不健全な職場環境は法的に罰され業績の悪化につながる
厚生労働省の調査によると、脳・心臓疾患の労災請求件数や精神障害の労災請求件数は年々増加傾向にあり、仕事が原因で労働者の健康に様々な害を及ぼしていることが分かります。
2015年12月から義務化が始まったストレスチェック制度などでも、企業が労働者の健康を考慮することが求められているだけでなく、厚生労働省による時間外労働等改善助成金や産業保健関係助成金など、様々な助成金を設けることで企業の職場環境改善への取り組みを支援しています。
職場環境については、労働契約法や労働安全衛生法などで、企業側に求められることが明記されており、違反した場合には罰則は当然のことながら、労働基準関係法令違反に係る公表事案としてブラック企業としての認知が広がり、採用だけでなく業績の悪化にもつながります。
今回は職場環境に関わる法令や内容について説明していきます。
職場内でどのような行動が問題になるのか
職場内で「いじめ・嫌がらせ」などいわゆる「ハラスメント」が行われている場合、予防・解決が労務管理における重要です。社内において上司が社員に対して性的な関係を要求し、拒否されたため、その社員を解雇するなどの例が挙げられる「 セクシュアルハラスメント」が起こった場合、以下のような措置が必要です。
- 就業規則等に職場におけるセクシャル・ハラスメントがあってはならない旨の指針の規定
- 同様の指針が記載された社内報、パンフレット等の配布
- セクシャル・ハラスメント防止のための研修、講習等の実施
- 相談窓口の設置
- 事実関係の迅速かつ正確な確認体制の整備
- 被害者と行為者との間の関係改善に向けての援助
- 適切な配置転換
- 被害者のメンタルヘルス不調への相談対応
- 相談者・行為者等のプライバシーの保護等
なぜ行動を取らないといけないのか
ハラスメントに関して使用者が負う義務については、以下のような法律に規定があります。
- 労働契約法5条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。 - 男女雇用機会均等法11条
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
使用者は、職場環境配慮義務を負っており、同義務に違反して、セクハラ行為やパワハラ行為などのハラスメント行為を放置することは許されないとされています。
違反時の罰則について
現在、セクハラに直接抵触する法律はありませんが、加害者の刑事責任を追及する法律には次のようなものがあります。
- 「傷害罪」(「刑法」第204条)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
※これケガをさせた場合ですが、精神を衰弱させるような精神的傷害にも適用されます。 - 「強要罪」(「刑法」第223条)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。 - 「名誉棄損罪」(「刑法」第230条)
1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。 - 「侮辱罪」(「刑法」第231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
その他、場合によっては、「暴行罪」や「強制わいせつ罪」、「強姦罪」などが適用される可能性もあります。
職場環境の悪化は早期の改善が必要
職場環境が悪くなる原因を放置したり対策しなかったりした場合には、当事者だけでなく企業への罰則もあり、金銭面だけでなく信用を失ってしまう可能性も高いです。
全ての事象を把握し、改善することは簡単なことではないですが、改善する取り組み自体はすぐに始められるため、会社としても改善を行う当事者意識を持ち、全社で取り組んでいくことが求められるでしょう。