価値観が多様化している現代
UZUZが実施した20代の第二新卒・既卒に対する調査では、再就職する会社に求めるものは「良好な人間関係」と並んで「ライフワークバランス」が1位の15.2%となっています。労働環境などや給与などの労働条件以上に、仕事とプライベートの両立が重視されています。
出典元『UZUZ』【2018年度版】第二新卒・既卒・フリーターの20代若手人材向け就職活動実態調査
就職活動で大切にしていることでは「ワークライフバランス」は3位の12.6%となっています。会社が用意した出世街道を突き進むのではなく、仕事とプライベート両面において、自分自身の幸せを自分で掴み取るような価値観に変化してきていることがわかります。
出典元『UZUZ』【2018年度版】第二新卒・既卒・フリーターの20代若手人材向け就職活動実態調査
彼らは仕事に対してモチベーションがないわけではないですが、出世街道が突き進んできた人材から見るとモチベーションが無いように見えるなど、仕事への取り組み意欲の認識としてミスマッチが起きています。
今回は出世や報酬以外でキャリアの価値を感じる考え方であるスローキャリアについて説明します。
スローキャリアとは?どんなキャリア理論なのか
スローキャリアとは自分の納得のいく働き方を重視しながらキャリアを形成していく考え方のことです。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の高橋俊介氏による作られた言葉で、自分なりの働き方や自分のやりたい意志を重視しながらキャリアを考えます。
会社での出世や報酬の目標に向かって計画的にキャリアアップしていく考え方とは異なり、あくまで軸が自分の生活や自分のポリシーなのです。
スローキャリアの人の考え方や特徴について
スローキャリアの最大の特徴は、目標達成型ではなくプロセス重視型であることです。目標達成よりも、今日の仕事や今日という日々、生活を充実させたいという価値観を持っています。出世や成功、収入といったものより、自分の満足度・充実感を求める傾向にあります。
プライベート重視で仕事を軽視しているわけではありません。仕事の充実もスローキャリアにとっては大切です。スローキャリアにおいても自分らしいキャリアをつくるために転職することもあり得ます。
彼らの価値観やポリシーは「成功」が出世ではなく、生活と仕事を含めた人生の充実であるという考え方なのです。
スローキャリア人材を人事業務に活用する方法について
スローキャリアの人材を人事制度にどう活用すればいいのでしょうか。
スローキャリアの人は上昇志向はないものの、仕事の充実を考え前向きにいきたいと考える傾向があり、出世することとは別の部分にやりがいを見出すことが特徴です。出世するより自分ならではのキャリアを実現したいと考え、専門的なスキルを磨くことや自分自身でキャリアパスを作れるような環境を求めます。役職や昇進だけでなく、プロフェッショナルという立場を作ることは効果的です。
多様な働き方やダイバーシティーの実現、自律的キャリア形成の重視や支援なども重要でしょう。働き方も柔軟で多様なスタイルを持っている方が自分のキャリア形成ともリンクしやすいため好まれる傾向にあります。スローキャリアの人は目標管理ではなかなかモチベーションを保ちにくいため、明確な数値目標より、期待成果や期待役割の方が効果的です。
逆にやってはいけないこととしては、上昇志向を良しとした序列性の強い人事制度で処遇することです。成長し出世することが正しい、成功とした評価では、彼らは退職を考えるでしょう。序列や年齢を重視する環境や現場より本社が偉いという価値観、昇進昇格を重視した評価、金銭的インセンティブを重視した制度では、彼らを活用することは難しくなります。
自分らしいキャリアを形成することがスローキャリア
スローキャリアは、仕事やキャリアに無関心な人のことではなく、仕事やキャリアに前向きであるが上昇志向や達成動機が強くない人のことです。
スローキャリアの考え方においては、出世や報酬よりも、自分らしいユニークなキャリア形成を求めます。予め決められたキャリアパスを設けるだけでなく、自分自身がキャリアパスを作れるように様々なキャリアを準備することが、スローキャリア人材を有効活用するために必要となります。