サクセッションプランで次世代のリーダーを育成する
多くの企業で「採用が難しい」と叫ばれる昨今では、自社の成長プランに合わせた人事戦略の設計がいっそう重要となっています。人材マネジメントは、理想の人材を採用するだけでなく、戦力として長期的に機能するように計らう必要があります。しかし早期離職なども頻発し、なかなか長期的に在籍して将来的に経営層として活躍してくれる人材を確保・育成できない人事課題が普遍性を帯びています。
リクルートマネジメントソリューションズは「人事・組織戦略上の課題」についてのアンケート調査を行いました。ここでは「自分の後任を担える人材・次世代リーダーが育っていない」と回答した企業が最も多く、特に経営層が抱える課題であることが報告されています。
出典元『リクルートマネジメントソリューションズ』成長企業における人材・組織マネジメントに関する実態調査
内閣府の調査でも、管理職がマネジメント行動を執れていないと思う割合は、管理職・一般職員ともに「部下のキャリア形成や人材育成に対する支援」が1位として挙げられています。
出典元『内閣府』管理職のマネジメント能力に関するアンケート調査 結果概要(最終報告)
調査事例を見ると、人材マネジメントでは採用だけではなく、中長期的な人材育成計画にも多くの課題が残っていることが伺えます。
今回は上記の問題に対する人事施策であるサクセッションプランの事例を3つ紹介します。
本文(結果の数に応じて、提示と根拠を増やしてください)
サクセッションプランの企業事例について
今回はサクセッションプランの企業事例について、3企業の事例を紹介します。
1.花王株式会社/後任候補従業員をシステマティックに育成
大手化学メーカーである花王株式会社は、「花王ウェイ」という独自の組織運営・人材開発モデルに沿ったサクセッションプランを導入しています。
大きな特徴は、マネジメントポストの後任候補となる従業員を以下の3段階にレベル分けし、体系的な育成を行なっているという点が挙げられます。
- 今すぐ後任となれる人材
- 1年~3年後に後任として活躍できる人材
- 3年~5年後に後任として活躍できる人材
レベルに応じた分け方をすることで、後任人材をプールが可能になります。企業にとっては人材の余裕も生まれ、ロスのない世代交代も実現することが魅力です。
従業員にも課題達成度がフィードバックされ、クラス別に想定されているスキルや貢献度と現状のギャップを客観的に把握する機会にもなります。評価方法もコーチングや360度評価など属人的になりすぎない工夫がなされており、従業員に気づきを与え、自発的な成長を促すシステムになっています。
2.良品計画株式会社/個人の基本属性に注目した人材育成
「無印良品」のブランド力を武器に発展をつづける良品計画株式会社では、社外取締役3名と社長、専務の5名で構成される指名諮問委員会を中心としたサクセッションプランが実施されています。
良品計画株式会社のサクセッションプランは、5ボックスという独自ツールを用いた人材マネジメントに大きな特徴があります。このツールは、横軸に潜在能力、縦軸にパフォーマンスを設定し、従業員それぞれがどのような基本属性を有しているかの分析をするものです。精度を高めるため、社歴・行動評価・業績評価・社内教育・海外経験が記されたプロフィールシートが管理されており、後継者に向いている人材をあぶり出し、選別するのに使われています。
さらに詳しい人事評価を行うため、キャリパー・ポテンシャル・レポートという、リーダーシップやマネジメント能力をグラフ化するツールも導入されるようになりました。
サクセッションプランに該当する従業員は、スキルだけでなく社風や理念のマッチングも重要です。良品計画株式会社の手法は、そのマッチングの材料となるデータを体系的に収集・分析する良い事例だといえます。
3.日産自動車株式会社/グローバルリーダーの育成
大手自動車メーカーである日産自動車株式会社は、いまから約20年前に「グローバルな主要ポストの発掘と育成」を掲げたサクセッションプランを導入しています。
日産自動車が行なったのは、Nomination Advisory Council(NAC)というCEOを中心とした人事委員会の設立です。人事委員会は社内のすべての会議を自由に参加できるキャリアコーチという役職を5名に与え、かれらを通して次世代のグローバルリーダーとしての活躍を期待できる人材の発掘を実施しました。
グローバルリーダーに求められるのは、基本的な業務遂行能力のみならず幅広い知識と好奇心です。その要件を満たし、豊富な経験を持つキャリアコーチが直接目で見て同種の人材を見つけ出すという抜擢人事は、スピード感と柔軟性が求められる現代のビジネスシーンでも重要な人事戦略として参考に値するものです。
サクセッションプランは人材的な豊かさの実現に必須
サクセッションプランとは後継者育成計画とも訳され、日本企業でも多くの企業が導入を行っている制度です。
大企業での後継者育成は重要な課題ですが、中小企業であっても後継者育成を重大な課題として挙げられます。実際に、後継者不在のため経営不振や廃業に追い込まれた企業も少なくありません。育成は長期的な視野で進めなければならない経営戦略ですので、早くから対策をとる必要があります。
サクセッションプランの導入では、まず他社の企業事例などから、自社ではどのような後継者を求めているのか、具体的にどのように育成するプランを立てて運用していけばよいのかを検討すしてみましょう。