仕事のやりがいと内発的動機付けの関係は?日本をグローバルで見ると

仕事のやりがいとは何か?

仕事のやりがいは、仕事をしていく上でのモチベーションに直結する要素であるため、非常に重要でしょう。お金などの給料や自分の好きなことができるなど、何に対してやりがいを感じるかは人それぞれです。

モチベーションに直結するため、「やりがい搾取」といった言葉が生まれてしまったのは事実です。「やりがい搾取」とは、経営者などが考える「やりがい」を従業員に強制してしまうことです。主に金銭の報酬の代わりに、仕事での自己実現などをモチベーションとして強制することで、無償での長時間労働を推奨する、実際の活躍よりも少ない賃金で働かせるなど、ブラック企業との結びつきが強い言葉となりました。

そもそも、私たちは何をやりがいにして仕事を選んだり、何をもってして仕事への満足感を得ているのでしょうか。

一般的に、仕事における動機の種類を「外発的動機付け」「内発的動機付け」の2通りに分けて区別できると考えています。

外発的動機付け

外発的動機付けとは、他人からの評価を得たり、得た給料で何かしらの高級品を買いたいと言った、外的な要因を含む動機のことです。

誰もが知っている上場企業で働く、高い給料でブランド品を身につけるなどは、こちらの動機付けになります。

内発的動機付け

内発的動機付けとは、スキルアップなどでの自己達成感や自己表現につながる動機のことです。

今注目を浴びている「パラレルキャリア」でのスキルアップによる自己投資などはこちらに該当します。また、仕事上の困難な課題に対し、自ら望んで挑戦する、勉強するなどもこちらに該当するでしょう。

職務満足感と内発的動機付けの関係は?

香港ポリテクニック大学のXu Huang氏とオランダのグロニジェン大学の Evert van de Vliert氏が発表した49カ国の社会人を対象に分析した論文によると、職務満足感と内発的動機付けの関係性(内発的動機付けが高ければ高いほど、満足感は高くなる)は経済力と文化的価値観によって変わってくるといいます。

彼らの分析によると、文化的価値観の一種である『勢力の距離(=Power Distance)』が高い国ほど、内発的動機付けと職務満足感の関係性は低くなる、と言います。

『勢力の距離』とは、国や社会が人々の地位の区別をどの程度保とうとするか、を指しています。『勢力の距離』が高ければ高いほど、その国は地位の違いを保つ社会的慣習や儀式、制度が多くなります。

そのような文化が強い国であればあるほど、職場での昇進や周囲からの認識といった外発的動機がより重要な意味を持つようになります。逆に、そのような文化的側面の低い国であればあるほど、内発的動機付けは職務満足感により密接に関わってくるのです。

さらに分析によると、GDPが高い国ほど、内発的動機付けと職務満足感の関係性はさらに強まる傾向がありました。この理由は、豊かな国であればあるほど物質的な幸せ(生存に関わるモノ、有名なマズローで言うlower needs)は手に入りやすくなり、人々は自己達成感などの内発的動機の関わるモノを求めるようになるからです。

では、日本は他国と比べてみるとどのような位置にいるのでしょうか。下の図では、日本とマレーシア、フィリピンが比較されています。

仕事のやりがい比較表
引用元『Country Comparison』ホフステーデの文化次元

一番左のPower Distance (勢力の距離)において、マレーシアとフィリピンは日本よりもずっと数値が高いのがわかります。そしてこれらの国々は日本よりもGDPが低いことを考えると、「日本では、マレーシアとフィリピンに比べ、内発的動機付けと職務満足感の関係性は強まる」という予測ができます。つまり、豊かで勢力の距離が低い日本では、人々はより内発的動機付けによって職務満足感を得ている、と言えるのです。(「タテ社会」と揶揄される日本では勢力の距離は強いはずだ、と思われるかもしれませんが、他国と比べてみると、実は日本はちょうど中間くらいの位置にいます。)

現代の日本では、内的動機付けが職務満足感に強い影響を与える

現代の日本では、内発的動機付けが職務満足感に影響を与えうる強い要因になっていると予測できるのも、このように他国の状況と比べてみると確からしいことがわかります。

この傾向は、冒頭で述べた「パラレルキャリア」を国が推奨していること、転職者が離職した理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなった(=プライベートでやりたいことができない)」「人間関係がよくなかった」「仕事が自分にあわない」などの理由が「賃金の条件」よりも上位に来ていることからも見て取れます。

内的動機付けを実現できる環境が日本での職務満足感(=従業員満足度)に繋がり、長く活躍してくれる人材を育成できると考えられます。

内的動機付けをサポートできるように「ミツカリ」をより良いものにアップデートして参ります。

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