社内コミュニケーションに課題を感じている企業はおよそ8割
健全な組織を維持する上で、さまざま要素が必要ですが、その一つに「社内コミュニケーション」があります。その重要性はほとんどの企業で認識しているところですが、人材育成や弾力のある組織作りの上で、常に課題になっているのも事実です。
HR総研が2016年に実施した調査にも顕著に表れています。「社内コミュニケーションに関するアンケート」によると、小規模な会社から大手まで企業規模に関係なく、調査対象の実に80%が「課題になっている」と回答しています。
また、「コミュニケーション不足が業務の障害となっている」という認識も、90%以上の企業が有しているという結果も……。さらには、改善施策を講じていない・改善施策が上手くいっていない企業も8割以上存在するなど、「社内コミュニケーション」は企業で根深い組織問題となっていることが見て取れます。
出典元『HR総研』「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告
社内コミュニケーション活性化のメリット・デメリット
組織で働く誰もが、必要と感じている「社内コミュニケーション」ですが、それを推進するメリット・デメリットについても押さえておきましょう。
社内コミュニケーション活性化のメリット
スムーズな情報共有の実現
日頃から社内のコミュニケーション体制が整備されていない職場では、当たり前にするべき報告や連絡が滞っているものです。
円滑な情報共有は、組織全体として業務効率と生産性の向上を実現するもの。「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」にほころびがあることで、思いもよらないリスクにつながることもあります。
社内コミュニケーションが活発で、ホウレンソウが徹底されている職場環境があれば、「伝えていない」ことによるリスクを回避することができます。情報共有は、クライアントやカスタマーへの対応やコンプライアンスに対する意識レベルなどへの統一にも影響する非常に重要なポイントです。
社員のモチベーションの向上
コミュニケーションが円滑に進むことは、何より、そこで働く社員のモチベーションの向上につながります。
前述の「情報共有」に関連しますが、情報のスムーズな共有は、そのまま業務の効率化につながり、時間のロスや「伝え忘れ」などの抜け漏れリスクを軽減します。生産性のアップとの相乗効果で、社員の仕事に対する姿勢もより真摯なものになります。
組織全体の意識の統一と、発展的な業務の実現
社内コミュニケーションが活性化するということは、そこで働く人々が、会社の方針や企業理念などへの共通の認識を新たにできることでもあります。
意識の統一性は、企業としての生産力・発展性に寄与するもの。そういった企業風土が形成されることで、議論や提案などもさらに活発化し、新しいサービスの創造などにもつながります。
離職率の低下
活発な議論ができる組織、良好な人間関係など、誰もが働きやすい職場となることの最大の効果の一つは「離職率の低下」。
モチベーションが高く、優秀な人材が集まる組織には、多くの人々が魅力を感じるものです。
社内コミュニケーション活性化のデメリット
施策が逆効果になる可能性がある
コミュニケーションは必要とはいえ、個人によってどの程度が適当なレベル感か、その感じ方はさまざま。
たとえば、仕事とプライベートは区別したいタイプが多い組織では、プライベートの時間に飲み会やイベントを行っても、反感を買ってしまうだけでマイナスの結果にしかなりません。
コミュニケーションツール導入でのコスト(負担)増
(社内チャット、SNSなどの導入コスト)
コミュニケーションにツールを用いる企業も多いと思いますが、こういったITツールの導入や維持には思いのほかコストがかかります。
インナーコミュニケーションは半永続的な活動でもあるため、効果とコストの算出を事前に行っておかないと、ただコストだけがかかり組織の活性化につながらないという負のスパイラルに陥る可能性も……。
SNSなどのツールは、気軽に投稿できるため管理をしっかり行わないと、第三者を誹謗中傷する温床となるリスクもあります。さらには、社内機密を含む情報が投稿されるなど、倫理的な問題が発生するケースも想定しておく必要があります。
コミュニケーションが活性化できていない原因と対策
社内コミュニケーションが活性化できていない原因
社内コミュニケーションが活性化していない要因はいくつか考えられます。さまざまな要因が絡み合っており、企業によってその要因はさまざまですが、大きく分けると以下の2点に要約されます。
1つは、オフィスが全国、またグローバルに拡散しており、物理的に社内コミュニケーションをすることが難しい職場環境である点。2つ目は、人間関係―上司と部下との関係性、また同僚間の関係などが希薄である点です。
社内コミュニケーションを活性化させるための対策
対策も要因・原因によってさまざまですが、一例として2つの対策を挙げてみます。
①場所・環境に起因するケース…SNSなどツールの利用
オフィス環境が、独立したデスクで仕事をするような職場や、各地に拠点がある組織などでは、SNSなどネット環境を利用するのも一つの手です。
②人間関係などに起因するケース…共通の目的意識を持つ
組織内の人間関係が良好ではなく、円滑なコミュニケーションを取ることが困難という場合。業務や組織の生産性に大きく影響するため、まずは、当事者同士の話しを聞き、改善点を見出していくという、基本からの見直しが必要となります。
“最適な社内コミュニケーション”を考える
多くの企業がコミュニケーション不足が業務の障害となると認識していながら活性化ができていない現状を鑑みると、このテーマは非常に奥の深い課題であることがわかります。
社内コミュニケーションを図る方法は無数にあります。大切なことは、自社に必要な方法を、いろいろとチャレンジして実際に効果の出るものが何か、少しずつ明確にしていくステップです。長期的な視野で、問題点の抽出と解決のためのフローを構築し、地道に取り組んでいく姿勢が重要なのです。