ホワイト企業を認定する制度を知っていますか?
さまざまなところで問題になっているブラック企業。厚生労働省はブラック企業について定義はしていませんが、労働基準関連法令に違反した企業を公開しており、公開された企業は世間からブラック企業としてみなされる傾向が強いとされています。
日本労働組合総連合会の労働者を対象にした調査では「勤務先がブラック企業だと思う」と回答した労働者は26.9%、世代別では若年層ほど「勤務先がブラック企業だと思う」割合が多くなり、20代では32.7%もの労働者が自社がブラック企業だと感じる傾向があります。
人材サービス企業ディスコの調査では、「ブラック企業」を気にした就職活動性は9割にもなり、採用ブランディングにも直結する問題になっています。
出典元『株式会社DISCO』就活生に聞いた「ブラック企業/ホワイト企業」への考え
ブラック企業は、労働基準関連法令違反や長時間労働の実態などで把握がしやすいものですが、ホワイト企業としてみなされるのかについては基準が曖昧であり判断が難しいところです。それでも、近年ではホワイト企業認定やホワイトマークなども行われています。
今回は「ホワイト企業認定」とはなにか、どのような認定基準で認定されることのメリットなどについて掘り下げます。
ホワイト企業認定とは?概要と取得のポイントについて
ホワイト企業とは、福利厚生の充実、離職率の低さなど働く上での環境のよさから、世間から高い評価を受けている企業が一般的な解釈です。ホワイト企業は社員の待遇、福利厚生、社内環境が充実しているため労働者が働きやすい会社のことで、もともとはブラック企業の対義語として登場した言葉です。ホワイト企業とは「サービス残業の強要」「パワハラやセクハラなどハラスメントの横行」「高い離職率」などブラック企業が持つ特徴と真逆の特徴を持つ働きやすい企業のことを表現するとされています。
働きやすい社会の実現を目指して、国もホワイト企業に注目しています。2015年6月から「安全衛生優良企業公表制度」を開始しました。労働安全衛生=職場での従業員の安全と健康の確保、快適な職場環境づくりに積極的に取り組んでいる企業を認定し、企業名を公表する制度です。
「優良企業」認定された企業は、大手や上場企業だけでなく、社員数100人未満の中小企業も存在しており、ホワイト企業の判定に会社の規模は不問です。
民間の一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)でも、「ホワイト企業」の認定制度を設けています。この財団は、“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織として、活動しています。
ホワイトマークの取得について
ホワイト企業の証明となるホワイトマークの取得は、現代のあらゆる企業にとって非常に意義のある取組みと言われています。昨今の労働市場には長時間労働がもたらした事件・事故や過労死問題によって、求職者や社会全体が職場の労働環境に対して強い関心を抱いています。国としても、働き方関連法の可決により労働時間などの規制が一層強化しており、今後も、労働環境に要求される基準は今後ますます高くなっていくと考えられます。
働きやすい組織を「安全衛生優良企業公表制度」として評価することで、労働安全衛生に積極的な企業の社会的認知を高め、より多くの企業に取り組みを浸透させることが制度の目的です。認定の有効期間は3年間です。認定企業には「ホワイトマーク」が付与され、働きやすい優良企業として自社のPRに活用できます。企業イメージだけでなく、従業員の意欲の向上も期待できるでしょう。また求職者にとっても、就職先を選ぶ際の判断材料になります。
安全衛生優良企業認定の認定基準について
安全衛生優良企業認定の基準は、過去3年間の労働安全衛生関連の重大な法違反がないなどの基本事項の遵守と労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理などの分野で、積極的な取組を行っていることが必要になります。
安全衛生優良企業認定の対象となる「企業」とはすべての業種の企業を指し、会社法等に定められる法人、協同組合、個人商店などを含みます。従業員とは、各企業の事業場で雇用されているすべての労働者を指します。
安全衛生優良企業になるには、すべての事業場を含む企業全体で、以下の基準を満たさなければなりません。
- 安全衛生優良企業認定基準の第1、第2の必要項目
全ての項目を満たす必要があること - 安全衛生優良企業認定基準の第3の評価項目
- 項目別基準
各分野別の評価項目の合計については、下表のとおりそれぞれの総計の6割以上を満たすこと - 総合点基準
全評価項目の総合点については、下表のとおり総計の8割以上を満たすこと
- 項目別基準
安全衛生優良企業認定に認定される企業のメリットについて
ホワイトマークを取得した企業は、さまざまなインセンティブを獲得することができます。採用力の強化、社内外でのイメージアップ、受注の拡大などさまざまなメリットが期待できます。
厚生労働省HPで優良企業として社名が掲載される
ホワイトマークを取得した企業は、認定期間の3年間、厚生労働省の公式ホームページに社名
が掲載されます。優良企業であることを社内外にアピールできます。
テレビやネットなど、メディアへの露出が増える
ホワイトマークの取得後は、管轄の労働局による授与式をはじめ、各メディアに露出する機会があります。ホワイトマークは企業認定制度の中でも認定基準がシビアなため、取得した企業の評価は非常に高いと言われています。
近年では厚生労働省が主導してホワイトマーク取得企業だけが出展できる就活イベントも全国で開催されています。当イベントは、ホワイト企業が一堂に会するということで大きな注目を集めています。
製品や広報誌、求人媒体に使用することでホワイト企業としてPRができる
ホワイトマーク取得の大きなメリットの1つが、認定マークを自社のさまざまな媒体に使用できることです。様々な場面でホワイトマークを使用することで、取引先や顧客、求職者などに対してホワイト企業であることをPRする機会になります。
自治体や金融機関で優遇措置が受けられる
ホワイト企業や健康経営への注目の高まりにともない、全国各地の自治体や金融機関でホワイト企業マーク取得企業に対する優遇制度が実施されています。ホワイトマークを取得することで、優遇措置を受けられるメリットがあります。
マーク取得に取り組む過程で助成金を活用できる
ホワイトマークの取得過程では、厚生労働省などが実施する以下のような助成金を活用することもできます。
職場意識改善助成金、職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)、キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)、人材開発支援助成金(特定訓練コース)、人材開発支援助成金(職業能力検定制度導入コース)、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)、障害者雇用安定助成金(障害・治療と仕事の両立支援制度助成コース)、受動喫煙防止対策助成金
独立行政法人労働者健康安全機構、産業保健関係助成金
ホワイト財団によるホワイト企業の取り組み
一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)は、“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織です。
財団が考える「ホワイト企業」とは、いわゆる世間で言われている「ブラック企業ではない企業」ではなく、「家族に入社を勧めたい次世代に残していきたい」企業を指します。具体的には、「優れたビジネスを行う」「従業員の働きがい(エンゲージメント)を高く保つ」「優れた社内統治を行う」の3要素を併せ持ってこそホワイト企業と呼ぶにふさわしい企業ではないかと考えその普及のために「認定制度」を設けています。
ホワイト企業認定の認定基準について
認定を受けるには、次のような対策に積極的に取り組んでいる必要があります。
- 過去3年間、労働安全衛生関連の重大な法律に違反していないこと
- 従業員の健康保持や増進への対策
- メンタルヘルス対策
- 過重労働防止対策
- 安全管理への対策
ホワイト企業認定には「法令遵守」「ビジネスモデル/生産性」「ワーク・ライフ・バランス/健康経営」「柔軟な働き方」「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」「人材育成/働きがい」の6つの認定指標が設けられています。各指標に設けられた評価項目に対して、一定基準(点数)を満たしていることが条件です。加えて、経営者、従業員、社労士などのヒアリングによって指標のバランスも測られます。この審査をクリアした企業がホワイト企業と認定されます。
ホワイト企業認定に認定される企業としてのメリットについて
優秀な人材が確保できる
採用の難易度が高まっていますが、選択肢の増えた求職者は業界や職種だけでなく、企業のことをより深く知り比較検討されるようになっています。公的にホワイト企業認定を受けていることは、大きな企業アピールになります。求職者に対して健全な組織運営をし、安心して働ける企業であるということをPRできます。
人材定着率の向上
ホワイト企業認定は、6つの認定指標と約60項目のチェックを受けたのち、一定基準を満たす企業だけが取得できるものです。現時点の会社のありかただけでなく、将来的な取り組みの目標なども必要になり、未来を見据えた働く環境を継続して作っていける会社が評価をうけることになります。
こういった組織は全体で働きやすい環境ができているため、帰属意識やモチベーション、定着率も高くなります。結果としてホワイト企業で働いているという働きがいが、人材定着率の向上に寄与していくのです。
生産性の向上
ホワイト企業認定を取得している企業の多くは、継続的に社員の活躍やプライベートの尊重が確保されています。自分の会社が働きやすい環境であると認定を受けることで、社員のモチベーションはより高まります。
社員が安心して働ける環境が整備され、そのための取り組みの改善・継続に尽力する企業であれば、生産性の向上も期待できるでしょう。
企業イメージの向上
ホワイト企業認定企業には、事業運営のさまざまなシーンで活用できる認定マークが付与されます。企業の自社サイトやパンフレットなどで認定マークを活用していくことで、企業イメージの向上を図ることができます。
第三者からホワイト企業と認定されるために
ホワイト企業を認定する制度として、厚生労働省のホワイトマークやホワイト財団によるホワイト企業認定などが主なものとして挙げられ、それぞれの基準や申請方法は異なります。
片方のみあるいは両方の認定を受けるのかについては、認定を受ける目的や自社の課題を明確にし、認定手続きなどのコストとの兼ね合いから判断することが必要です。