トランジションとは?人材定着のために考えたい従業員のキャリア

VUCAワールドをどう生き残るか

「VUCAワールド」とは、Volatility(不安定さ),Uncertainty(不確実性),Complexity(複雑さ),Ambiguity(曖昧模糊)の頭文字を言葉で、元は軍事用語でした。現在の企業を取り巻く状況は、テクノロジーの進歩や、グローバル化による地政学的リスク・疫学的リスクの影響を受けやすくなり、正に予測不能で不安定な状況を示す言葉として、ビジネスシーンでも使われるようになりました。

EconsultancyとSitecoreの共同調査によると、世界各国1,200人以上のマーケティング担当者を対象としたところ、60%の企業や団体が「市場環境の変化に適合するためのビジネス変革を余儀なくされるほどの大きなプレッシャーを受けている」と回答しています。さらに「そのプレッシャーが3年以内に事業存続を脅かすのではないか」と3分の1の回答者が危惧しているとの結果も出たのです。

参考URL『ITmedia マーケティング』「ビジネスモデルを変革しないと3年以内に廃業」 3分の1の企業が危惧――Sitecore調査

イノベーションが加速化するにつれ、ブルーオーシャンだと考えられていたものがあっという間に成熟し・陳腐化するようになりました。コンピュータの発達やスマートフォンの急速な普及、さらに市場のグローバル化や、RPA/ロボット導入によるマニュアルワークが減少するなど、大きな変化が押し寄せています。物を作れば売れる時代から、付加価値の創造が求められ、業務内容の多様化してきていると言えるのではないでしょうか。

会社にとっての過渡期は、従業員のキャリアにおいても大きな及ぼします。今回は、様々な変化に従業員が対応するための概念であるトランジションについて説明します。

キャリアにおけるトランジションの意味や理論とは?

トランジションとは、「転機」「転換点」「移行期」などを意味します。発達心理学をベースにしたキャリアカウンセリング理論では、人々が人生で遭遇する出来事や直面する課題には、ある年齢段階に応じて共通するものであり、そういった課題を乗り越えていくことで、人は次の段階(ステージ)に移行していくと考えられています。

トランジションの提唱者は複数いますが、代表的な理論家を挙げてみましょう。

1.ダニエル・レビンソン(Daniel.J Levinson)のトランジション

アメリカの臨床・社会心理学者のレビンソンは、ライフサイクルには「児童と青年期(0〜22歳)」「成人前期(17〜45歳)」「中年期(40〜65)」「老年期(60歳〜)」の4つの発達期に分けて考えました。各発達期はおよそ25年続くとし、新たな発達期に移る段階でトランジションが起きるとしました。そのトランジションが「青年への過渡期」「中年への過渡期」「老年への過渡期」です。

レビンソンによると、人間の生活構造は変化するものであり、1つの生活構造が7〜8年以上続くことはないとしています。つまりトランジションは次の生活構造へ移るために自然に訪れるものだということになります。

2.ウィリアム・ブリッジス(William Bridges)のトランジション

アメリカの心理学者であるブリッジスは、トランジションのプロセスを「終焉(何かが終わるとき)」「中立圏(ニュートラル・ゾーン)」「開始(何かが始まるとき)」の3つの段階に分けて考えました。

第一段階:終焉(何かが終わるとき)

進学、就職、結婚、異動、失業など、これまで慣れ親しんできた環境・人間関係・役割等が変化することにより、混乱や空虚感を感じる時期です。

重要なのは「これまでの何かが終わった」ということを受け止めることです。

第二段階:中立圏(ニュートラル・ゾーン)

内的な再方向づけの時期です。転機をどのように受け入れていくのかという問題に直面し、一時的な喪失状態・深刻な空虚感を感じる段階です。

プロセスは長く、自分自身と向き合い徹底的に考え悩むことで、第三段階の開始に繋がるとしています。

第三段階:開始(何かが始まるとき)

中立圏(ニュートラルゾーン)を過ぎると、新たな目標に近づくために、或いは環境に適応していく段階で、終焉や中立圏ほどは印象に残らずに、このフェーズは過ぎていくことが多いようです。

3.ナンシー・シュロスバーグ(Nancy Schlossberg)のトランジション

シュロスバーグは、アメリカのキャリアカウンセリングの理論家・実践家です。シュロスバーグは、トランジションは様々な人生上の出来事であり、トランジション・転機を次のように、3つの種類に分けて考えました。

  • 期待していたことが起きたとき(anticipated transitions)
  • 期待していたことが起こらなかったとき(non-event transitions)
  • 予期していなかった出来事が起きたとき(unanticipated transitions)

3つの出来事に遭遇することがトランジションであり、人は悩みや葛藤を抱えやすい時期であると考えました。

トランジションを乗り越えるために提唱したのが、4Sシステムです。4Sとは、ポイントとなる要素の「Situation (状況)」「Self (自己)」「Support (支援)」「Strategy(戦略)」それぞれの言葉の頭文字をとったものです。

人が人生の転機に直面したとき、どのように自らのキャリアを方向付けていくかという点において、非常に実践的な枠組みであると言えます。

経営者・人事担当者にとってのトランジション活用メリット

経営者・人事担当者が、誰もが人生で直面する「トランジション」の定義と概要を知っておくことは非常にメリットが大きいと言えるでしょう。なぜなら、レビンソンのトランジションで言えば、人はある一定の年齢で、同じ様な悩みや葛藤を抱える傾向にあります。

シュロスバーグのトランジションで言えば、期待していたことが起きた時・起きなかった時、あるいは予期せぬ出来事が起きたときなどに、人は葛藤を抱えるとしています。つまりは会社の変化により、従業員にトランジションが起こる可能性があるということです。

これらを経営者や人事が理解しておくと、会社の方針転換・戦略変更時の従業員への配慮・対応がより適切な形で実現可能です。

VUCAワールド×従業員のトランジションを考えよう

トランジションとは移行期や過渡期という意味であり、人生の転機となる出来事に遭遇している段階を指します。

VUCAワールドにおかれている企業は、様々な形で会社の方針転換(プロジェクトの中断・終了、事業売却、RPAなど機械への代替など)を図ることとなります。そういった時代において、人事担当者として従業員のトランジションを考えることは、中長期的に活躍し働いてもらうための一つの道標になるのではないでしょうか。

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