者が発揮しがちな能力について探ります。(例えば、対話力、リーダーシップなど)
5.「あなたが協調性を発揮できたと感じた時、周囲からは何と言われましたか?」
周囲の評価や反応を尋ねることで、チームや組織への貢献度、周囲からの評価を把握するとともに、応募者の独善的な考え・行動でないかどうかを確かめます。
面接で協調性を見極めるメリットについて
面接で協調性を見極めるメリットは、社内の人間関係を良好に保ち、あるいは改善を促すことができる点です。組織メンバーは働きがいを感じやすくなり、定着率向上にもつながるでしょう。
協調性は性格の一部であるため、採用段階で見極める
協調性は、心理学において最もメジャーであり、多くの適性検査のベースともなっている「ビッグファイブ理論」において、性格の1要素であると定義されている項目です。性格は幼少期に形成され、入社後の教育研修などでは変化させづらい要因であるため、協調性を重視するのであれば入社前の採用面接段階で見極めることが望ましいでしょう。
注意しなければならないのは、協調性が低いことがコミュニケーションスキルが低いわけではないことです。コミュニケーションスキルは、入社後の教育研修で育成できるスキルであるため、自社におけるコミュニケーションスキルと協調性の定義を明確にし、採用段階でどの程度重視するのか、どのように見極めるのかを人事部だけでなく、現場社員にもヒアリングをすることで、共通認識を持つことが大切です。
応募者の協調性を見極めるためには、適性検査の活用がオススメです。ビッグファイブ理論をベースとして作成された性格適性検査の場合、協調性の名前の違いはあれど、協調性を数値化することができます。自社に求められる協調性の程度を数値化しながら、採用面接で「性格適性検査の結果」を裏付けるエピソードを引き出して確認することが、採用面接における協調性を見極める方法として、最も精度が高くなる方法といえるでしょう。