インターンシップを活用していますか?
日本の経済が堅調な状態が続いているのに比例して、売り手市場も進んでいる昨今の新卒採用市場。優秀な人材をいかに集め就職に結びつけるか。人材との早いタイミングでの接触、また、自社で働くメリットを多方面からアピールできる場として企業・学生双方から注目を集めているのが『インターンシップ制度(プログラム)』です。
新卒採用は、少子高齢社会により、年々新卒学生の数は減少しています。ベネフィット・ワンの調査では2007年に80万人いた就職を希望する学生は、2018年には70万人を切り、減少傾向は継続しています。
出典元『ベネフィット・ワン』就職希望新卒者(大卒、専修卒、高卒)の推移予測
ディスコの調査によると、採用人数を減少させる企業よりも増加させる企業の方が多く、採用活動が厳しくなると回答した企業が約9割にものぼります。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』2019年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査
近年では多くの企業がインターンシップを実施し、多くの求職者がインターンシップに参加しています。ディスコの調査によると、学生のインターシップの参加率は86.2%にもなり、ほとんどの学生が参加していること、企業の実施率も74.9%と、4社に3社はインターシップを実施してます。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』インターンシップに関する調査
今回は、企業の人材採用戦略にとって、不可欠な存在となりうるインターシップについて説明します。
インターンシップとは?あくまで職業体験制度である
インターンシップとは、特定の仕事の経験を積むために学生が企業で実際に修行することができる『職業体験制度』のことです。日本においては多くの場合、4年制の大学では3年次の春や夏季などの長期休暇中に実施されることがほとんどで、3年生の秋から本格化する就職活動に先駆けて就業体験をすることで、就職活動本番でのミスマッチを防ぐ目的もあります。
欧米諸国のインターンシップでは、学生を無給で受け入れる企業が多いのと同時に、大学から単位認定を受けられることもあります。日本でも近年は、欧米諸国のような形式のインターンシップ制度を設けている大学や企業も多く、一部では、有給で参加するものもあります。
現在は日本政府や大学の後押しなどもあって、インターンシップ制度を導入する企業は非常に多くなっています。企業にとっても学生にとっても、インターンは多くの「メリット」があると考えられているのです。
企業がインターンシップを実施する目的やメリットについて
実践的で効率的な人材育成につながる
実際に就業することで、社会への適応能力の高い人材の育成に直結します。
企業自体への理解の促進や魅力を発信できる
インターンシップを通して、大学と企業の接点が増えることで、双方の状況を理解する機会になり、さらに企業の実態について学生の理解を促すきっかけになります。社員にはない、学生という属性の新しい視点やアイデアが、企業の実際のサービスなどに展開できる機会につながります。
大学など教育機関への産業界のニーズを伝える機会になる
インターンシップでの連携で、大学など教育機関に企業側(産業分野)のニーズを伝えることができ、それをさらに、教育機関の教育に反映させていくことにつながります。
求職者がインターンシップに参加する目的やメリットについて
「業界研究」を丁寧に掘り下げる機会になる
社会にはさまざま業界が存在しています。インターンシップを通して、自分がどの業界に向いているかのか、そもそも社会にはどういった業界があるかを知ることができます。1Dayインターンシップや短期インターンシップなど、短期間のインターンシップでも非常に有益です。
職種研究に繋がる
世の中の仕事にはさまざまなもの・役割があります。会社によって強みとなる職種等も異なりますし、一人の社員が「経理」と「人事」二つの職種を兼務する会社もあります。同じ業界でも、会社によって人事計画も異なります。
自分がどのような「業界」「職種」に興味があるのかを突き詰めて考えるためにもインターンシップは有効です。「職種」ごとの働き方を体験できるという意味では、職種研究に大きなメリットがあるのです。
自己成長に繋がる
企業側は、インターンシップを通して、学生の知識や経験値を向上できるよう設計したものがほとんどです。今までの学生は、社会人になってから新卒研修などを通して仕事にまつわる知識を身につけますが、インターンシップに参加することで、学生のうちから即戦力として活躍できる能力を身につけることができます。
就活にも非常に有益ですし、実際の就職活動の選考時にも自分の評価をあげることにもつながるかもしれません。
就職活動に有利になる
インターンシップに参加すれば必ず就職に有利になる、というわけではありませんが、結果として有利になるケースは多々あります。期間中、業界や職種の理解を深め仕事に直結するスキルを身につけることは、社会人になってからも大きな武器になります。
インターンで成長できた場合、その後の就活でも大きなアドバンテージになるのです。
インターンシッププログラムの種類や内容について
「インターンシップ」と一口に言っての、手法や方法は複数あります。
大きく分けると、短期間の「セミナー型」「課題解決型(ワークショップ型)」、長期におよぶ「職務実践型」の3つがあります。
1.セミナー・見学型(短期型)
職場体験や会社の見学などを1日~数日間実施するもので、社員と交流会が行われるケースなどもあります。
セミナー・見学型のメリット
- 短期間かつ会社説明会の要素が強いので、社員のリソースをそれほど使うこともなく現場の理解を得やすい
- 一度に多くの学生を集めることができるので、日程の調整もしやすい
セミナー・見学型のデメリット
- 期間が短く、企業側からの一方向の発信で終わるケースが多いため、学生側の満足度はそれほど高くない。
- 企業と参加者双方の理解が十分進まない点も懸念される。
2.ワークショップ・プロジェクト(短期型)
グループである課題に取り組み、検討やディスカッションなどのワークショップを行うプログラムです。実施期間は数日間~1、2週間程度で、選考過程の一つとして実施する企業もあります。
ワークショップ・プロジェクトのメリット
- 面接より時間をかけて個人の思考回路や傾向を見る機会になり、ミスマッチを防ぐのに有効
- 企業と学生双方の対話の機会も多く、相互の理解を深めやすい
ワークショップ・プロジェクトのデメリット
- プログラムにより、各部署への社員への協力が必要で、職場内の理解がステップとして必須
- 応募多数の場合に事前の選考が必要な場合もある
3.職務実践型(長期型)
職場に実際に学生を配置し、1か月~数か月間実務に取り組んでもらうもので、個人のスキルや傾向、コミュニケーション能力などをみることができるとして、特に研修などのリソースを割きにくいベンチャーや中小企業が注目しているプログラムです。
職務実践型のメリット
- 企業、学生とも、長期間実際の仕事を通してお互いの理解を高めることができるため、ミスマッチによる辞退などを軽減することができる
- インターン生が戦力となることで、現場の生産性の向上につながる
- 人を育てるという意識が職場内を活性化させ、組織内のコミュニケーション向上にもつながる
- 具体的に早いうちから自社や業界への興味を持ってもらいやすい
職務実践型のデメリット
- 費やしたリソースや時間と、結果(就職)が結びつかないこともある
- 社内を公開するため、見せても良い場所や内容など、セキュリティーレベルを事前に仕分けることが必要
インターンシップについての理解を深めよう
インターンシップは、受け入れる企業側にコストが発生するものの、求職者・企業ともに多くのメリットが存在します。
一方で政府からは「選考を兼ねたインターンシップや会社説明会と同様のインターンシップ」の禁止要請をしており、現在は要請だけですが、禁止要請が形骸化されれば、罰則化などの実行力を伴う形でインターシップの制限がかかる可能性があることに留意しておく必要があるでしょう。