年間8000件ほどの倒産が起きている
倒産とは、一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指します。
帝国データバンクの調査によると、2020年の倒産件数は7809件で、2000年度以降2番目の低水準でした。ここ数年、倒産件数は減少傾向ではあるものの、毎年約8000件の倒産が起きています。
倒産とは、企業が債務超過に陥って経済活動を継続できなくなる事態を意味します。近年、資産が債務を上回っている状態で、経営の余力を残しているにもかかわらず、自ら事業の継続を断念する「隠れ倒産」が増加しています。
人材不足や後継者難などが要因で、休・廃業や解散にいたる「隠れ倒産」は、日本経済の大きな懸念材料として浮上しています。
隠れ倒産の原因や対策方法について説明します。
隠れ倒産が起きる原因や対策方法とは?
隠れ倒産とは、資産が負債を上回る資産超過の状態で、経営の余力を残しているにもかかわらず、会社清算に追い込まれることを指します。法的整理や私的整理の倒産に該当しないため、統計上の「倒産」にはカウントされないものの、事業継続を断念せざるを得ない、企業活動を継続できない、という意味では倒産と同じため「隠れ倒産」と呼ばれます。
倒産件数は年々減少傾向であるものの、休廃業・解散は増加傾向にあります。資産に余力があっても人材不足や後継者難などが原因で、自主的に会社を休業・廃業する、解散するといった「隠れ倒産」の増加は、日本経済の懸念材料であることは間違いありません。
倒産は本当に減っているのか?
隠れ倒産といわれるぐらいですから、その数字や個々の事情を正確に把握することはできません。
東京商工リサーチの調査によると、2020年に全国で休廃業・解散した企業は4万9,689件(前年比14.6%増)でした。2000年の調査開始以降で最多を記録しています。休廃業・解散と倒産した企業数の合計は、判明分で年間約5万7,000件に達し、全企業358万9,000社の1.6%を占めています。
実際の倒産件数は減少傾向にあるものの、休廃業・解散した企業数は増加しています。この原因として「後継者問題」があると考えられています。
休廃業・解散した企業の代表者の年齢は、60代以上が8割(構成比84.2%)を超えています。「後継者が見つからない以上、廃業するしかない」と考える経営者は多く、経営者の高齢化や後継者難を背景とした休廃業・解散が目立ってきていると言われています。
参考URL『株式会社東京商工リサーチ』2020年「休廃業・解散企業」動向調査
隠れ倒産の原因とは
「隠れ倒産」と言われる休廃業・解散は、なぜ起こるのでしょうか?
原因として「後継者不足」「経営の先行き不安」といった原因が主に挙げられます。
先に述べたように、休廃業・解散した企業の代表者の年齢は、60代以上が8割(構成比84.2%)を超えています。国内の65%以上の会社が後継者不在問題に直面しているとも言われており、特に中小企業の後継者難はすでに大きな問題となっています。後継者となるお子さんがいない、お子さんがいても他の仕事に就いている、といったことが考えられます。
人口減少などの社会情勢により、事業の成長を見込めないなど、経営の先行きに不安を感じ、お子さんに事業を引き継ぐことを断念している経営者の方もいらっしゃいます。
不安を抱えた中小企業の経営者が、従業員の将来を考え、取引先や銀行などに迷惑をかけないうちに事業を整理しようという意識が働いていることが、隠れ倒産を増加させている原因ともいえるでしょう。
隠れ倒産の対策方法について
人材不足に起因する隠れ倒産リスクを軽減するためには、雇用している従業員の離職を防ぐとともに、採用・育成を経営の根幹に据え、徹底的な戦略見直しを図る必要があります。
「後継者が見つからない以上、廃業するしかない」と考える経営者は多くいますが、破産せず廃業できるような会社であれば、M&Aといった方法で会社を残すこともできます。
日本経済・社会という大きな枠組みで後継者問題をとらえたとき、隠れ倒産といった形で「会社を閉める」ことは、雇用、技術・ノウハウを失うことでもあります。経営の余力を残している状態ならば、早くから会社存続の道を探ることが経営者としての務めでしょう。
隠れ倒産にならないために早期の対策を!
「隠れ倒産」とは、会社の資産が債務を上回っている状態でありながら、倒産以外で事業継続を断念する休廃業・解散を意味する言葉です企業の倒産件数は、ここ数年減少傾向が続いているものの、隠れ倒産は増加傾向にあります。
隠れ倒産の主な原因は人手不足や後継者難、経営の先行き不安です。自社が隠れ倒産に追い込まれる前に、早くから離職防止や採用戦略の見直しに取り組みましょう。